スマートフォン版を表示

今の自分をつくったもの -人生に不可欠なサッカー-

2021.09.21

もっとサッカーがしたい。それがサッカーを続けるモチベーションです。そう話すのは法学部消費情報環境法学科3年の山内稔之さん。取材したのはちょうど、東京オリンピック男子サッカー準決勝、日本対スペインが行われた翌日。試合は延長までもつれ込み、惜しくも日本が決勝進出を逃した試合でした。憧れ、夢、悩み、後悔、変化。すべての感情を、サッカーを通して経験してきた山内さん。そんな山内さんのキャンパスライフとは。

山内 稔之 法学部 消費情報環境法学科 3年父、兄の影響でサッカーを始める。高校の先輩が明学で活躍していたことがきっかけで明学に入学。現在、体育会サッカー部では3年生の主将をつとめている。ポジションはサイドバックで、守備を担う。山内さんの持ち味はスピード、攻撃面での駆け上がり。試合前ルーティンは「目覚ましをかけない」であるくらい、睡眠を大切にしている。好きな選手は東京オリンピックでも活躍していた、酒井宏樹選手。

ボールを蹴ることがただ楽しかった幼少期

サッカーボールを初めて蹴ったのは5歳の頃。父が小学校のサッカークラブのコーチをしていて、兄も所属していました。その影響で自分もサッカーを始めるように。5歳上の兄は今、J3のクラブに所属しています。幼い頃は、父親の指導や、兄のプレーを見る機会がたくさんありましたが、観戦するよりも、とにかく走って、ボールを追いかける方が楽しかった記憶があります。

中学、高校とサッカーを続けていくうちに、ぼんやりと、「自分の夢はプロサッカー選手になることだ」と思うようになり、その思いは年代が上がるにつれて強くなりました。大きなスタジアムでプレーをする兄の試合を観戦し、直接兄には伝えていないながらも、強い憧れと、尊敬の気持ちを抱いていて。そんな兄の姿を幼い頃から見ていたので、自然と同じ道を志すようになっていました。

自分の進路を現実的に選択する時期になり、高校時代の部活の先輩が明学のサッカー部で活躍していることを知りました。その頃、明学は東京都1部リーグで戦っていて、関東リーグに昇格しそうなタイミングでした。関東リーグでレギュラーに入り、プレーしてみたい。

関東リーグで活躍すれば、プロのスカウトの目に留まる可能性が高い。そう考えて、明学への進学を決めました。

念願だった関東リーグ昇格

明学のサッカー部に入り、印象的だったのは、フランクでおおらかな雰囲気がありながらも、プレー中は厳しく妥協しない緊張感。そのメリハリがある空気感が好きだと感じた記憶があります。

1年生の時に東京都1部リーグ準優勝を経験しました。1部リーグで準優勝すると、参入戦に出場することができ、トーナメント戦で勝ちあがると関東2部リーグに昇格することができます。その参入戦で、いまでも思い出す、すごく悔しかった瞬間がありました。「この試合に勝ったら昇格」という大事な試合。それまでのトーナメント戦ではレギュラーとして試合に出ていました。ただこの大事な試合でレギュラーを外れ、1分も出場できず。ベンチでアップをしながら、昇格が決定する瞬間を、ただ見ていることしかできなくて。

この試合の1つ前の試合で、2失点してしまい、自分のプレーもあまり良くなく、監督の采配で自分は出場が叶いませんでした。当時1年生でレギュラー出場している選手は多くありませんでした。でも、1年生だから、とかは全然思わず、ただひたすら悔しくて。一方昇格が決まったのは嬉しくて…。何とも言えない、複雑な気持ちを味わいました。

こころが折れてしまったこと

明学のサッカー部には「カテゴリ」が存在します。実力でレベル分けをする制度で、AチームからDチームまであります。1~2か月に1回ほどカテゴリ分けの機会があり、下のカテゴリとの紅白戦などが行われ、カテゴリ変更が発表されます。カテゴリ分けのための紅白戦は次の試合のレギュラー争いがかかっている場面でもあるので、部内でもバチバチとした空気が流れる、重要なタイミングです。

自分は1年生からずっとAチームで、公式の試合にも出場する機会をもらえていました。ただ一度、2年生の初めにカテゴリが一番下まで落ちてしまって。その時期は正直、サッカーに対して熱が入らず、一度「こころが折れる」という感覚を経験しました。プロを目指しているのに、こんな中途半端な気持ちじゃ。もう無理だ。いいや、プロなんて。と、熱が冷めてしまっていて。

ただなぜか、これまでの人生でサッカーをずっとやってきて、そのサッカーに対して熱が冷めていく瞬間にもサッカーをやめるという選択肢はなかったです。

いつも通り練習に参加し続け、徐々にカテゴリは上がっていきました。プレーをし、結果を残しそれを認めてもらうこと、自分のプレーをたくさんの人に見てもらい、自分はサッカー選手なんだと認めさせること。サッカーに対する情熱を思い出し、心に火がついた感覚でした。

それと同時に、自分はサッカーが好きで、サッカーなしの人生は考えられないと、改めて気付かされました。そして、自分の道はプロサッカー選手だと、改めて思うように。

この経験をし、考え方に変化が生まれました。高校までの自分は、ミスをするとプレー中でも切り替えられず、そのままプレーに気持ちが出てしまうようなところがありました。それが、一度こころが折れてしまったことで、マイナスな気持ちを持った自分を受け入れられるようになりました。プレーの中で、失敗やミスはするもの。反省し、取り返すことができたらそれで良い。必ず取り返してやるという熱い気持ちと、客観的にミスを分析する余裕を両方持つことができるようになりました。

今の自分を作ったのも、サッカー

3年生になり、明学のサッカー部に入って初めて公式戦で点を取ることができました。 7/24(金)の帝京大学とのリーグ戦でのこと。前半にすでに2失点し、その失点の状況も良くはありませんでした。必ず取り返すという気持ちで臨んだ後半戦。序盤にセットプレーのチャンスがあり、自分が蹴ったボールから味方の得点。チームは息を吹き返しました。その後、右サイドから味方のクロスが上がり、サイドハーフの選手が競ったボールが自分の目の前に転がってきて。左足で打つフリをして、右にボールを置き、右足を振り抜きました。そのボールがキーパーとゴールカバーの選手の間にスパンと入り、同点に追いつくことができたんです。アディショナルタイムに入り、やってきたセットプレーのチャンス。自分が蹴ったボールが起点となり、逆転勝利することができました。

自分が明学でサッカーをやっていて、チームのために貢献できた。サッカーを続けていて本当に良かったと思いました。

明学のサッカー部でプレーをしていると、自分はこういう人間だったんだと気づくことがあります。幼い頃はただボールを追いかけて走るのが楽しくて、憧れの兄の背中を追いかけて。

今は学年主将として、チームメイトが今どういう状況で、どういう性格をしていて、何を考えているか、常にアンテナを立てています。高校までの自分は「大勢の前で発言することが恥ずかしい」だったり、プレー以外の場面で前に出ることが苦手でした。そこは今でも変わらないのですが、明学のサッカー部でプレーをしていると、それで良いんだと感じる瞬間もあります。サッカー部において、自分の役割は何で、どういう行動をとるべきか。プレー中では例えば、センターバックが相手チームにプレッシャーを受けている時、自分はサイドバックとして、少し下がってパスコースを作り、助ける。プレー以外では、不安や悩みを抱えるチームメイトに、個別に寄り添い、話を聞いたうえで一緒に解決方法を考える。

前に出る以外にも、自分はチームのためにできることがある。そう思えるようになりました。

サッカーというチームスポーツに対する理解が深まると同時に、自分や、他者への理解が深まった気がします。それは部活以外の時間で過ごす人との関わりにおいてもです。成長していると実感できる今の自分を作ったのは、まぎれもなく明学という環境、そしてサッカーというスポーツです。

これからも、自分の人生にはサッカーがあり続けると思います。今年こそ、関東昇格戦に全試合レギュラー出場し昇格を決め、明学のサッカー部に貢献したいです。

サッカーを通して、見た景色や関わった人々、自分の感情すべてを大切にし、これからもサッカーを通してたくさんの経験を手に入れていきます。

おすすめ