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その行動に覚悟はあるか~全ては箱根駅伝本選出場のために~

「とにかく行動してみる。確かに大切なことですが、その行動に覚悟があるのか。それがもっとも大切だと思っています」 コロナ禍にあっても成長を続けるランナーの言葉には、経験に裏打ちされた「重み」があった。強い眼差し、緊張感、そしてハングリーさ。オンライン越しであってもまるで「対面」で取材しているかのような錯覚に陥ったのは初めてのことだ。箱根駅伝予選会を来月に控えた9月某日。走り抜ける学生生活、前主将から受け取ったタスキの重み、そして未来を語る。

座間 武尊 社会学部 社会福祉学科 3年 中学、高校と陸上競技に打ち込み、本学入学と同時に体育会陸上競技部長距離ブロック(以下、長距離ブロック)に入部。2019年から長距離ブロック主将を務める。チームとして箱根駅伝本選に出場することを目標に、部の誰よりもストイックに「走り」と向き合い、強いリーダーシップと実力でチームを引っ張る。好きな言葉は「覚悟」「挑戦」。

自分で考えて陸上をする

高校三年次、進路に悩む自分が抱いた長距離ブロックの印象は、まさにこの一言でした。同じ高校の先輩が長距離ブロックに在籍していたことは知っていましたが、活動を見学した日に、「自分の居場所はここだ」と確信しました。長距離ブロックは1週間の練習のうち、自主練習日を定めているのですが、その時間は何をしても良いことになっています。それぞれの部員が日々の練習で見つけた課題解決の時間として充てるのも良いですし、十分に休息するのも良い。自由であるからこそ、自己を厳しく律することが求められる環境が自分の性格上、とても合っていると思いました。確立された組織の中で、監督、コーチからの指示に基づき、定められたメニューを効率よくこなすことも良いですが、自分で考えて陸上と向き合い、チームそのものを創り上げる楽しさを肌で感じたことが、入学のきっかけです。

入学後はとにかく練習に打ち込む日々。箱根駅伝予選会の過去の結果を踏まえると、長距離ブロックは「下克上」を狙っていかないといけない立ち位置です。チームとして順位を上げるには技術や体力、チームワークも必要不可欠ですが、もっとも大切なのは「ハート」の強さ。入学してから今に至るまで、ヘッドコーチにいただいたアドバイスの中で特に心に残っていることが「勝ちたいなら最初から攻めていけ!」の一言です。調子が悪い選手は母集団より後ろを走りがちになりますが、その状態だとレース後半になっても順位が上がらずそのまま終わってしまう場面をよく見かけますし、自分自身も同様です。だからこそレース開始後はなるべく母集団の、特に先頭をキープできるような走りを意識し、実践しています。1年から2年の夏の終わりまでは、とにかく自分自身の能力を高めることだけを考えていました。当時の主将から次期主将としてのタスキを託されたのは、そんな矢先の2019年10月でした。

必要なのはピリピリした雰囲気

中学、高校でも主将を務めましたが、上級生ではない2年生の自分が、3年生の先輩を含めてチームを引っ張っていけるのか? 初めての経験に不安と葛藤で頭がいっぱいでしたが、「どんな風にまとめるのか、みんなの前でどんな風に話せばいいのか、そんなことは一切気にするな!」 前主将からこんなアドバイスをいただき、われに返ることができました。とにかく誰よりも「箱根駅伝本選出場」にこだわること。そして、そのために誰よりも練習すること。そうでないと部員にも示しがつきませんし、「考えて陸上をする」明学の良さも活かせません。だからこそ、練習ではとにかく率先垂範し、お互いを高め合えるピリピリした雰囲気を大切にしています。

一方、主将として部員に接するときは、取り組みのゴールから逆算し、最低限の時間で最大限の効果を出すためのコミュニケーションを心がけています。例えば、疲労回復を目的とした練習で経験の乏しい1年生にアドバイスをする際。「こうすれば良い」と明確な答えを出さず、あえて大まかな方向性だけを示し、そこから考え、実践し、気づきを得るまでの一連の行動を促すことがあります。

もちろん、模索する時間の意味がないと判断した時は、すぐに答えを出しますが、勝負にこだわるチームをつくるためには、一人ひとりの主体的かつ能動的な考えと行動が必要不可欠。主将になってまもなく1年ですが、「今までの明学とは違う」とコーチから言われます。最近では練習後に涙する部員を見かけることも。箱根駅伝予選会に向けて真剣に取り組んでいるからこそ、出会う光景です。少し自信過剰と思われるかもしれませんが、この1年で私が目指したいチームの雰囲気に近づいていることを実感しています。

「コロナ禍だからこそ」できたこと

2020年3月後半から7月まで、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、部としての活動ができなくなり、練習場所も、メニューも、全てを各部員に委ねざるを得ない事態となりました。自分の気持ち以外で自分を律することはできないので、本当に「勝負の時」でした。だからこそ活きたのが、「自分で考えて陸上をする」明学の良さ。この状況下でも、タイムを縮めるために解決すべき課題と行動は何か? 徹底的に考え、練習しました。3月以前は朝・晩2部構成の練習でしたが、4月以降は、多い日で朝・昼・晩の3部構成で個人トレーニングをしました。5月の平均走行距離は800km程度となり、練習量は3月以前をしのぎました。

チームとしての練習も、工夫を凝らしました。例えば筋力トレーニング。これまでは「腹筋を強くする」などの目的から逆算してトレーニングをしていましたが、「そもそも腹筋を強くしても、使えていないと意味がないのでは?」考え抜くうちに、こんな気づきに出会えました。まずは、「使える筋肉」を身につけよう。そんな意識で副主将を中心に取り組んだのが、「オンライン補強」です。Zoomで部員間の交流をしている間の、「オンラインでチームトレーニングをしたら面白いのでは?」「さすがにスマホを持ってトレーニングをすることはできないから筋力トレーニングはどうだろう?」こんなやりとりがきっかけでした。「腕」「体幹」などのテーマに基づき、サーキット形式で40秒やって10秒休む、といったサイクルを複数回こなす内容で、Zoomを用いて毎週取り組みました。コーチ陣主催の定期ミーティングでは適切なフィードバックと意識のすり合わせもできましたし、5月末日に部員各自で行った3,000mのタイム測定では、3月の個人タイムを20秒以上縮めることができました。チームとしても個人としても大きな手応えを感じた4ヶ月間でした。

「前へ出た」からこそ

7月1日から長距離ブロックとしての活動を本格的に再開できましたが、特に4~6月のトレーニングで身体を酷使した反動で大きな疲労に見舞われ、7~8月は調子が落ち込みました。主将としてミーティングで偉そうなことを話しているのに、練習に手を抜いているのでは?そう思われても仕方がないと思いました。誰よりも練習しなければいけない。前に出なければいけない。チームを引っ張っていかなければいけない。「したい」ではなく「しなければいけない」の悪循環に陥り、随分と苦労しました。そんな日々がしばらく続いたのですが、9月初旬に走った5,000mのレースで心境に変化が。「辛いのだったら何をしても辛いのだから、仕方がない」と。最初からビリで走ってみたのです。すると、レースで1位に。自分でも驚きましたが、心拍数ができるだけ上がらないようにペースを保って走れたことが勝因だったと思っています。以前から「心拍数を意識して練習を考えろ」とコーチからアドバイスをいただくことが多かったのですが、「とにかく前へ!」だけを意識していたこれまでの自分には、心拍数を意識して走る機会が少なかったのが事実でした。しかし、4~6月に「前へ出ること」を実践し続け、心と身体が強くなったからこそ、あえて振り切った考えを実践できる心の余裕もできたのです。心と身体の良いサイクルが生まれ、考えにも行動にも緩急をつけることができるようになりました。

出ることか、勝つことか

今回の箱根駅伝予選会は、新型コロナウイルスの感染防止対策を踏まえ、実施方式を大きく変更せざるを得なくなりました。しかし、どんな状況であっても出場するからには「勝ち」を狙います。1年生、2年生の時に抱いた他大学の印象は、まさしく「勝つためにここにいる」ということ。当たり前のことなのですが、無意識に「出場すること」が目標となっていた自分に恥ずかしさと無力感を覚えましたし、このままではいけないと強烈な悔しさと焦りを感じたのが、1年前です。長距離ブロックのスローガンは“感謝と貢献”です。仲間たちや卒業生の先輩方、保証人や教職員の皆様はもちろんですが、何よりも4年生の先輩方に大きく支えていただいた1年間でした。自分を支え、成長させてくれた全ての方のために、「覚悟」と「挑戦」の気持ちを胸に、全力で走り抜きます。