横浜は、幕末に日本が新しく世界に向かって開いた港、そして明治学院の祖であるヘボン博士ゆかりの地です。国境を越えて真理を追究し、皆のためを考え、世の中の役に立ちたいという明学スピリット。1990年、この意思を受け継ぐにふさわしい横浜校地に、国際学研究科が設置されました。
いま人類は、さまざまな地球的課題や地域の課題に直面しています。そしてそれに対応するために、研究者・実践者の新しいネットワークや、従来の学問分野を超えた知的枠組みが求められています。国際学研究科は、そうした知的挑戦に果敢に取り組もうとする人々の志に応えられる大学院たるべく、努力を重ねています。
国際学研究科のカリキュラムは従来の学問体系にとらわれない編成をとり、博士前期課程のコースワークは「日本・アジア研究」「平和研究」「グローバル社会研究」の3つの柱から構成されています。学生は、学位論文の主査となる教員の指導の下で専攻分野の研究を進めるだけでなく、問題意識に応じて別領域の科目を履修したり、他の教員にアドバイスを求めたりすることができます。
国際学研究科では、「社会人経験者入学試験」や「外国人留学生入学試験」の制度を設けています。これらは、多様な経験を持つ人々に対して研究科の門戸を大きく広げ、ともに開かれた心で真理を追求することを目的としたものです。
私の研究テーマは、「旧日本軍中国遺棄化学兵器被害者救済の可能性に関する研究-在外被爆者と日本国内化学兵器被害者の救済措置を手がかりに」です。母国中国で国際協力を学んでいた私は、日中の共同事業として進行している旧日本軍の遺棄化学兵器処理事業の通訳に携わる機会を持ち、強い関心を持ちました。その時に抱いた日本の戦後処理への疑問や、被害者の方々が直面する現状への憤りが、この研究に至った理由です。旧日本軍がジュネーブ条約に反して使用した毒ガス兵器被害への回復、また中国国内に遺棄された未処理である残留兵器の対応については、日本から資金や技術の提供はあっても、中国の被害者救済が含まれていないのが実情です。私はこの日中双方の国際関係の障害を解決する策や、被害者救済の可能性について模索しています。夢は、中国の母校で教鞭をとること。そこで新たに平和学という専攻をつくり、中国の母校の大学院と明治学院大学大学院、私が出会ったふたつの母校を連携させ、平和のための知識、研究方法を多くの生徒たちに広めていきたいと思っています。
博前博士前期課程の研究指導 博後博士後期課程の研究指導
氏名 | 専門分野/開講予定科目 | 授業内容 |
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合場 敬子 教授 博前博後 |
ジェンダー研究 | ジェンダーがどのように社会的、文化的に構築・維持されているかについて、70年代以降のフェミニズムの思想的潮流と身体との関係から、文献の批判的検討を通じて考察を深める。 |
青柳 寛 教授 博前博後 |
比較文化論 | 文化の捉え方や文化比較の手法と意義・目的について考察しながら、探究を欲するみなさんと事例研究を編み出していく。 | 阿部 浩己 教授 博前博後 |
国際人権・難民法 | 社会が分断され難民・移民が排斥される現実を前に、人間の尊厳に立脚した国際人権・難民法はいかなる役割を果たし得るのか。その可能性と限界を、歴史と政治の視座を交えつつ考究する。 |
大川 玲子 教授 博前博後 |
イスラム思想論 | イスラームの聖典クルアーン(コーラン)の成立や解釈史を通して、ムスリムにとっての神の啓示の意味を考える。また特に、現代における解釈の展開に焦点をあてる。 |
久保田 浩 教授 博前博後 |
宗教文化論 | 宗教と社会・文化をめぐる諸問題を、宗教研究の理論と方法論を踏まえつつ分析する。特に、近代・ポスト近代社会における、諸々の宗教的実践と政治的・文化的動向との関係を考察する。 |
熊倉 正修 教授 博前博後 |
国際経済論 | 国際経済学の基礎を身に着け、それを現実の政策の分析に応用する能力を学ぶ。必要に応じて統計分析や政治経済学に関する事柄も取り入れ、実践的・学際的な理解を目指す。 |
坂本 隆幸 教授 博前博後 |
比較政治経済研究 | 先進諸国の政治経済を比較研究する。欧米や日本の、教育、家族支援、女性政策、労働市場政策などの政策が、社会の豊かさや、安定した雇用、所得の平等を産み出すか否かなどを分析する。 |
重冨 真一 教授 博前博後 |
農業・農村開発論 | 農家経済、農業の諸制度、農村住民組織、一次産品取引などを主なテーマとして、途上国農村が抱える問題を考察するために必要な方法論を学び、それを用いた実証分析を行う。 |
末内 啓子 教授 博前博後 |
国際政治経済論 | 国際政治経済論のアプローチを国際関係論に位置づけながら理解し、リサーチへの応用を準備する。理論的な分析が中心となり、国際政治経済論、国際関係論を再検討する。 |
助川 哲也 教授 博前博後 |
文化創造論 | 文化の流れに見る「組み合わせ」と「展開」、また「分断」と「跳躍」を客観的に捉え、自らが文化のオリジンとして立つ可能性を具体的に高めていく。 |
孫 占坤 教授 博前博後 |
国際関係法 | 民族問題に関する理論的理解、とりわけ、(1)社会主義と民族問題との関係、(2)国際関係における分離問題の位置づけ、を中心に研究する。 |
戸谷 浩 教授 博前博後 |
中欧・東欧研究 | 西欧史、オスマン史、ロシア史等との関連の中で、中・東欧史を位置づけてゆくことを目指す。 |
中田 瑞穂 教授 博前博後 |
比較政治学 | 欧州各国の政治を主な題材に、国民国家、憲法体制、議会、政党、政党システム、市民社会組織など比較政治学の諸理論、概念を学び、日本を含め欧州以外の国々の政治分析にも応用する。 |
浪岡 新太郎 教授 博前博後 |
政治社会学 | 投票などの一般的な「政治参加」におけるマイノリティとしての移民が、どのようにしたら充分に「政治参加」できるのかを「アイデンティティ」の観点から考える。 |
新多 了 教授 博前博後 |
応用言語学 | グローバル社会において言語(母語・外国語)がどのように学習・使用されているか理解を深めるとともに、言語に関する様々な問題について多面的な視点から批判的に考察する。 |
野口 久美子 教授 博前博後 |
アメリカ先住民研究 | 南北アメリカ先住民の歴史的経験を通して先住民と国民国家の関係を考察する。またローカルに考え、グローバルに発信する先住民運動の諸側面を現地調査により明らかにする。 |
半澤 朝彦 教授 博前博後 |
国際関係論 | 世界秩序の形成に大きな役割を果たしたイギリスの歴史を詳細に分析する。英語原書を用い、毎回の英文レポート、期末の英文論文の作成が義務。また歴史学の基本的手続きである厳密な史料批判の手法を学ぶ。 |
平山 恵 教授 博前博後 |
NGO論 | グローバル化によって世界中に引き起こされている諸問題に注目し、「公正」な社会づくりに関わる、第三世界および先進国のNGO、NPO、CBO(Community Based Organization)の動きを考察する。 |
森 あおい 教授 博前博後 |
アメリカ文化研究 | 西洋中心の価値観に根ざした抑圧的植民地主義の支配構造を見直し、多文化主義の視点から、映画や音楽、雑誌・新聞記事、文学など多様なメディアにおける文化表象について考察する。 |
森本 泉 教授 博前博後 |
南アジア研究 | 激動している今日の南アジア地域を、複数の視点から理解することを目的とする。自然環境や人文環境を概観し、開発問題や環境問題についても考えを深めてゆく。 |
T.GILL 教授 博前博後 |
マイノリティ研究 | This course will be conducted in English, and will offer an introduction to the basic theories of British-style social anthropology. |
P. MIDFORD 教授 博前博後 |
日本・東アジア国際政治関係論 | This course will cover Japan's foreign and security policies in East Asia and East Asian international politics, especially regional security multilateralism. |
A.VESEY 教授 博前博後 |
仏教文化史 | This course will examine the impact of Buddhism on history of 19th and 20th century East Asian - Western cultural interactions. |
李 嬋娟 准教授 博前博後 |
応用計量分析 | 国際学専攻の様々なテーマが応用計量経済学に基づいてどのように分析できるかを議論したうえで、自分の関心があるテーマに関する統計データを探して正確に分析・解釈する方法を学ぶ。 |
岩村 英之 准教授 博前博後 |
国際金融の政治経済学 | 国際マクロ経済学とゲーム理論を用いて、広義の金融政策をめぐる国際/国内政治過程とその経済的帰結の相互作用を描写する理論モデルをレビューする。 |
榎本 珠良 准教授 博前博後 |
軍縮と平和 | 軍縮や平和構築、開発・人道支援について、1990年代以降の国際社会で主流になった政策論議・実践を学ぶとともに、それらが内包する問題・課題も学び、今後の展望を考える。 |
趙 星銀 准教授 博前博後 |
戦後政治思想史 | 民主主義と公共性をめぐる諸概念が戦後日本の言説空間の中でどのように議論されて来たかを検討し、戦後史における政治と思想の相互作用を考察する。 |
林 公則 准教授 博前博後 |
環境と政策 | 環境容量を超えた経済活動による負荷が世界中で諸々の問題を引き起こしている。維持可能な社会を実現するための環境政策について研究する。 |
賴 俊輔 准教授 博前博後 |
成長と分配 | 東南アジアを始めとした途上国の経済政策とグローバリゼーションとの関連について、「小さな政府」に基づく経済・財政政策が途上国の政治・経済・社会に与える影響を中心に考える。 |
李 相佰 准教授 博前博後 |
日本政治経済論 | 20世紀以降の日本の経済政策(金融政策、財政政策、産業政策など)と日米欧の政治・経済的関係を振り返り、現在日本経済の抱える諸問題と解決策を考える。 |
G. IVANOVA 准教授 博前博後 |
日本文学・文芸評論 | This course will examine why the interpretation and assessment of a literary work change over time and how socio-historical conditions influence the reading and reproduction of a text. |
P.KHARE 准教授 博前博後 |
社会起業論 | The course will examine the concept,theories and cases of social entrepreneurship which is an emerging field about how business and non-business leaders design,build and manage mission-driven enterprises. |
井手上 和代 専任講師 博前博後 |
アフリカ政治経済論 | アフリカの経済・政治・社会・文化・歴史といった個々の事象の関係性を重視しつつ、アフリカ政治経済研究のアプローチを理解・援用して、現代アフリカの「開発」について考察する。 |
紺屋 あかり 専任講師 博前博後 |
オセアニア研究 | オセアニア地域を対象とする長期フィールドワークを実施し、自らが収集したデータに基づいて、当該地域の文化、社会、政治の今日的あり方について明らかにする。 |
BAE Junsub 専任講師 博前博後 |
社会政策 | 福祉国家の形成・発展・縮小・再編の歴史を中心に、比較福祉国家論や比較社会政策の観点から世界各国の社会政策の特徴を考察する。 |