明治学院大学では、「明治学院大学 修学支援の基本方針」にもとづき、すべての学生が卒業後も自律的な社会生活を送れるように、また共生社会の担い手となっていけるように支援をしています。学科・研究科や各部署が連携し、すべての学生が授業をはじめ、大学が主催する活動や催しなどの様々な学びの場に等しく参加できる機会の保障、質の高い教育を受けることのできる機会の実現、学びと成長の機会を得られるような学生同士でサポートしあえる環境づくりに努めています。
学生サポートセンターは、この目標を達成するために、さまざまな学生に支援を行うとともに、学生と直接的・間接的に関わりを持つ学科・研究科、各部署がスムーズに支援を行なえるように、様々な調整や情報提供などを行なっています。
支援の実施において疑問やお困りのことがありましたら、学生サポートセンターまでお問い合わせください。
支援をスムーズ、効果的に行うためには、学生本人と十分に話し合い、できることをお互いに模索し、確認をしながら、納得の上で行なうことが大切です。このプロセスを「建設的対話」といいます。
同じ障がいや診断名であっても、学生のおかれている状況や、必要とする支援は一人ひとり異なります。支援においては、まずは本人が困っていること、必要としているサポートをじっくりと聞き、お互いにアイディアを出しながら解決策を考えてみることがポイントです。このような対話を通して発案されたちょっとした工夫や調整をすることで、学生の困っていることを解消したり、軽減したりすることができるかもしれません。難しく考えずに、まずは「建設的対話」から始めてみることが大切です。
「障害(Disability)」とは、心身の機能や健康状態そのものによって生じるものではなく、環境・制度・慣習などとの相互作用によってもたらされるものです。そして、ある場面での相互作用の結果が、ある人にとって妨げとなっている場合、それは「社会的障壁」となります。支援のポイントは、授業や学生生活に参加する上で生じている社会的障壁を、様々な調整・配慮・工夫を行なったり、人的・物的支援を提供したりすることで解消・軽減していくことです。
以下の例のように、多くの場合、ちょっとした工夫や方法を変更することで、社会的障壁を軽減することができますが、サポートや情報が必要な場合は学生サポートセンターまでお問い合わせください。
社会的障壁の例 | 建設的な対話を経て行なった支援の例 |
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段差や階段があるため、目的の教室や場所に行けない | ・簡易的なスロープを設置する
・教室の場所を変更する |
一般的な方法や時間では、回答、記述、発表ができない | ・パソコンでの記述、口頭での回答など代替的な方法を認める
・板書の写真撮影を認める ・資料やパワーポイントを配布し、記述の負担を軽減する ・後日の提出を認める ・代筆をする ・持ち時間を延長する |
一般的な時間では期限に間に合わない | ・期限の延長を認める
・準備時間を長く取れるように課題を早めに発表する |
映像に字幕がないため、内容がわからない | ・字幕挿入や文字起こしを行なう |
印刷された資料や掲示を読むことができない | ・読み上げソフトなどを活用できるようにデータの状態で提供する
・メールで同内容を伝える ・代読する ・拡大コピーを提供する |
障害者権利条約は、「全ての障害者によるあらゆる人権及び基本的自由の完全かつ平等な享有を促進し、保護し、及び確保すること並びに障害者の固有の尊厳の尊重を促進すること」を目的に定められたもので、大学に関しては「障害者が、差別なしに、かつ、他の者との平等を基礎として、一般的な高等教育、職業訓練、成人教育及び生涯学習を享受することができることを確保する」(第24条)と述べられています。
そして、その理念を実現するため、国内法である障害者差別解消法では、「不当な差別的取扱い」と「合理的配慮の不提供」を差別として禁じています。
「不当な差別的取扱い」とは、「障害者に対して、正当な理由なく、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否する又は提供に当たって場所・時間帯などを制限する、障害者でない者に対しては付さない条件を付けることなど」(障害者差別解消法 基本方針)です。
また「合理的配慮」とは、「障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるもの」(権利条約 第2条)とされており、これを提供しないことは、それ自体が差別とみなされています。
こうした関連法規によって、大学においては、「均衡を失した又は過度の負担」「教育内容の本質や評価基準の変更」「他の学生に影響を及ぼすような大幅な教育スケジュールの変更や調整」などをすることなく、支援を必要とする学生が授業や大学での様々な機会に参加できるように、個別的な支援や調整を図っていくことが法的責務と定められています。また、その実施においては、支援を提供する側が一方的にその可否や内容を決めるのではなく、「建設的対話」を経て、「合意」にもとづいて行われるべきとされています。
外務省「障害者の権利に関する条約(障害者権利条約)」
内閣府「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」
内閣府「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」
文部科学省「障がいのある学生の修学支援に関する検討会報告(第一次まとめ)」
文部科学省 「文部科学省所管事業分野における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針」
(ページ最下部に記載している「別添1」の文書9~12ページに、不当な差別的取り扱いや合理的配慮に当たり得る例が記載されています。)
支援は、学生本人を含む関係者間での建設的対話を経て、個別のケースごとに合意を形成した上で実施します。
なお、授業や試験においては右記のプロセスに沿って行います。授業担当教員には、学生サポートセンターから「配慮依頼文書」を配布しますので、内容をご確認いただき、支援の実施にご協力ください。
授業の本質や評価基準に照らし合わせて対応が難しい場合や、より個別的な確認・調整が必要な場合は、学生サポートセンターまでお問い合わせください。より個別的な調整を図り、最終的な合意の形成をめざします。
1.学生からの支援申請と必要書類の提出
学生が必要書類(1.支援申請書、2.障害者手帳のコピーまたは医師の診断書、3.個人情報の取扱いに関する同意書)を揃え、学生サポートセンターに支援を申し込みます。
2.学科・研究科との面談の実施
原則として、学生本人、在籍する学科・研究科、学生サポートセンターのコーディネーターで面談を行ないます。必要に応じてその他の関係部署も参加します。この面談で、学生の状況と希望する支援や調整を確認し、実施する支援の内容について合意を図ります。この面談をもって合意の大枠が形成されたとみなします。
3.支援方針・内容の決定および学生への通知
面談の結果を踏まえ、支援の可否や支援内容について、学生サポートセンターから学生に通知します。
4.学生サポートセンターから各教員へ「配慮依頼文書」を配布
面談で決定した内容にもとづき、学生サポートセンターで「配慮依頼文書」を作成し、メールボックス等を通して各授業の担当教員に配布します。必要に応じて、関連する小冊子やリーフレットなどもお渡しします。「配慮依頼文書」を受け取られたら内容をご確認いただき、支援の実施にご協力をお願いします。
5.個別的な面談・調整の実施
授業の本質や評価基準に照らし合わせ、「配慮依頼文書」に記載されている配慮や支援への対応が難しいと判断された場合や、より個別的な確認・調整・変更を要する場合は、学生サポートセンターにご連絡をお願いします。再度の打ち合わせや調整・確認などを行い、最終的な合意の形成を目指します。
6.定期的な振り返りの実施
支援の開始後も、原則として学生サポートセンターと学生で、状況の確認などのための振り返りを定期的に行います。
7.支援方法の再調整
支援の内容や方法は、授業の内容や進捗、状況に応じて変わります。振り返り等を通して必要性が生じた時は、再調整を行ないます。
8.学期末の振り返り
学期末には、原則として学生サポートセンターと学生で支援や修学の状況について振り返りをします。必要に応じて学科も参加します。学生自身が主体的に支援を活用する機会の1つとし、この振り返りを丁寧に行なうことで次学期移行の支援や、社会(職業)移行サポートへとつなげていきます。
支援は、授業担当教員と学生サポートセンターの綿密な連携によって行ないます。
学生サポートセンターでは、教員がスムーズに授業を行なえるように、必要な支援者の配置や (手話通訳者やノートテイカーなど)、様々な作業(教材・資料のデータ化や文字起こしなど)などを行ないます。一方、教員の積極的な関わりや工夫によって、支援の準備や手配がスムーズ・効果的に行うこともでき、支援の質を大きく高めていくこともできます。
支援を円滑・効果的に行なうために授業担当教員にご協力いただきたいことや、支援の質を高めるために有効な工夫等を下記に記載していますのでご活用ください。
支援を行なうにあたってお困りのことや、詳細な情報、お手伝いなどが必要な場合は、お気軽にお問い合わせください。また、より効果的な支援やアイディアがありましたら、ぜひご提案ください。
聴覚に障がいのある学生が必要とする場合、視聴覚教材は字幕付きのものをご使用いただくか、学生サポートセンターで行う「文字起こし」をご活用ください。手話通訳やノートテイカーがついている場合であっても、映像の通訳は非常に難しいため、授業に参加し、理解をするためには字幕か文字起こしが必要です。また手話通訳やノートテイクを必要としていない学生でも、視聴覚教材については聞き取りが難しくなることも多く、同様に字幕や文字起こしを必要とすることもあります。
聴覚に障がいのある学生にとって、字幕のない視聴覚教材は以下のような理由から理解が困難です。
字幕付きの教材を利用したり、それが難しい場合は文字起こしを活用すると、これらの困難を軽減させることができます。
※「見てもらうだけなので」「表情を見ることが目的なので」等の理由で、字幕や文字起こしがないまま視聴覚教材が使用される場合がありますが、こういった対応はお控えください。たとえそのような目的での使用であっても、他の学生は音声を聞いている以上は、同じ情報を伝えることが必要です。
視聴覚教材のアクセシビリティを確保するため、学生サポートセンターでは「文字起こし」を行なっています。字幕付き教材のご用意ができないときは、こちらをご活用ください。
1.学生サポートセンターに教材をお持ちください
使用予定日の概ね2週間前までにお持ちください。白金・横浜どちらでも受付可能です。依頼の際に「文字起こし依頼書(教員用)」のご記入をお願いいたします。依頼時に、納期や教材の返却方法等を確認いたします。
文字起こし依頼書(教員用)(PDF / 129KB)
文字起こし依頼書(教員用)(Word / 24.5KB)
※破損等を防止するため、可能であればオリジナル教材ではなくコピーした教材をお持ちください。また学生に預けることはお避けください。
※作業時にはコピーしたものを使用します。オリジナル教材を学生サポートセンターでコピーする場合は、細心の注意を払って行いますが、万が一、作業の過程で不測の事態が生じても補償はしかねますので予めご承知おきください。
※文字起こしだけでは理解しづらい映像の場合、字幕を挿入したほうが良い場合もあります。必要に応じて、スタッフから提案させていただきます。
2.作業
学生サポートセンタースタッフ、または学生サポートスタッフが表記ルールに従って文字起こしを行います。
3.完成データのお渡し
完成した文字起こしは、WORDファイルで先生にお渡しします。次年度以降もご活用ください。
4.学生へお渡しください
使用する際にプリントアウトし、教室で学生に直接お渡しください。完成次第、学生サポートセンターから直接学生に渡すことも可能です。ただし、その場合は、視聴時よりも先に学生が内容を知っている場合もある点にご留意ください。特に、成績評価などに関わる際にはご注意をお願いいたします。
※基本的な流れは上記のようになっていますが、個々の学生や授業に応じて柔軟に対応しています。まずは学生サポートセンターへご相談ください。
手話通訳者やノートテイカーの支援を最大限に活かすためには、事前に資料を提供しておくことが大切です。こうすることで、先生のお話をより高い質を保って伝えることができます。また、授業によってはその専門性の高さゆえに、手話通訳者・ノートテイカーに事前に準備をしてもらわないと支援が成り立たないこともありますので、授業資料や関連情報をできるだけ提供してください。
手話通訳やノートテイクは、「同時通訳」の1つです。音声言語の同時通訳と同様に、事前の情報や準備なしで通訳をすることや、馴染みの薄い内容を通訳することにはかなりの困難を伴います。しかしながら、全ての授業に、その分野に精通した通訳者を配置することは現実的に不可能です。
そのため、事前に資料を提供し、可能な限りの準備や予習ができるように配慮・調整をすることで、手話通訳者・ノートテイカーをフォローすることが大切です。このように、授業担当教員と通訳者が「協働」することで、よい支援を行っていくことができます。
そして、それは結果的に、聴覚障がい学生が授業に十分に参加できること、教員がスムーズに授業を行えること、聴覚障がい学生を公平に指導・評価できることにもつながっていきます。
以下のような情報が事前準備に役立ちます。可能な範囲で提供してください。
学生サポートセンターに持参する、メールで送る、学生に直接渡す、e-learningにアップしておくなどの方法でご提供ください。
なお資料は完成版である必要はありません。作成途中であってもいただければ、その時点から準備に入ることができます。 また、授業方針として学生には資料を配布しない場合でも、通訳者用にはご提供をお願いします。
※「資料の事前提供」以外に、聴覚障がい学生の授業参加の度合いを高めるため工夫やポイントは次項をご覧ください。
聴覚障がい学生が十分に授業に参加するためにはさまざまなバリアが存在します。通訳がついていたり、補聴機器を利用していても、「内容はなんとかわかるけれど十分に参加ができない」「置いてけぼりになっている」という状況が生じがちです。通訳や補聴システムだけに頼らずに、様々な工夫を取り入れることで全員が参加しやすい環境を作ることができます。以下に、聴覚障がい学生が、授業でしばしば直面する困難とその理由、それらを解消・軽減するための工夫を記載していますので、授業の状況に応じてご活用ください。
通訳をするためにはある程度の「ゆとり」「余裕」が必要です。しかし、一般的に視聴覚教材の音声は簡潔に「書き言葉」のようにまとまっているため、通訳は非常に難しくなります。
視聴覚教材を使用する際は、字幕のある映像を使用すると聴覚障がい学生も理解できるようになります。字幕付きの教材がない場合は、かわりに文字起こしを渡すと有効です。(文字起こしは学生サポートセンターで行います。詳細は、こちらをご覧ください。)
通訳や聞き取りに集中できるように、同時作業をできる限り減らすような工夫・調整が非常に有効であり、聴覚障がい学生の理解と参加の促進につながります。
話者の発話と、通訳を通してそれが伝わるまでの間には、5~10秒程度のタイムラグが生じています。そのため、通訳を利用する聴覚障がい学生は問いかけには直ぐに反応できない、授業の流れに乗り遅れがち、指示語の理解がしにくい、といった状況が生じます。
通訳時に生じるタイムラグの影響を軽減するためには、以下のような工夫・調整が有効です。
一度に通訳できる音声は1つだけです。そのため、同時多発的に発言があると聴覚障がい学生の参加に大きな支障が生じます。また、通訳を利用しない学生の場合も、同時多発的な会話では、誰が話しているかわからない、話者に注意を向けるのが間に合わないため理解しにくくなります。
以下のような工夫・調整をすると、全員が参加しやすい環境を作ることができます。
※その他にも様々な工夫が考えられます。良いアイディアがあればぜひお寄せください。