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人に頼る大切さ~憧れの留学生活、コロナ禍での気づき

2020.12.17

自分ではどうすることもできないイレギュラーな状況は時として起こる。しかし、そんな時こそ普段の心持ちや行動が試され、そして多くの気づきがあるのではないだろうか。憧れの留学生活を謳歌していたさなかに起こった新型コロナウイルスの蔓延。世界規模の問題となる中、アメリカ・ミシガン州の留学先にいた内川さんが経験し感じたこととは?

内川 有希子 経済学部 経営学科 4年 国際交流と社会でも役立つ学びの両立を目指し経営学科に入学。1年次より学内の活動に積極的に参加し、学生広報委員、ボランティアセンター「Do for Smile@東日本」プロジェクト、「1 Day for Others」プロジェクトリーダー、オープンキャンパススタッフなどを経験。2年次夏休みの短期留学を経て、3年次(2019年8月)よりアメリカ・ミシガン州にあるホープカレッジへ長期留学。趣味は読書、特にミステリー系を好む。キャンパス内の図書館が一番のお気に入りスポット。

留学は大学生活最大の目標だった

高校時代から国際交流に興味があり、留学も考えながら大学に入学しました。入学後は自分の視野を広げるため、さまざまなことにチャレンジ。自分の専攻である経営学をボランティアや他者理解の場に結び付けて幅を広げてみたり、大学広報誌の執筆や明学に来る留学生のバディをしてみたり。やりたいことにとことん挑戦する中、変わらなかったのは「留学したい」という思いでした。

2年次の夏休みに短期留学で訪れたホープカレッジ。キャンパスや街の居心地のよさ、教職員や学生の温かい人柄、そして学びに熱心な大学全体の雰囲気に「ここだ!」と思いました。現地で出会った友人やスタッフに「1年後必ず戻ってくる!」と明言して帰国したほど意志は固くなりました。この夏の経験が決して簡単ではなかった長期留学への道のりのモチベーションになったことは間違いなかったですね。

1年後、語学スコアを獲得するための勉強や留学準備と授業の両立など、努力の末にやっとつかんだ留学生活がスタート。第一希望のホープカレッジで、友人や教職員との再会も果たしました。履修したドイツ語の授業では、スピーキングを中心とした授業スタイルに、語学学習に対する日本の大学との違いを実感。他の授業でも課題の量がとても多く、本当に大変な思いをたくさんしましたが、教授やクラスメイト、ルームメイトに相談し、多くの人に支えられながら何とか進んでいくことができました。授業以外にも、日本語専攻のある大学だったので、アシスタントとして自分の母国語を英語で教える機会に恵まれたり、母国語以外の言語を学ぶことの難しさをルームメイトと共有したり。寮生活や日本語クラブでの活動、ホストファミリーとの交流など、新しい経験に満ち溢れた実り多き日々を送っていました。

遠い国での出来事だと思っていたら…

―留学生活も後半になった2020年2月。新型コロナウイルス感染症の影響がアメリカにも出始める。遠く離れた国での出来事と思われていたのに、あっという間にアメリカ全土に広まりホープカレッジも否応なくその影響を受けることになる。

日本やアジア圏で大きな問題になっていることはニュースで知っていました。アメリカも大都市では感染者が出始めていたので、人が集まる場所への行き来や州をまたぐ移動を止めるなど、何となく気にはしながら過ごしていたのですが、まさかここまで急激にアメリカ本土の状況が変わるとは正直思っていませんでした。心配と落ち着かない日々を過ごしていたところ、ついに3月中旬に全授業がオンラインに切り替わると同時に、多くの学生が寮から自宅へと帰っていきました。寮に残ったのは留学生のみとなり一人で心細く過ごしていたところ、ついに退寮指示が出されます。これからどうしようか…と考えていたところ、ホストファミリーから声をかけていただき身を寄せることになりました。

他の国に留学中の友人とも連絡を取っていたのですが、帰国を決めたとの連絡が次々と入り始めます。アメリカのひっ迫した感染状況やいつ渡航ができなくなるか分からないことに危機感を感じ、結果私も帰国を決心せざるを得なくなりました。本当であれば、残りの留学生活の間に友人やルームメイトと出かける計画もあり、これからもっと人間関係を深めていけると期待していただけに、帰国というつらい決断をしなければならなかったことが本当に残念で、気持ちの整理がつかない状態が続きました。

悪いことばかりではない~人に頼る大切さ

友人たちに直接別れも言えないまま帰国の準備を進めている時、ホストファミリーがずっとそばに寄り添ってくれていたことは今でも忘れられません。帰国のタイミングや手続きの相談にも本当の家族のように心配してくれ、親身に向き合ってくれました。とにかく私を悲しませないようにと「有希子のやりたいことを全部やる!」と言って、近くのレストランや公園に連れて行ってくれたり、一日中一緒に映画を見たり、パズルをしたり、猫たちと遊んだり。私が楽しい思い出を持って帰国できることを最優先に考えてくれました。みんなそれぞれ不安な思いを抱えていたはずなのに、「有希子は私たちの娘だと思っているよ」と言ってくれ、温かく支えてくれたホストファミリーのことを思い出すと感謝の気持ちでいっぱいになります。

そして、今回の留学経験は、私に「人に頼る」ということがどれだけ大切なことなのかを教えてくれました。今までの私は、「何でも自分の力で解決することが自分には合っている」と思ってやってきました。自分でやれば思う通りに物事を進められるし、それなりに納得もできた。けれど、今回コロナ禍に直面し、素直に自分の気持ちを伝え、人を信じ頼ることも必要だと実感したんです。

自分の力ではどうすることもできないことは、生きていれば必ずあるはずです。そんな時、周りを頼ることで、新たな方法を見つけられたり、効率がよくなったり、思いがけない感情が湧いたりする。この留学生活を振り返って、「人に頼り多くの方々に支えてもらった」ことをさまざまな場面で気づきました。

思い通りにいかなくても…

私の場合、人生の節目でおいて自分の思い描いた通りに物事が進まないことの方が多かったように思います。大学に入学して「次こそは…!」と思い、大学生活最大の目標だった留学を実現させるため、多くの時間を割いて勉強し、準備してきました。しかし、やっとの思いで実現した留学生活も、新型コロナウイルス蔓延という世界規模の問題に直面したことで、結局最後まで成し遂げることができませんでした。

それでもこの経験を決してネガティブな体験だったとは捉えていません。3年間という時間をかけて実現させたこの留学生活は、「自分で立てた大きな目標を有言実行できた」という、大きな自信になったと私は思っています。その一方で、今回最後まで留学を終えられなかった分、またどこかでチャレンジして完結させたいという願いも強くあります。社会人になっても、この自信と新しい目標を大切に、前に進んでいきたいと思っています。

そしていつかまたホープカレッジを訪れて、たくさんの友人や教員、スタッフと再会したいですね。

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