現代は企業や行政の専門化が高度に進んだ社会と言えますが、我々はそのメリットを享受する一方、「縦割り組織」によって生じうる弊害にも直面しています。そこで法と経営学専攻のカリキュラムは、経営学と法学の双方から学際的に、健全かつ合理的な企業経営の在り方を探求することができるように編成されています。また、事業活動で不可避的に生じる諸問題に適切に対処するために、豊富な事例研究を多用して経営学および法学双方の理論を融合的に学ぶことができるように工夫されています。
たとえば必修科目の「ビジネス総論1・2」では経営学の教員と法学の教員2名が常に教室に入り、医薬品のネット通販に対する厚生労働省の規制が最高裁で否定された事案のような両分野にまたがる事例を題材にして、自由闊達な議論を重ねながら両学問の視点から分析し、総合的な解決策を練り上げていきます。法と経営学専攻は、経営学と法学との広い視野に立った問題意識を持ち、自身の専門分野について深い洞察力のもとで理論と実践とを架橋することに挑戦する意欲的な方々の入学を願っています。
事業を維持し発展させていくためには、経営上の意思決定力と、組織の法令遵守や資産管理上の法律知識とを習得することが重要です。中小企業の後継者不足は深刻化しつつあり、事業展開を担うには経験が不足している者であっても、短い期間で企業経営で生じうる諸問題に適切に対処する能力をつけることが必要です。法と経営学研究科は、経営学と法学とにわたる多彩なバックグラウンドを有する教員と充実したカリキュラムによって、事業経営能力の獲得を可能にします。
営利企業であっても短期的な収益追求だけではなく、法令遵守さらには社会的責任に対する要求が強まっている今日、企業に進む学生が付加価値を高めるためには、経営学と法学にまたがった問題意識や問題解決のセンスを磨くことが重要です。本研究科ではこれらに加えて、専門科目の履修や修士論文作成を通じてそれぞれの専門領域における分析力や知識、表現力を習得することで、経営コンサルティング、法務部のスペシャリストなど企業でリーダーとなりうる専門的職業人を育成します。
修士論文を税法に属する科目で研究した場合は税法に属する科目について、会計学に属する科目で研究した場合は会計学に属する科目について、税理士試験の試験科目免除申請をすることが可能です。ただし、科目免除は国税庁が定める所定の審査に合格した場合であり、審査で不合格になる場合もありますので、ご注意ください。詳しくは大学院事務室までお問い合わせください。
一般財団法人日本産業協会からマスター消費生活アドバイザーに係る大学院指定を受けています(全国で5大学院のみ)。本研究科ではこの資格を取るために必要な要件の1つを満たすことができる科目が提供されています。詳しくは「明治学院大学 法と経営学研究科」のオリジナルサイトをご覧ください。
税理士を目指すにあたり、法学と経営学の知識は不可欠です。経営者に税法からみた経営面へのアドバイスを、より具体的に判りやすくするためには、ケースごとに過去の判例を挙げ、説明することができなければなりません。法と経営学研究科では、判例の読み方について基礎から応用まで奥深く学べました。社会に出る前の段階で、この知識を得たことは非常に大きいと感じています。私がこの科で取り組んだ研究テーマは、「取引相場のない株式評価の税法上の問題点」でした。上場していない株式は相場というものがなく価格を決めることが非常に困難であり、裁判所の通達通りであっても基準にすべき評価額の算定など上手く行かないケースがあるという問題を抱えています。また、税法には納税者の公平性を保つという特殊な事情から、曖昧な文言が非常に多く扱われていることにも疑問を持ち、研究を続けてきました。今夏、私は税理士となるべく新たなスタートを踏み出します。法と経営学の専門家として、幅広い業種の経営者の方々に必要とされる存在になりたいと思っています。
*は研究指導教員
修士修士課程の研究指導
氏名 | 専門分野/開講予定科目 | 授業内容 |
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飯田 浩司 教授* 修士 |
知的財産法研究 (知的財産の法と実務) | 企業活動と関連が深い著作権法、不正競争防止法等の知的財産法に関して、過去の判例や事例を題材として、実務上の留意点を踏まえつつ検討する。 |
大野 弘明 教授* 修士 |
ファイナンス研究2 (インベストメント) | 資産価格がどのように決定されるかについて、理論的・実証的に分析する。資産価格の含意を理解することは企業価値を高め得るのでビジネス戦略にとって有用な示唆をもたらす。 |
菅 正広 教授* 修士 |
社会起業論 | 社会的な課題をビジネスの手法で解決するマイクロファイナンスなどソーシャルビジネスについて、マクロとミクロの両面から考察し、公共政策や実践のあり方を探求する。 |
来住野 究 教授* 修士 |
企業法研究1 (企業組織の法と実務) | 株式会社における所有と経営の分離・機関設計の多様化を確認した上で、コーポレート・ガバナンスにおける各機関の役割及びその実効性確保のための法規制を学び、実務上・立法上の課題を探究する。 |
北浦 貴士 教授* 修士 |
日本経営史 | 日本の経済発展を可能にした原動力を日本企業の成長という観点から歴史的に解説する。特に19世紀後半から20世紀前半にかけて大企業が誕生した背景を検討していく。 |
近藤 隆司 教授* 修士 |
民事再生法研究 (企業再生の法と実務) | 民事再生法は、企業(や個人)の経済的再生スキームを定めた基本法である。判例研究を行い、あるいは実際の再生事例を分析するなどして、民事再生法のあるべき姿を探究する。 |
永井 裕久 教授* 修士 |
経営組織・労務研究 (戦略的人的資源管理) | 国際的な潮流である人材流動化、メンバーシップ型からジョブ型への雇用慣行の変容の中で、次世代の組織マネジメントと人材開発の諸課題に焦点を当て、その解決策について考究する。 |
西山 由美 教授* 修士 |
グローバルビジネスと税 | 多国籍企業の巧妙なタックス・プランニングは、必要な企業戦略か、それとも過剰な課税逃れか。高度にグローバル化・デジタル化したビジネスに対するフェアな課税の在り方を考える。 |
福田 清明 教授* 修士 |
契約法研究 (契約法の基本原理) | 民法の第1編総則の第5章法律行為、及び第3編債権の第1章総則と第2章契約を中心に、民法の契約法の基本原理を概観し、商法の第2編商行為の商事諸契約への橋渡しをしたい。 |
山田 純平 教授* 修士 |
会計研究5 (会計基準論) | 会計基準の考え方と実務におけるその適用について解説する。現時点のルールに限らず、欧米やこれまでの歴史的な議論を踏まえて、多角的に会計基準のあり方について考察する。 |
渡辺 充 教授* 修士 |
税法研究3 (法人税の法と実務) | 本講は、法人税に関する判決例を取り上げ、法人税が抱える最近の難問を中心に、その問題に対する当事者のそれぞれの法解釈、判示の内容を分析し、法解釈論・立法論を学ぶものである。 |
大竹 光寿 准教授* 修士 |
経営学研究論 | 組織や経営現象を対象とした研究の方法について学ぶ。方法論の文献のみならず、多様な実証研究の検討を通じて、問いと仮説の設定、データ収集や分析方法、表現方法などに対する考えを深める。 |