社会学部社会福祉学科は90年、大学院社会福祉学専攻は、文学研究科社会福祉学専攻として発足してから60年を超える伝統を誇ります。21世紀に入り、社会福祉学専攻は、わが国の社会福祉領域の広範なニーズに応えるため、カリキュラム改革を実施してきました。
博士前期課程ではさまざまな講義科目を配置して、学生の多様な要求に応え、現実の社会福祉の課題に対応できる研究力の基礎を養うことを目標としています。また、博士後期課程では自立した研究力と、高度な専門的実践力を養うことに重点が置かれ、博士論文の作成に向けた指導が行われ
ています。なお、首都圏の社会福祉学専攻博士前期課程を有する13大学の大学院は、委託聴講生を交換し合う「単位互換制度」を実施しており、本専攻の大学院生も他大学院の授業を受講することができます。
このように博士前期・後期課程において、社会福祉学の研究者を養成するだけでなく、社会福祉の現場におけるソーシャルワーク実践を視野に入れたリカレント教育の体制を整え、多様な実践者等を学生として受け入れて、研究と実践の創造的な発展を志向しています。
リカレント教育とは、主に学校教育を終えた社会人が大学等の教育機関を利用する教育のことです。社会福祉学専攻では、2008年度より、前期課程・後期課程ともに、現職ソーシャルワーカーのためのリカレント教育体制を導入しました。実際に社会福祉の現場で働きながら学べるように、入試、開講時限などでのサポート体制を整えています。
社会学研究科(社会学専攻・社会福祉学専攻)には給付型学生研究奨励金制度があります。この制度には、社会学研究科博士前期課程の新入生を対象とし、10名を上限として選考の上、支給する第1種奨励金(1人25万円)と、博士前期課程の在籍者、博士後期課程の新入生および在籍者を対象とし、15名を上限として選考の上、支給する第2種奨励金(1人15万円)があります。詳しくは、大学院事務室までお問い合わせください。
児童養護施設で暮らす子どもたちは、どのような理由から親元に戻ることができないのか。また子どもたちとその家族に必要な支援とは何か。学部生時代の実習で強い関心と更なる疑問を持った私は、博士前期課程への進学を決意し、施設ではなく家庭で暮らすために求められるソーシャルワーク支援についての研究を進めました。研究テーマは「虐待等による親子分離後における『家族再統合』支援に関する一考察」で、多種多様な理由から社会的養護を必要とする子どもたちの「最善の利益」を保障する方法の一つとして、「家族再統合」支援のあり方を模索しました。実際の支援現場へ調査のために足を運び実践に触れたことは貴重な経験です。また、研究過程ではソーシャルワークの視点から歴史や理論について議論を深め、現代社会における価値や倫理を再考しながら、具現化していく思考力を大きく培ったと考えています。現在私は、児童相談所に勤め、児童福祉司として子どもたちやその家族の支援をする仕事をしています。多様なニーズに応えていく困難な仕事ですが、大学院で得た貴重な学びと経験を元に、社会正義の実現に向け励んでいます。
博前博士前期課程の研究指導 博後博士後期課程の研究指導
氏名 | 専門分野/開講予定科目 | 授業内容 |
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明石 留美子 教授 博前博後 |
福祉開発論 | 新たな社会福祉支援が必要となる国内外の課題を理解し、支援を開発するために有用な方法について学ぶ。 |
茨木 尚子 教授 博前博後 |
社会福祉運営管理論 | 障害福祉領域を中心に、当事者主体の社会福祉支援とは何かを追究している。当事者団体との共同研究から、当事者参加型調査のあり方についても研究する。 |
大瀧 敦子 教授 博前博後 |
医療福祉論 | 医療ソーシャルワークの支援対象となる生活課題とそれを持つ人について、体系的に理解し、理論的考察ができるようになることを目標に、学修を進めていく。 |
岡 伸一 教授 博前博後 |
社会保障論 | 社会保障の理論と政策について、法学、経済学から研究する。EUやILO等の国際機関の社会保障政策から国際社会保障協定、途上国への社会開発協力を含め、国際社会保障論を研究する。 |
金子 充 教授 博前博後 |
社会福祉原論 | 人や社会をいかに理解・認識するか、社会福祉はなぜ必要か、社会福祉を成り立たせている原理は何かといった本源的な問いにこたえる理論を探求し、時代に求められる社会福祉学を構想する。 |
久保 美紀 教授 博前博後 |
ソーシャルワーク論 | ソーシャルワークの理論と実践をどのように連結するのか、そして、ソーシャルワーク実践を支える価値の生成、価値の具現化について探究する。 |
新保 美香 教授 博前博後 |
公的扶助論 | 貧困・低所得者福祉に関わる日本、および諸外国の理論の変遷と内容を学ぶ。また、生活保護制度、生活困窮者自立支援制度の動向を分析し、今後のあり方を検討していく。 |
和気 康太 教授 博前博後 |
社会福祉調査論 | 社会福祉学・研究において必須の社会福祉調査の基礎理論について学ぶことを目標とする。理論なき実証(調査)は盲目であり、実証なき理論は空虚である。この理論と実証の関係を視野に入れて学んでいく。 |
金 圓景 准教授 博前博後 |
高齢者福祉論 | 超高齢社会における高齢者の暮らしや課題について社会福祉学的観点から多角的に検討し、高齢者を取り巻く個人的・社会的な背景などについて関連理論・実践から学修する。 |
榊原 美樹 准教授 博前博後 |
ソーシャルワーク論 | メゾ・マクロ領域のソーシャルワークについて、特に地域福祉計画とプログラム評価に焦点をあて、理論・実践の両面から学修する。 |
関水 徹平 准教授 博前博後 |
ひきこもり支援論 | 若年層・中高年層にまで広がる社会的孤立や生きづらさの実態と、その社会構造的な背景、支援のあり方について、福祉社会学の視点から探究する。 |
高倉 誠一 准教授 博前博後 |
特別支援教育論 | 障害のある子どもに加え、不登校など特別なニーズをもつ子どもを対象に、この子たちを教育の場でいかに主体的存在とするかという視座から、教育的支援を巡る課題について検討する。 |
平澤 恵美 准教授 博前博後 |
精神保健福祉論 | 精神保健福祉における専門職としての業務・権利擁護の範囲・包括的な援助・多職種連携とチームアプローチに焦点をあて、精神障がいのある人々に対する支援の体系について学ぶ。 |
宮﨑 理 准教授 博前博後 |
ソーシャルワーク論 | ミクロレベルのソーシャルワークに係る個人の経験と社会的排除・抑圧の構造的障壁の関係を分析し、国際的・学際的な視野からクリティカルなソーシャルワークの理論と実践を探求する。 |
三輪 清子 准教授 博前博後 |
児童福祉論 | 児童福祉、特に社会的養育に重点を置く。また里親養育についても学び、子どもの思いや子どもの声を反映させた社会的養育体制をどのようにして構築していくことができるのか探る。 |