芸術メディア論コースは、国内の芸術系では他にほとんど類を見ないユニークな学びを提供する場として、2006年に本学科に新設されました。学問としてもまだ若く、可能性あふれる分野でもあります。
本コースの特色はまず、既存のジャンルの枠組みにこだわらない点にあります。テレビやラジオのようなマスメディアや、SNSやスマートフォンなどのデジタルメディアといった諸々の媒体を扱うのはもちろんですが、それだけではありません。アニメやマンガをめぐるオタク系の文化現象、アイドル、ポピュラー音楽、ディズニーなど、ふつう「芸術」とはあまり関係がないと考えられているようなものも扱いますし、広告、デザイン、ファッション、流行、都市・建築、恋愛など、社会に存在する現象ならどのようなものでも対象にすることができます。
というのも、本コースの核は「メディア論的な視座」の修養にあるからです。メディア論的な視座とは、物事を、それを取り巻く関係に着目して捉え直すような見方のこと。この見方を学べば、世界はこれまでと異なった輝きをもって見えてくるはずです。つまり、他の誰とも違う、あなたにしか見ることのできない独自の視点から世界に触れることができるのです。
卒業後には、本コースでの学びを活かして、企画、制作、広報といったクリエイティヴ系をはじめ、幅広い業種をめざすことができます。


1年次
1年次はコース選択は行わず、6つのコース全ての入門的な講義を受講します。
「メディア」とは世の中で一般的に言われるネットやテレビのことだけではありません。コースに分かれていない1年生の授業では、芸術メディア論コースで扱うメディアの概念や歴史、芸術・文化・社会との関わり、メディア論的なものの見方などの基本を学びます。
2年次
2年生の芸術メディア論演習は自分自身の頭と体を動かしながら実践的にメディアを学ぶ授業です。私たちの日常や自身の内面を探求し、グループでのディスカッションや協働を通して作品を創りながら、芸術メディアに対する理解を深めていきましょう。
3年次
3年生は少人数クラスの授業となります。メディアや芸術・文化に関わる専門的な文献の講読、自分なりの問いに関するリサーチ、卒論執筆に必要な書く訓練などを通して、メディア・芸術・文化・表現などについてより深く学びます。
4年次
ゼミでの学び合いを通じて、自身の関心領域への理解を深め、自分で決めたテーマを探求しながら卒業論文を執筆します。
学習についてのポイント
本コースのカリキュラムは、三本の柱が密接に連関する形で編成されています。
第一は知識系。何事であれ知識を得ることは、いうまでもなく必要不可欠です。本コースでは理論や歴史から現場での実践まで幅広い主題の講義をとりそろえています。
第二は実践系。実技の技能を身につけるというよりも、体験をとおして学ぶ新しいタイプの学習手法のこと。課題にもとづいて企画・製作・発表をおこなうワークショップや、フィールドワーク(実地調査)などをとおして、頭とからだを総動員して学びます。
第三はゼミ。本コースでは三年次からはゼミ配属となり、四年次までの二年間、少人数で密度の濃い学びを実施します。受講者がそれぞれの関心にもとづいて卒論を執筆できるよう、ていねいに指導します。
教員紹介
芸科生に聞く
芸術メディア論コースの魅力や授業について、学び以外の活動など在学生や卒業生にインタビューしました。
教員からのメッセージ
Stay Hungry, Stay Foolish.
生活の中の「あたりまえ」を一度疑ってみてみよう。日常に埋め込まれたたくさんの「メディア=媒体」に気付いていくことは、人間の表現と社会の繋がりについて、深い理解への道を拓いてくれます。
卒論リスト<2024年度>
卒論タイトル |
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多様なセクシャリティが捉えるBL作品の魅力――クィアがボーイズラブに求める「現実的な物語」 |
子供向け魔法少女アニメに熱中する大人ファンの心情 |
SNS時代の「私」と「分身」:2000-2019年の『りぼん』における双子の描かれ方 |
一人称詞の揺れが表す「自分」ー漫画『3月のライオン』『ハチミツとクローバー』を事例にー |
ファン視点から見る「推し活」のビジネス化~企業の参入とその影響~ |
世界遺産の「顕著な普遍的価値」の再考する~「古都鎌倉の寺院・寺社ほか」を事例に~ |
「デジタル化社会における新しい旅の思い出の形とは? -国内旅行の変遷から探る-」 |
可愛さだけが魅力じゃない?─SNS 発キャラクター『ちいかわ』に引き寄せられるわけ─ |
揺らぐインターネット広告の信頼性~ステルスマーケティングを中心にZ世代の意識調査から考える~ |
客と店の人はどのような雑談をするか―喫茶店における接客のエスノグラフィー― |
インフルエンサー投稿の「こだわり」の背景~カフェPR依頼の実態を通して考える~ |
ファッションは自己表現か?個性か?1970-2000年「an-an」調査 |
K-POP炎上のトリガー•展開•感情 - YouTube日本語コメントの調査から |
スナックにおけるお通しの役割 -ミュージックパブ・ポッポのエスノグラフィー- |
eスポーツの社会的価値と普及における課題 ~偏見と誤解を乗り越えるためには~ |
じゃんがら念仏踊りはいかにコロナ禍を生き延びたか |
思いやりのある非難-YouTube「ジュニアチャンネル」におけるファンコメントの分析- |
大河ドラマを語る視聴者たち~メディアツールの変化によって 可視化された視聴熱~ |
サウナにおけるコロナ・エチケットはどうなっているか? |
ソフトクリームを着たぬいぐるみーカフェでのぬい活を事例にー |
クラフトビール缶パッケージのデザイン–伊勢角屋麦酒を事例に– |
美術館のチラシはどのように生き延びるか ―チラシ宅配サービス「おちらしさん」を事例に― |
『This War of Mine』の犠牲者像 ―戦争ゲームから見る反戦の可能性― |
二次創作によって拡張する交友関係 ~作品を共有するというコミュニケーション~ |
愛と憎しみの表裏一体性 ―映画『スター・ウォーズ』におけるアナキン・スカイウォーカーの人間性 |
M-1グランプリの魅力—20年間大会が求められ続けられた理由とは— |
美術館のフォトスポット-東京23区美術館調査- |
父となるゾンビ―映画『アーミー・オブ・ザ・デッド』で描かれるゾンビ表象・形相の変化から― |
映像と人を繋ぐ「シビックプライド」-地域再発見を支える人々から探る |