本コースが取り扱う映像芸術の中心は映画です。100年を超える歴史を持つ映画ですが、芸術としてはまだ新しいジャンルです。しかし、その短い歴史の中で、写真から映画、そしてデジタル映像へと大きく変化してきました。短いながらも濃密な歴史を、表現、思想、技術面などからたどっていきます。映像に関する学問的研究は新しいがゆえに、制度的な考え方に囚われがちな人間の思考にラディカルな衝撃を与えるものとなります。映像の操作こそが実は思考の定義であるということに他ならないからです。「映像の世紀」と呼ばれた20世紀ですが、日本において映像芸術文化に対する学識を得ることは、21世紀に生きる私たちにとってますます重要なものになるでしょう。

本学の映像芸術学コースの特徴は、歴史、理論、批評という映画研究の3つの側面をバランスよく学べることにあります。また、大衆娯楽として一般的に考えられている映画ですが、演劇、文学、写真、音楽など実はさまざまな芸術形式やメディアと深い関係を持っています。映画と社会や映画と文化についての講義も充実しています。こうした総合的な角度で学べることも本学芸術学科の映像芸術学コースの特徴です。

1年次

1年次はコース選択は行わず、6つのコース全ての入門的な講義を受講します。

コースに分かれていないこの時期に、映像とは何であるかという基礎的な知識を学びます。映画の誕生に始まり、サイレント映画からトーキーにいたる通史を基本とし、映画を映画たらしめる映像の文法、映像を支える機材や装置について扱います。また映画以前の視覚装置の歴史についても学びます。

2年次

2年生の演習では、映像を美学的、歴史的、また社会学的な方面から読み解く力を養うことを目指します。

3年次

3年生は、具体的なジャンルやエリアに分け、専門的に映像芸術を掘り下げていく授業となります。日本をはじめ欧米からアジアの作品、ドキュメンタリーやアニメーション、実験映画まで、さまざまな領域を扱います。

4年次

自身の関心あるテーマを選び、文献資料を読み込み、映像作品への理解を深めながら、研究発表を批評し合い、卒業論文の執筆に取り組みます。

4年間の流れ・カリキュラム表 PDF


学習についてのポイント

本学科には、10,000本以上の映像資料を研究資料として所蔵しており、映像芸術学コースを選択した学生たちは、1、2年の間に映画史の重要な80本余りの映画作品を観るとともに、この豊富な映像ライブラリーを駆使して、自由自在に映像体験を積み重ねていくことが大切です。 授業の課題として、ミニシアター系の劇場や国立近代美術館フィルムセンター、アテネフランセ文化センターといった非商業上映会に参加することが与えられることもあります。また、映画史の授業では、活動弁士のパフォーマンスやゲスト講義を始め、2年次の演習では、実際にフィルムアーカイヴや映画記念館などに見学に行って実際にフィルムに触れる機会や、研究員のお話を聞く機会もあります。映画祭のインターンなどもする学生も多くいます。映画のシンポジウムやゲストトークなども開催されます。このように多岐にわたる学習も映像芸術学コースの特徴です。


教員紹介


芸科生に聞く

映像芸術学コースの魅力や授業について、学び以外の活動など在学生や卒業生にインタビューしました。


教員からのメッセージ

本学科の映像芸術学コースは25年の歴史を持ち、大学で映画を専門的に学べる充実したカリキュラムを提供してきました。映像芸術学コースでは、今まで映画に対して持っていたイメージが180度変わる学習体験ができるでしょう。授業では、映画について考えること、映画を見ること、映画について書くこと、そして映画について語ることを学んでゆきます。映像の歴史と理論に重点を置いている映像芸術学コースですが、実際に映像制作をして、批評しあうという授業もあります。

「映画は簡単にわかるが、分析するのは難しい」とよく言われます。その分析や批評、歴史を知ることの醍醐味を経験してください。4年間で培った映画に対する豊富な知識を得た卒業生たちは、今映画に関わる様々な現場で活躍しており、アメリカの大学で教鞭を執っている先輩もいます。


卒論リスト<2023年度>

卒論タイトル
ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督の『ペトラ・フォン・カントの苦い涙』における視線の政治学
映画サウンドが物語空間に及ぼす影響について
記録映画的手法を通した人間の深層追求~フィクション『人間蒸発』より~
松竹ヌーヴェルヴァーグと『青春残酷物語』、『日本の夜と霧』に見る若者のエネルギー
乃木希典が登場する映画の系譜
今敏の独自性について
ヴェンダース映画におけるドイツ性-『まわり道』を中心に-
是枝が描く「家族」のつながりとは何か
『美女と野獣』ジャンコクトーの映画とボーモン夫人の原作の比較
トーキーがアメリカ社会にもたらしたもの
黒澤明監督『生きる』にみる願望について
クリストファー・ノーランの『インセプション』におけるストーリーとプロット ―古典的ハリウッド映画の特徴から読み解く―
恐怖を快楽へと置き換える殺人鬼映画のファンたち
映画『時計じかけのオレンジ』に見る、様式化された暴力描写について
小津安二郎監督と清水宏監督の映画における「子どもの世界」の描写
ジム・ジャームッシュの映画における 「分かり合えなさ」について
デイヴィッド・リンチの映像表現における美術の影響‐シュルレアリスムとベーコン‐
『スター・ウォーズ』がアメリカにもたらした古典の復活と、新風の到来
黒澤明監督『どですかでん』(1970)の評価について

過去の卒論リスト