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2025年度新入生向け 式辞・祝辞

今尾 真 Makoto Imao
学長
学長 村田 玲音
明治学院大学 学長の今尾真です。
新入生の皆さん、明治学院大学並びに大学院にご入学、おめでとうございます。
また、保証人やご家族の皆さまには、ご子息、ご息女の本学へのご入学を心よりお慶び申しあげます。
明治学院大学を代表して、一言、お祝いの言葉を述べさせていただきます。

本学では、建学の精神である「キリスト教に基づく人格教育」と「学問の自由」を基礎に、学院創設者ヘボン博士が生涯実践した「“Do for Others(他者への貢献)”」の教育理念に則り、160年を超える歴史の中で、教育研究活動を積み重ねてきました。この教育理念のもと、本学が目指す姿を表す言葉として、「真理を探究し、世界に貢献する」の標語を掲げています。教育と研究で真理を探究し続けた成果は、海を越えた地球規模の世界から、身の回りの世界まで幅広く浸透し、明治学院大学は「世界」に貢献し、そうした大学であり続けるという強い思いが、ここに込められています。

さて、他者に貢献するためには、まず自分を理解することが大切です。その上で、他者を理解することが不可欠です。他者に優しくする、他者の気持ちを思いやることができなければなりません。それでは、他者を思いやるには何が必要か、それは「教養」です。「教養とは他者=他人の心が分かること」なのです(養老孟司『まともな人』〔中公新書、2003年〕)。つまり、“Do for Others(他者への貢献)”の教育理念とは、「他者の心が分かる学び」を身につけるということです。これなくしては、専門的な学問を学んでも何の意味もありません。「他者の心が分かる教養」を基礎として、いろいろ専門的な知識や考え方を修得し、社会にそして世界に貢献すること、これこそが明治学院大学の教育であり、「真の教養」ということを肝に銘じてください。真の教養とは、大学の1~2年間で知識として知る・学ぶのというものではなく、4年間をかけて、いや生涯を通じて、「身につけていくもの」です。こうした学びの基礎となる力を大学・大学院で修得してください。そのためには、それぞれの専門の学びに加えて、文学を読む、芸術に触れる、音楽を聴くのも良いでしょうし、古今の偉人の言葉に耳を傾けたり、歴史に学ぶこと、あるいは課外活動やボランティア、アルバイトなどでいろいろな経験や教えを受けるのも良いでしょう。謙虚な気持ちで素直にいろいろ学んでください。

そこで、学びについて、私が常々モットーとしていることをお伝えして、これから皆さんが大学・大学院で学問を行うに際しての参考にしていただければと思います。
ニュートンという人は、ここにいる皆さんは誰でも知っていると思います。木からリンゴが落ちるのを見て、「万有引力の法則」の着想を得たというお話しは有名です。しかし、本日はその話しではなく、ニュートンの学問ひいては物事に取り組む姿勢についてお話しいたします。ニュートンは最後まで、自分は知らないことが多すぎると信じていたそうです。晩年に人生を振り返り、「私は、海岸で美しい小石や貝殻を見つけて喜ぶ子どもに過ぎなかった。私の目の前には、真理という大海原が広がっていたというのに」と、語ったと伝えられています(毎日新聞朝刊2025年3月16日3面)。

万有引力の法則を発見し、微分積分法を創始して偉大な業績を残したニュートンですら、真理という海は底知れない深さと広がりをもっており、その海に比べれば、自分の発見したものなど小さな貝殻に過ぎないと、謙虚に振り返ったわけです。自分の知識や経験は取るに足らないものであり、知らないことは限りなくある、未経験のこともたくさんある。自分の業績や達成したことに満足することなく、無限に広がる真理の海を謙虚に探求し続けるという姿勢は、学問のみならず、あらゆる事柄に当てはまると思います(茂木健一郎『感動する脳』〔2009年、PHP文庫〕)。
ニュートンは、「自分の知識の限界を知ることは、新たな知識や理解を得る第一歩」だと教えてくれます。 このことは、ソクラテスの説く、「無知の知」という考え方にも通じます。

最後に、大学の4年間または大学院の2~3年間は、長いようで短い時間です。この間に将来を見据え、「自分をどう磨き、光らせるか」は、皆さん次第です。その際、「自分の知識の限界を知ることは、新たな知識や理解を得る第一歩」という教えを根底に置き、「真理を探究し、世界に貢献する」という意気込みをもって、大学・大学院での生活を有意義に送ってください。
あらゆる可能性が皆さんの前に広がっております。あらためて、ご入学、おめでとう。 

鵜殿 博喜 Hiroyoshi Udono
学院長

明治学院大学へのご入学、大学院へのご進学、おめでとうございます。
また保証人の皆様、ご関係の皆様にも心よりお祝い申し上げます。学校法人明治学院を代表して祝辞を申し上げます。

明治学院の創立者であるヘボン博士は、近代日本になるための生みの苦しみを味わっていた幕末の1859年に横浜にやって来られました。この横浜に開設した英学塾がヘボン塾でした。ヘボン博士は英語などを教えるかたわら、医療宣教師としてキリスト教の伝道活動をおこない、また医師として、日本人への無償の医療活動をおこないました。ヘボンが治療した日本人は6千人とも1万人ともいわれています。
ヘボン塾が発展し、他のいくつかの学校が合同して、1887年に明治学院となりました。明治学院大学は、このヘボン博士の精神を受け継ぎ、またヘボンのみならず、明治学院の礎を築くために尽力した何人もの宣教師や日本人の教師たちの精神を受け継ぎ、こんにちまで発展してきました。

ところで、皆さんはサン・テグジュペリの「星の王子さま」という文学作品をご存知だと思います。現在はたくさんの種類の翻訳が出ていて、私自身5、6種類の翻訳で読んだことがあります。「星の王子さま」は300ほどの言語に翻訳されているそうです。世界の国の数は190幾つかですから、とてつもない数の言語に翻訳されています。Amazonで調べたところ、さまざまな方言、つまり地域言語にも翻訳され、極めつきは古代エジプト語つまりヒエログリフにも翻訳されているようです。古代エジプト語の「星の王子さま」を誰が読むのかと思いますが、ヒエログリフの学習者が副読本で読むのかもしれません。宗教や文化の違いを超えて、「星の王子さま」には何か普遍的な価値があるのでしょう。

王子さまは小さな星に住んでいて1本のバラを育てています。しかしバラとの関係がうまくいかなくなって、星を飛び出し、いくつかの星を巡っていきます。
なんでも命令する王様の星、見栄っぱりのうぬぼれやの住む星、飲んだくれの住む星、お金の計算ばかりしている実業家の星、街灯に火を灯したり消したりするランプ係の星、地理学者の星などをへめぐって、最後に地球にたどり着きます。そこで一匹の狐に出会い、王子さまは自分が育ててきた1輪のバラとの関係の大切さや、「心でしかものは見えない。ほんとうに大切なものは目に見えない」という、「星の王子さま」といえば必ず言われるフレーズを教わります。「大切なものは目に見えない」という言葉。聖書にも似た言葉があります。「わたしたちは見えるものではなく、見えないものに目を注ぎます。見えるものは過ぎ去りますが、見えないものは永遠に存続するからです。」

「星の王子さま」は色々な読み方ができる物語ですが、「出会い」という観点から見ると、狐との出会いは決定的でした。私たちは人生の中でさまざまな人との出会い、事柄や現象との出会いを経験します。先ほど紹介しました音楽との出会いなどというものもあります。感受性の豊かな学生時代の出会いは人の一生を左右するほどの大きな力を持つことがあります。出会いには神秘的なところがあって、いつ誰と、あるいは何と、どのように出会うのか誰もわかりません。ただ心のどこかに何かの渇望があって、それが出会いを生み出すのかもしれません。ですから出会いの仕方は人さまざまです。

私自身は学生時代にキリスト教に出会い、友人たちに出会い、たくさんの刺激を受け、さまざまなことを考えさせられました。それは一時的なものではなくて、70代も半ばになる今に至るまで続く出会いでした。
「星の王子さま」はこういう出会いの大切さを教えてくれます。

みなさんはこれから大学では4年間、大学院では2年ないし3年間学生生活を送られます。明治学院大学で学ぶ日々の中でみなさんはさまざまな出会いを経験されることと思います。今皆さんがおられるチャペルは100年以上前の建物です。以前私の授業に出ていた学生は、このチャペルのオルガンコンサートを聴いて文字通り人生を変える出会いをして、音楽家になりたいという気持ちでベルリンへ渡り、有名なフンボルト大学に入学しました。音楽家にはなれませんでしたが、ヨーロッパで日本の大企業に就職して活躍しています。不思議な出会いです。
向かいにある記念館は明治時代に明治学院の第一期生の島崎藤村が図書館として使っていたもので、学院の歴史資料などを整理している歴史資料館の展示室が入っています。その横にはインブリー館という建物があり、国の重要文化財に指定されている珍しい宣教師館です。こういった歴史的な建造物を通しても思いがけない出会いがあるかもしれません。

また、明治学院大学はキリスト教主義に則った大学です。みなさんにとって、見えないものの価値を知っていただけるような出会いがこのキャンパスにあることを願います。毎日、チャペルアワーという礼拝もこのチャペルで行われています。パイプオルガンの奏楽と、さまざまな人たちの経験や学んだことを聴くことができます。
こういった色々な機会を通して大学生活を充実させていただければ幸いです。

みなさんの学生生活が豊かであるよう祈って、祝辞といたします。
ご入学おめでとうございます。

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