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2019年度科研費実績

注目の研究テーマ

経済学部准教授

犬飼 佳吾 (Keigo Inukai)

生活習慣病と経済行動:行動・神経経済学的アプローチによる検討(若手研究A)

経済実験で迫るヒトと人の“こころ”の謎

今日、私たちのライフスタイルは一昔前と比べると大きな変化を遂げています。このような変化の中で、人々の生活習慣とさまざまな病との関連が次々に指摘され、社会的にも大きな関心事となっています。

この研究課題では、近年世界各国で広く関心が寄せられている生活習慣病とされる糖尿病に着目し、糖尿病患者の特性と糖尿病発症のリスク要因と意思決定や心の働きとの関連を大規模な経済実験や神経科学的な研究によって明らかにしようとしています。

私たちのヒトの“こころ”の原型は、旧石器時代の狩猟採集を中心とした生活環境のもとで形作られたものだと考えられています。そうした時代に適応してきた私たちヒトの心や行動パターンの中には、現代の社会にはあまりなじまないものもあるのではないでしょうか。生活習慣病などはそういった現代病の一例です。

私たちの研究室では、生物としての「ヒト」と現代の社会に生きる「人」がどういった関係を持っているのかを大規模な集団実験という手法によって迫るために、さまざまな研究を行っています。2018年には、世界最先端の大型ネットワーク実験設備が新規導入され、社会の仕組みと人の心の関係にせまる先端研究が進んでいます。

心理学部教授

金城 光 (Hikari Kinjo)

生涯発達からみる高齢者の記憶の自己効力感と認知機能の関係および介在要因の解明

「記憶の自己効力感」は高齢者を含む私たちの行動や認知とどう関連するのか

記憶の自己効力感と高齢者の生活はどのような関係があるのでしょうか。自己効力感とは、自分の生活や人生の特定の状況において、この状況なら「これくらいはできる」「なんとかできる」と考える自身の能力に対する評価、期待です。この評価や期待が高ければ、行為遂行や状況改善のための努力が維持され、良い結果をもたらすと考えられています。加齢による記憶力低下は避けられませんが、同程度の記憶力でも自己効力感が違うと行動が異なります。効力感の低い人は記憶力が必要とされる状況を避け、刺激のある生活から遠ざかり、さらに認知機能が衰えることになります。

私たちの調査でも、記憶についての自己効力感の高い人はそうでない人に比べ、日常の活動がより活発であるという傾向が見られました(金城ほか, 2018)。しかし、記憶の自己効力感と実際の記憶力やその他の認知能力との関係や、関連する要因の影響など、まだまだわからないことがたくさんあります。

そこで、本研究では高齢者の記憶の自己効力感の特徴を炙り出すために若者、中年者を含む幅広い年齢層を対象に調査や実験を行い、さまざまな観点から研究に取り組みたいと考えています。自己効力感は高齢者に限らず私たちすべての年代に関連する問題です。また、心理学部のみならず幅広い学問分野に関連します。学生のみなさん、興味を持たれたらぜひ一度研究室に遊びにいらしてください。

国際学部教授

張 艶 (Zhang Yan)

中国株価のマクロ経済・金融政策との関係及び国際株式市場との連関に関する実証研究

中国の発展の姿を追い、グローバル経済の行方を考える

最近、世界1位と2位の経済大国である米国と中国の間に貿易摩擦が生じており、世界中から注目されています。中国では高い経済成長にもかかわらず、株価の変動が激しく、海外市場にもますます影響するようになっています。中国特有の経済構造、中国の国際株式市場への影響を解明しようとしたのがこの研究のきっかけでした。

この研究は、中国の株式市場とマクロ経済の関係について分析し、金融政策が株価に影響を及ぼす経路を明らかにし、中国における有効な金融政策を考察します。さらに、中国と日本やアメリカをはじめとした世界各国との株価の連動など、グローバル化した中国経済の側面も考察します。この分析は中国経済と株式市場の発展だけではなく、適切な金融政策による中国経済の安定を通じて、世界経済全体の成長と安定にも寄与するものと期待できます。

私は日本に留学後、世界の中の中国という視点から中国のことが認識できるようになりました。研究成果を世界に発信し、中国と日本、中国と世界の架け橋になれたらと願っております。学生の皆さんが在学中に国際感覚をさらに身につけ、将来、国際舞台で活躍できるように、何かお手伝いできればと考えております。

2019年度採択一覧(継続課題含む)

文学部


氏名 決定金額(総額) 研究課題名
長谷川 一 教授 3,200,000 原発PR施設の日米比較――展示の実態からそのコミュニケーションの特質を探る
平岩 健 教授 3,400,000 自然言語における名詞の分解-名詞の最小構成単位と類別システムとその普遍性の解明-
貞廣 真紀 准教授 2,900,000 世紀転換期における文化意識の変遷とアメリカ文学史の形成
平澤 剛 研究員 3,400,000 日本前衛映画の発掘、修復、保存、再制作と一体化した学術的方法論の構築
平澤 剛 研究員 11,000,000 1960~70年代日本前衛映画に関する横断的研究
三宅 博子 研究員 3,400,000 コミュニティ音楽療法の包摂と排除-生態学的視点からの事例検討による多層的理解

経済学部


氏名 決定金額(総額) 研究課題名
生方 雅人 教授 3,100,000 金融市場におけるジャンプリスクと資産価格形成に関する応用研究
大村 真樹子 教授 3,500,000 子どもの貧困:健康格差と貧困連鎖の社会経済学的分析
神田 良 教授 3,400,000 長期存続企業の革新を通した持続的競争力構築に関する国際比較研究
齊藤 嘉一 教授 3,200,000 いいね意思決定の理論構築
佐々木 百合 教授 2,100,000 国際銀行規制の問題点と邦銀への影響 -自己資本比率規制の理論実証分析-
鈴木 岳 教授 3,300,000 一般均衡モデルの理論的研究
室 和伸 教授 3,200,000 金融市場の摩擦がマクロ経済に及ぼす影響
山田 純平 教授 2,400,000 日米会計基準の適用とその環境
犬飼 佳吾  准教授 13,100,000 生活習慣病と経済行動:行動・神経経済学的アプローチによる検討
大竹 光寿 准教授 3,300,000 ブランドマネジメントの慣性に関する実証研究:ブランドのあるべき姿の再構築
北浦 貴士 准教授 2,800,000 戦前期日本の資本市場と企業統治
斉藤 都美 准教授 3,300,000 公共財としての灯台供給における市場と政府の役割
林 祥平 准教授 1,800,000 従業員の認識共有とその支援に関する研究
赤松 直樹 講師 3,100,000 店舗内における選択間の影響に着目した消費者購買意思決定の分析
岩尾 俊兵 講師 2,600,000 イノベーションの発生に影響する組織の「形」と「広さ」についての研究

社会学部


氏名 決定金額(総額) 研究課題名
石原 俊 教授 3,000,000 南方離島民の戦時・戦後経験の比較歴史社会学的研究: 強制疎開と動員、帰還と離散
石原 英樹 教授 2,600,000 性的マイノリティをめぐる寛容性と不可視性―社会意識と居場所の社会学的考察
岡本 多喜子 教授 12,300,000 養老院・養老施設の経営・運営と処遇(ケア)の質に関する研究
加藤 秀一 教授 3,200,000 遺伝学・ゲノム学と〈人々の形而上学〉との関係をめぐる概念分析の社会学
北川 清一 教授 7,500,000 児童養護施設実践のソーシャルワーク化に向けた支援環境の整備に関する研究
坂口 緑 教授 2,900,000 デンマークの若者支援に見る生涯学習実践と行政および非営利セクターの協働構造の解明
武川 正吾 教授 1,800,000 日本・韓国・台湾の福祉意識に関する実証的な比較福祉レジーム研究
半澤 誠司 教授 3,100,000 地方コンテンツ産業の勃興に動員される地域資源:非集積地によるイノベーション活性化
藤川 賢 教授 10,000,000 放射能汚染地域における自然・社会関係の回復に向けた社会的過程の国際比較研究
大久保 遼 准教授 450,000 視覚報道のアルケオロジー:「事実」を見る眼の構築
榊原 美樹 准教授 10,800,000 地域福祉計画の策定・実施・改定を促進する複合的評価システムの開発に関する研究
古波藏 契 研究員 2,200,000 沖縄 1961-1964―米国の対沖経済政策の形成から「第二の島ぐるみ闘争」まで
嶽本 新奈 研究員 2,700,000 「からゆきさん」にみる移動・性・権力の諸相
崔 仙姫 研究員 3,200,000 コミュニティにおける高齢者ケアのあり方に関する研究
洪 賢秀 研究員 3,300,000 東アジアにおける遺伝子関連検査の受容に関するジェンダー分析

法学部


氏名 決定金額(総額) 研究課題名
池本 大輔 教授 3,100,000 グローバル化とイギリス政治の変容~ブリグジットの淵源としてのサッチャー政権期
太田 和俊 教授 2,000,000 グラフ理論を用いた箙ゲージ理論の解析と新しい時空像の探求
久保 浩樹 講師 3,000,000 政党の分極化の国際比較 「分極化するアメリカ」から「世界の分極化の比較分析」へ
井頭 麻子 准教授 3,400,000 イオン性超分子金属錯体の構築と機能性開発
酒井 一博 准教授 2,500,000 イオン性超分子金属錯体の構築と機能性開発
中谷 美穂 准教授 3,300,000 リサージェンスに基づく弦理論の非摂動効果の探究

国際学部


氏名 決定金額(総額) 研究課題名
大川 玲子 教授 1,900,000 現代エジプトにおけるクルアーン解釈とその社会的受容ーカイロ大学とアズハル大学ー
久保田 浩 教授 7,900,000 宗教理論の思想史的再検討を踏まえた現代的宗教思想研究の条件と可能性を巡る研究
張 艶 教授 3,400,000 中国株価のマクロ経済・金融政策との関係及び国際株式市場との連関に関する実証研究
中田 瑞穂 教授 900,000 選挙プロフェッショナル政党概念の発展可能性―東中欧における政党機能の分析から
浪岡 新太郎 教授 2,500,000 リベラルな排外主義の理論的実証的研究:フランスにおけるムスリムの排除と抵抗
森 あおい 教授 3,200,000 トニ・モリスンの他者表象を通して見る不寛容な時代の文学・文化研究
李 嬋娟 准教授 2,900,000 英語教育と海外留学が認知・非認知能力と労働市場の成果に与える影響に関する実証分析
野口 久美子 准教授 3,300,000 インディアン・カジノ時代における先住民社会のエンパワーメントの諸相
江川 純一 研究員 2,700,000 宗教学生成期における宗教起源論の系譜をめぐる総合的研究

心理学部


氏名 決定金額(総額) 研究課題名
伊藤 拓 教授 2,500,000 「望む未来のビジョン」が主観的ウェルビーングと抑うつに与える影響の検討
清水 良三 教授 3,300,000 高齢者の心身の健康増進に有効な心身統合的援助プログラムの開発とその効果の検討
田中 知恵 教授 2,800,000 感情共有の機能に関する実験的検討:関係構築と集合的態度形成における役割
水戸 博道 教授 2,200,000 音楽科教育における移動ドと固定ドの教育実践の実態調査
鞍馬 裕美 准教授 2,000,000 米国における教員能力試験に関する研究
佐藤 公 准教授 1,900,000 自国史との相互接続に基づいた対外認識育成をはかる歴史教育論の日独比較研究
根本 淳子 准教授 3,400,000 教授設計理論を包含した初学者向け学習設計支援手法の開発
森本 浩志 准教授 3,200,000 認知症高齢者の家族介護者の役割間葛藤及び生活の質の改善要因の解明
手塚 千尋 講師 0 美術(アート)の協同的創造による協調的問題解決スキル育成のためのカリキュラム開発
江草 遼平   助手 1,900,000 教室におけるコミュニケーション支援のための聴覚障害者向け吹き出し型字幕の開発
藤崎 眞知代 名誉教授 3,300,000 今日の教育・保育課題としての自己決定体験の重要性-生涯的縦断研究の成果を踏まえて

教養教育センター


氏名 決定金額(総額) 研究課題名
篠崎 美生子  教授 3,400,000 1910~30年代の文化メディアにおける日中相互表象の形成と展開
渡辺 祐子 教授 2,300,000 宣教師資料に見る「満洲国」:植民地状況下におけるキリスト教伝道
長谷部 美佳 准教授 2,700,000 日本における難民の編入モードに関する定性的研究-インドシナ難民の事例から―
田中 祐介 講師 3,000,000 活字化された日記資料群の総合と分析に基づく近代日本の「日記文化」の実態解明
徳間 晴美 講師 0 敬語コミュニケーションの成功経験と失敗経験は敬語学習の向き合い方にどう影響するか
安部 淳 助手 3,700,000 精子の授受を介した雌雄の配偶戦略の共進化:昆虫類を用いた精子経済理論の検証と発展
坂本 慶子 助手 2,100,000 性差を考慮したスポーツパフォーマンス評価法の構築

研究所


国際平和研究所

氏名 決定金額(総額) 研究課題名
秋山 道宏 助手 2,200,000 戦後沖縄の経済界の形成と展開に関する政治経済史的研究:建設業界を主な対象として
井上 孝代 名誉教授 2,100,000 元国費留学生のライフストーリー研究:コンフリクト解決と生涯キャリア発達の視点から
齋藤 百合子 研究員 3,300,000 人身取引防止に関する社会開発論的研究
柴田 優呼 研究員 1,700,000 広島・長崎に関する言説の国際比較―知識の生産と表象の政治性
内藤 哲雄 研究員 2,500,000 異文化間対人コミュニケーションの違和感と不適応:地位と性の影響

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