明学での経験が原動力──仕事とバスケットボールの両立で夢舞台「Wリーグ」へ挑む
社会人として仕事をしながら、女子バスケットボールチーム「SMBC TOKYO SOLUA(ソルーア)」の選手として、10月開幕のWリーグ(女子バスケットボールの最高峰リーグ)に挑戦する大久保和奏さん。小さい頃からの夢だったWリーグへの挑戦を実現し、「仕事とバスケの両立」という新しいロールモデルを体現しています。「恐れずに挑戦する」姿勢と明治学院大学の教育理念“Do for Others(他者への貢献)”を胸に、女子バスケ最高峰の舞台で活躍する大久保さんに、明学時代の経験や現在の想いを語っていただきました。


大久保 和奏
株式会社三井住友銀行/SMBC TOKYO SOLUA所属
2022年 社会学部 社会学科卒
大学卒業後、三井住友銀行に入行。個人向けファイナンシャルアドバイザーを経て、現在はSMBCヒューマン・キャリアに業務出向。人材紹介や、企業向け研修運営、人事制度コンサルティングなどの業務に従事しながら、女子バスケットボールチーム「SMBC TOKYO SOLUA」の選手として、2025年10月からWリーグに参戦。
学業にバスケに資格試験、視野が広がった明学時代
明学出身者として初めて、Wリーグに選手として臨みます。小学2年生の時にバスケットボールを始め、その後高校まではバスケ中心の生活でした。そのため、大学では学業にも力を入れ、視野を広げたいという想いがあり、学業も部活動も両方頑張れる環境がある明治学院大学を選びました。当時、明学のバスケ部は三部リーグでしたが、高校3年生の夏に練習に参加させてもらった際、上下関係がなく、のびのびとプレーできそうな雰囲気を感じ、そこに惹かれました。また、オープンキャンパスの際に横浜キャンパスの荘厳なチャペルや広々とした敷地を見て、「ここで大学生活を送りたい」と憧れたのも決め手でした。
明学時代は社会学部でメディア関係の授業や心理学など幅広い分野を学びました。野沢慎司先生のゼミに入り、「家族社会学」を選択しました。卒論のテーマは「幼少期の育て方が将来アスリートにどう影響するか」。スポーツと家族社会学を結び付けて調べました。仲間と一緒に頑張ってしっかり卒論を書き上げたことは良い思い出です。


部活動以外のことにも積極的に挑戦しました。大学1年の時には姉と一緒に秘書検定を受験。練習や授業で忙しい中、姉と問題を出し合いながら勉強し、合格することができました。一つのことにとらわれず、さまざまな経験をして視野を広げることを大事にしていました。
仕事もバスケも全力で! 女性アスリートの新しいロールモデルに
父が銀行員だったことから、小さい頃から金融業界への憧れがありました。一方で、ずっと続けてきたバスケも諦めたくない。そんな想いから、就職活動ではバスケットボール部がある企業に絞って活動しました。調べてみると、金融機関でバスケットボール部があったのは三井住友銀行だけ。迷わず志望しました。
入行後の3年間は、個人向けファイナンシャルアドバイザーとして投資信託や保険の提案を行っていました。現在は三井住友銀行のグループ会社で総合人材サービス会社であるSMBCヒューマン・キャリアに業務出向。人材紹介や、企業向け研修運営、人事制度コンサルティングなどの業務に従事しています。


Wリーグは小さい頃からの夢でしたが、最高峰のリーグだけに、まさか自分が挑戦できるチャンスがあるとは想像していませんでした。チームがWリーグに参戦すると聞いた時は、驚きと同時に大変うれしく思いました。仕事はもちろん、バスケットボールも高いモチベーションで取り組んでいます。
「仕事とバスケの両立は大変でしょう?」とよく聞かれますが、苦労はあまりなく、充実度の方が高いです。バスケだけに専念する他のチームと違い、SOLUAでは「女性アスリートの競技継続と仕事の両立」がコンセプト。私自身も、どちらも妥協せずに高いレベルでやりたいという気持ちが強く、仕事にもバスケにも全力で取り組んでいます。
日々のスケジュールは、定時の8時40分から15時40分まで勤務し、その後17時30分頃からバスケの練習をします。帰宅は夜遅くなってしまうことも。そこからストレッチや体のケア、食事をして就寝という1日で、ほぼ毎日この生活を送っています。
主将として挑んだ組織改革、二部昇格が今を支える原動力
ハードな毎日をこなせるのは、大学時代の経験が私を支える大きな原動力となっているからです。大学4年次にバスケ部女子の主将を務め、三部リーグから二部リーグへの昇格を果たしました。もともと、1年次に三部から二部に上がれたのですが、2年次では再び三部に落ちてしまい、安定した強さがありませんでした。そこで、「三部と二部を行き来するようなポジションではなく、継続して強いチームをつくりたい」と思いました。
私が主将になった時、まず組織体制を見直しました。それまでは、主務や会計といった裏方の仕事はすべてマネージャーに任せる体制だったのですが、これらをプレーヤーであるメンバーそれぞれに分担し、部員一人ひとりに責任感を持ってもらえるように変えました。また「チームスローガン」をつくり、チームに関わる人たちが同じ方向を向けるようにしました。再び二部昇格を果たした4年次のスローガンは「REBORN(リボーン)」。生まれ変わる、今までよりグレードアップする、という想いを込めました。
練習も新しいコーチのもと、結果よりもそこにいたる過程や細部にこだわってプレーすることを意識しました。それらすべてが結果につながったのだと思います。


2年次のあまり試合に絡めなかった経験や、全敗して二部から三部に降格した厳しい状況から気持ちを切り替えて、「どうしたらチームを良くしていけるだろう」「何が問題なのか」を考える力、分析して行動に移す力は、現在の仕事にも生かされています。
“Do for Others”の精神がチームプレーの根底に
現在のSOLUAでのポジションは、アウトサイドから得点を狙うシューティングガード。3ポイントシュートが私の強みです。身長がチームで一番小さいので、ゴール近くでブロックはできませんが、前からプレッシャーをかけるディフェンスが得意です。
プレー中は特に、明学の教育理念“Do for Others(他者への貢献)”の大切さを感じます。バスケットボールはチームプレー。自分が活躍するためには、仲間がプレーしやすい環境をつくることが大切です。「他者をどう生かすか」を常に考えています。“Do for Others”の精神が、チームの雰囲気を良くし、プレーにも好循環が生まれるのです。


声を出して指示を出すことは大事なプレーの一つです。チームでは年齢が上の方ということもあり、若い選手が意見を言いやすい雰囲気づくりも心がけています。
誰もが発言しやすい環境をつくることで、チーム全体のパフォーマンス向上に貢献する。個人の成長だけでなく、仲間たちが最大限の力を発揮できるよう支援することが、真の“Do for Others”の精神だと思います。バスケを通じて、他者のために行動することの大切さを学び、それが自分自身の成長にもつながっていることを実感しています。
「恐れずに挑戦する姿勢」と「努力を重ねる」ことで道は開ける
高校2年生で初めて全国大会に出場した時、大きな会場、雑誌で見るような有名選手たちを前に、「自分では相手にならないのではないか」と不安になりました。
でも、実際にコートに立ってみたら、いつもと変わらないバスケットボールのコートでした。そして、自分のこれまでやってきたプレーが通用する部分がたくさんありました。大きく見えているものや強そうに見えているものでも、「必要以上に恐れなくていいんだ」と知りました。その経験が大学時代も今も、私の背中を押し続けています。大きく見える壁も、恐れずに挑戦してみれば乗り越えられる──。このことを、身をもって後輩たちに伝えたいと思っています。
Wリーグの選手は、大学リーグでも一部の強豪校出身の方ばかりです。二部や三部でやっていたのは私ぐらいではないかと思います。だからこそ、二部・三部リーグ出身で、しかもチームで一番背が小さい自分がWリーグの試合で活躍している姿を見せることで、今大学リーグの二部や三部で頑張っている方たちに示したい。それが今の目標です。


明学の良さは、学生主体で活動させてくれる、学生の気持ちに寄り添ってくれるところだと思います。バスケ部女子の組織改革の際も、チームから出た意見やアイデアが実現できるよう、当時の坂下監督や学校側がサポートしてくださいました。
このような環境があるからこそ、在学生の皆さんには学生時代にいろいろなことに挑戦してほしいと思います。学生時代にしかできない経験、学生だからこそ持てる発想やエネルギーを、ぜひ思う存分発揮してください。一つのことにとらわれず、興味のあることにたくさんチャレンジする。その経験は皆さんの視野を広げ、必ず将来の財産となります。
与えられた環境で、最大限自分に何ができるかを考えて努力を重ねることで道は開けます。明学出身者は「穏やかだけど芯がある」人が多いと感じます。明学の皆さんなら、大変なこともきっと乗り越えられると信じています。

