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全力で遊んで、全力で勉強して。明学で過ごしたすべてが自分の身になっている

2021.06.30

声優として数々の役柄をこなす一方で、舞台やドラマ、音楽など幅広い分野で活躍する入野自由さん。高校、大学の7年間を過ごした明治学院での学生生活を振り返り、「授業と芸能活動との両立は大変だったけれど、大学生活で無駄なことはひとつもなかった」と明言します。大学時代の思い出や、現在の仕事観について語っていただきました。

入野 自由 1988年東京生まれ。2010年経済学部経営学科卒業。 4歳で劇団ひまわりに入団し、芸能活動を開始。2001年に映画『千と千尋の神隠し』でハク役に抜擢される。以後は順調に声優としての知名度と人気を獲得。舞台活動や映画出演も果たし、精力的に活動中。アニメ『おそ松さん』『ハイキュー‼』など代表作は多数。

将来につながるかも……、漠然とした思いで経済学部を選択

4歳の時に両親と見に行った舞台をきっかけに、芸能活動を始めました。子どもの頃からずっと続けてきたことなので、僕にとって芸能活動は仕事というより生活の一部でした。明治学院高等学校を卒業後、大学には進学せずに仕事に専念する選択肢もありましたが、家族の方針は「学業優先」。僕も明治学院大学への進学に迷いはありませんでした。

時間割が決まっている高校と違って、大学は単位を取るために、自分で授業スケジュールを組まなければなりません。それは芸能活動をする上では考えていた以上に大変で、事務所と相談しながらスケジュールを組み立てました。授業はできる限り出席し、卒業のための単位も3年間ですべて取り終えました。簿記の資格も取ったんですよ。今振り返っても、よく頑張ったなと思います。

経済学部を選んだのは、それまでの自分にはない知識を得られる学問でしたし、将来、経営に携わる可能性もあるのかなと、漠然と考えたからです。でも僕は数字に弱いんですよ。経済学部に入ってから「こんなに数字を勉強する学部なんだ!」と気づきました(笑)。原価計算の単位を落としたことがありましたが、あれは、本当に難しかったです。

10年経って、サークルの友達と一緒に仕事ができた

面白い授業はたくさんありました。今でも覚えているのは、社会学や恋愛論に関する授業です。大学の授業で学んだことを、僕の今の仕事に直接生かせることは少ないけれど、大学の景色や匂い、そしてここで勉強し過ごした時間、人間関係などすべてが自分の身になっていると感じます。

サッカーサークルに入り課外活動も楽しんでいました。高校からの友人に「サークルは絶対入ったほうがいい、友達ができなくなるぞ」と誘われたんです。そう助言してくれた友人は1カ月で辞めてしまいましたが(笑)。活動をしていた高校のグラウンドは懐かしい場所のひとつです。

先日、同級生と一緒に仕事をしたんです。高校時代からの友達ともよく連絡を取り合っていますし、卒業から10年以上経ってもつながっていられるのはうれしいですね。

まわりが就活を開始。自分はこの先、何になるんだろう?

大学に入った頃は、将来のことを深くは考えていませんでした。3年生になってまわりが就職活動を始めた時に、ふと「自分も就職活動するのかな?」「将来どうなるんだろう」と考えるようになりました。大学3年生までは学業優先。しかし、先のことを考えた時に、今のままでは生活していけないと思いました。4年生の時に、やれるだけ仕事をやってみようと、事務所と話をしました。本当に続けていくことができるのか、どこまで自分がやれるのか、大切な1年であり、挑戦の年でもありました。

もともと声優になりたいと思っていたわけではなくて、子役として舞台の仕事をする中で、声の仕事が増えていきました。好奇心は強いほうなので、興味があるものは何でもやってみたいと思って、今は音楽やドラマなど、いろんなことに挑戦しています。すべてが相乗効果となって生かされているのを感じますし、どの仕事もすべて楽しいですね。

「ハク」役の人と言われ続けることに葛藤があった

これまでの経歴の中では、どうしても『千と千尋の神隠し』のハク役に注目されることが多いのですが、実は僕にとっては成功体験という意識はないんです。もちろん、オーディションに受かった時はうれしかったですし、両親も喜んでくれました。

徐々に自分の中に葛藤も生まれるようになって……。あの役を演じたのは13歳でちょうど声変わりの時期だったので、もう当時のあの声は出ない。それゆえ、「ハク役の人」と言われることに、少し抵抗を感じる時期も正直ありました。でも今は、いろんな仕事をしながら自信をつけていく中で、受け入れることができるようになりました。

自分の仕事は不要不急なのか? 存在意義を考えたコロナ禍

新型コロナウイルス感染症によって、エンターテインメントの真価が問われることになりました。最初の自粛期間の時は、「ゆっくり休めるんだな」くらいの気持ちで、どこか楽観視していたんです。でも、だんだん長引くにつれ、「自分って何なんだろう」「自分の仕事は不要不急なのか」と考え込むようになって……。そういった状況でも、ずっと先延ばしにしていたやりたかったこと、例えば写真を撮ったり、これまでは興味があっても手を付けられていなかったパソコンのソフトを触ったりはしていたんですが、自分の存在意義については、ずっと頭の中でぐるぐると考えていましたね。

仕事が再開されて、余計なことを考えずに目の前の役だけに没頭できるのは、なんて幸せなことだろうと感じています。いつ仕事ができなくなるか分からない状況を目の当たりにして、今仕事ができていることに喜びを感じますし、今は一つひとつの仕事を大事にしていきたい。そして、これからも今までと変わらず、アニメでも音楽でも舞台でも、いろんなことに挑戦しながら、自分の名刺代わりになる作品を常に更新し続けていきたいと思っています。

全力で遊んで、全力で勉強して。輝く時間を大切にしてほしい

学生の皆さんは今、授業がオンラインになったりして友達と触れ合う時間も減り、大変な大学生活になっているだろうと思います。そんな中でも、きっとデジタルをうまく使いこなして、新しい考え方もできる年代だと思うので、ぜひ柔軟さを武器にしてほしいなと思います。

自分の学生時代を振り返っても、すべてを全力で頑張れるのはステキなことだと思うから、何ごとも適当にしないで、全力で遊んで、全力で勉強してほしいです。やると決めたことは徹底的にやる。もちろん大変なこともあると思うけれど、その中から楽しみを見つける。そういったことを、僕は明治学院大学の学生時代に学びました。

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