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思い通りにいかないすべての大学生へ~悩みのない人生は本当に豊かなのか?

2020.10.26

人生には悩みがつきものだ。 辛く苦しみが絶えない時、悩みのない人や人生がうらやましいと思ったことが一度はあるのではないだろうか? しかし、もし悩むことのない人生を送ることになったら、その人生は幸せなのだろうか?
ラジオ番組や新聞連載などで、さまざまな世代の悩み相談を受けてきた助川教授。大学でも人の悩みを扱い考察するというユニークな授業を行っています。 人が悩むとはどういう意味を持つのか? 大学生活をより豊かにするためのメッセージとは?

助川 哲也 国際学部 国際学科 教授 担当科目は、現代文学論、国際学特講、文化研究の基礎、基礎演習、演習など。作家・歌手としてはドリアン助川の名で活動。 ラジオ、新聞などで人生相談の回答者としても人気を博す。 主な著書に『バカボンのパパと読む「老子」』『線量計と奥の細道』など。13言語に翻訳された『あん』は、フランスの「DOMITYS文学賞」と「読者による文庫本大賞」の二冠を獲得。映画化もされる。

大学教授になって思うこと

2019年9月に国際学部の教授に就任して、まず思ったことが「まっさらな学生が多い」ということ。私が学生の頃は、大学生というと強烈な印象というか、においというか…独特な雰囲気があったのですが、今は考えや行動が凝り固まっている学生が少ない印象を受けました。これは、これから何かを吸収していくという意味ではチャンスです。授業でも課題をきちんとやってくる学生が多いし、出席もしっかりする。あっという間にものを考える力がついて、ものすごいスピードで前進していく。学生の皆さんはあまり自覚がないようですが、これからいくらでも変わっていける可能性があることに、もっと気づいて自信を持ってほしいですね。

主体的に生きるための学びを~表現者になれ!

大学で教えることになって、実は私自身いろいろ悩みました。私はここで何を学生に伝えればいいのかと。そんなある日、ふと「ここには表現者が少ないな」と気づいたんです。 大学では多くの授業でレポートの提出が課されます。私の授業でも毎回提出を求めていますが、「いいレポートってどんなものだと思う?」と学生に問うと、ほとんどの学生が「授業の内容や意見がうまくまとまっているもの」と答える。 その時、「生活の中で表現できる人を育てること」が私のここでの使命だと思えたんです。

レポートは本来「表現をするための場」です。
人間どこにいても自分の人生を主体的に生きる、つまり「表現者になる」ことをやらないといけません。会社に入ろうが、一人で生きていこうが、海外に行こうが、自分がその場所で主体的に生きるということは、大なり小なり何らかの形で「自分を表現する」ということです。それをしないと、単なる歯車になってしまう。表現しない歯車人間は、当然どんな場面でも必要とされません。

大学の授業は、そのためのノウハウを培う場です。どんなに小さなレポート課題であっても、集大成の卒業論文であっても、歯車にならない人生を送るための心の表現と考えを発表する場、力を養う場として捉えてみてください。

悩むことは生きること

―助川教授の担当科目には、人生相談を扱う授業がある。日本で唯一かもしれないこのユニークな授業は、実際に助川教授のもとに届いたさまざまな悩み(新聞連載等)を題材に、その人の人生を想像し考察。ディスカッション形式で進んでいく。

他人がどんなことで悩んでいるのかを知り、そこに自らを投影して、自分ならどうするかを考える。それを一つひとつ考えて、他人の意見や考えを聞きながら考察していく。その過程には、ものすごく多くの気づきや学びがありますし、自身の生き方を見つめなおすことにもつながります。

悩みってないほうがいいと誰しも思いますよね。でも実は、悩みがないということは生きていないということになります。 悩みは、生きて考えて行動するから生まれるものであって、すべての人は生きている以上、何十もの悩みを抱えていくものです。 悩みの種類っておもしろいことに年齢を重ねるごとにどんどん減っていきます。若いころは、本当に多種多様な悩みがあって、聞いていても予想外の展開に驚くことも多い。一方で年齢を重ねた方の悩みは種類が本当に限られる。息子夫婦とうまくいかない、相続、老後のお金、健康の問題…とか。 悩みとは、その時代をその人がどう生きているか、どんなシーンにいるかで種類が変わってくるもので、その人の人生そのものです。

「悩みがある=生きている証」。だから、悩みがあることはダメだということでは決してありません。

運命を受け入れる

人生思い通りにならないことの方が多い。それは誰でも同じです。大学受験一つを取っても、必ずしも自分の希望通りにならなかったという人も多いでしょう。 ただ、「こんなはずじゃなかった」「自分のいるべきところはここじゃなかったかもしれない…」というその思いが、少なからずモチベーションにもなると思います。

大学では人生に必要なことがすべて学べるわけではありません。そして大学時代がその後の人生のすべてを決めるものでもありません。 日常の些細なこと、4年間で知らず知らずのうちに身につけたこと。今は何も感じなくても、自分の人生の方向性になったり、後に動きたいと思ったその瞬間の大きな原動力になったり…それが大学での経験というものです。 ですから「なんか運命でここにきちゃったなぁ…」という人も、ぜひすべてを真正面から受けとめてみてください。

運命というものは、逃れようとすると苦しいものです。ここで精いっぱい生きると覚悟を決めることが、実は自分を楽にさせることにつながります。覚悟を決めた日から、新しい風が吹く、新しい光が見える。そのために大学や教員をどんどん利用して、より豊かな人生の入り口に立ってほしいと思います。

そして、大学生にはあり余るほどの時間があるはずです。教員の立場としては、「授業を大切にして、とにかく勉強しろ!」というのが正しいのかもしれませんが、個人的には大人から見たら「何でそんなことに時間使っているの?」というようなことに、もっと時間を使ってほしいと思います。今の学生はいろんな意味でクールすぎるかな。もっと積極的にエネルギーを使ってください。一見無駄だと思われることが、将来思わぬきっかけになるものです。

明学は、ゆったりしていて本当にいい環境ですよ。縦横無尽に過ごすにはもってこいの場所です。 それでも悩みや心のモヤモヤが深いようなら、私の授業に来てみませんか? いつでもお待ちしています!

※助川教授の研究者情報はこちらをご覧ください。

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