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学生

学際的な学びを通して消費者と事業者両方の視点で消費者法と向き合えた

法と経営学研究科 法と経営学専攻 修士課程
2024年3月修了
稲田 水咲

日常生活に密接した法律である消費者法を深く究めたい!

もともと政治学を学びたくて明治学院大学法学部政治学科に入学しましたが、1年次の基礎科目で消費者法を選択したことがきっかけで興味が湧き、2年次の専門科目、3~4年次のゼミで継続して学ぶ中で、国家資格の消費生活相談員資格を取得し、より深く学修・研究をしたいという思いから大学院進学を決めました。私たちにとって法律は普段、馴染みが薄く、自分で使うこともほぼありません。一方、消費は誰もが行う行為で、消費者法を知っていれば商品の安全性や悪徳な勧誘など身近なトラブルから身を守ることができます。そういう意味で消費者法は私たちの日常生活に密接している法律で、そこに大きな魅力を感じました。

大学院を選ぶにあたって、どこへ行くべきか他大学を含めていろいろと調べましたが、明治学院大学の法と経営学研究科を選んだのは、将来的に取得を目指している「マスター消費生活アドバイザー」の資格取得要件のカリキュラムを満たしている指定大学院だったこと、法律に加えて経営学の知識も学ぶことで消費者側だけでなく事業者側の視点からも消費者法について考察できることが大きなポイントでした。また、明治学院大学から進学すると学費面で優遇されていることも理由の一つです。

論文執筆や特別講義などでより実務的な知識を得ることができた

学部生時代は講義を受けてノートを取り、後はテストやレポート提出で終わりという学び方でしたが、大学院生は講義を受ける時間は少なくなるものの、発表やディスカッションが中心で、事前の準備や作業で忙しく、自分で積極的に取り組む姿勢が求められます。また、修士論文は学部の卒業論文とはレベルが違い、先行研究や文献、資料の読み込みにも時間がかかります。

私が修士論文の研究テーマに選んだのは、「消費者契約法9条1項1号の射程」。この条文は簡単に言うと、消費者がキャンセル料や解約金を支払う場合、事業者の損害を上回る金額は無効であるというもので、典型的な事例として結婚式場やホテルの予約キャンセルが上げられます。その条文の最高裁判決は2006年の学納金返還訴訟1事例しかなく、大学を入学辞退した際、既に支払った学納金が不返還特約を根拠に一切返還されないという現状でその返還を求め争った事案であり、その際の判決における法律構成が間違っているのではないかという仮定を証明していく内容です。消費者契約法の10条では広い範囲で一方的に消費者の権利を侵害することは無効であるとされていて、私の考えでは当該のケースに9条を適用したことが間違いであり、不返還特約については9条の射程外で解約権の制限にあたると考えられます。よって学納金は全額返還されるべきであるという結論を導き出しました。この論文をまとめ上げるために50本以上の裁判例を読み込み、要件を調べる作業はかなりの労力を要しましたが、その甲斐があって何とか満足できるものが完成しました。

大学院での学びを通して、より実務に近い法律と経営学の知識を得ることができました。具体的には消費者法はもちろん、会社法や知財法などビジネスに関する法律とともに、経営学分野ではマーケティングやCSR、会計学などを学べたことは大きなメリットであり、法と経営学研究科という学際的な環境ならではの学習修成果だと言えるでしょう。特に、実際の企業の財務諸表を分析する特別講義は会計学の先端知識に触れることができてとても印象に残っています。特別講義を担当するゲストスピーカーの先生方との交流もとても有意義なものでした。また、消費者法研究に携わっている先生方も多く、その人脈を通して徳島県で開催された消費者庁の地域推進フォーラムにパネリストとして参加させていただき、企業や自治体の取り組みについて消費者法の視点からコメントできたことはとても貴重な体験でした。

消費者法を深く学修・研究した証として資格取得にチャレンジ

資格取得については、今年、消費生活アドバイザー資格を取得できました。上位資格のマスター消費生活アドバイザーについては取得要件のカリキュラムは受講しましたが、実務経験が必要なので社会に出てからチャレンジする予定です。この資格は消費者と企業や自治体とのパイプ役としての役割を果たすもので、両者の間に立って公正な視点で消費者法などを判断できる能力が求められます。資格取得に拘ったのは、学部~大学院で消費者法を学修・研究した証明になるものが欲しかったからで、自分にとっても大きな自信になりました。

大学院修了後は自動車部品メーカーに就職することが決まっていて、製品の品質や安全に関わる部門なら消費者法の知識が活かせますし、総務や法務部門なら会社法や知財法、会計学などが活用できるはずで、どこに配属されるにしろ大学院での学びを活かして活躍したいと思っています。また、将来的には消費者に寄与する仕事や活動をすることが目標です。相談員として実務的に企業や自治体に関わることができますし、教員免許も取得しているので教育の現場で消費者教育に携わる道もあります。そう考えると、大学院に進学したことで進路のすそ野が大きく広がったと感じています。これまでの自分の人生を振り返ると、興味のあるもの、好きなものを一直線に究めようとしてきた道のりだったと思います。これからも仕事に取り組む中で何かやりたいことが見つかればそれに向かって全力でチャレンジしていくつもりです。

明治学院大学大学院法と経営学研究科は、税法または会計学関連科目の所定の単位を修得し、税法または会計学に関する修士論文が国税審議会で合格すれば、税理士試験の一部が免除される履修モデルも整っているので、税理士を目指す人には大きなメリットがあります。また、特に消費者法を学ぶには理想的な環境が整備されています。先生方もとても親身になって指導してくださり、私の場合は福田清明教授にほぼマンツーマンで修士論文執筆のサポートをしていただきました。法学と経営学を学際的に学びながら資格取得や自分のやりたい研究にチャレンジしたい人は、ぜひ、進路の選択肢として考えてみてください!