明治学院大学
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書評【はじめての子ども論 子ども観の歴史社会学】

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子ども観の二項対立構図の先へ

子どもと接する仕事や活動に関心のある人だけでなく、そうした界隈に胡散臭さを感じる人たちこそ本書を手に取ってみてほしい。そして、ぜひ序章の「子どもとは」連想ゲームに取り組んでから読み進めてほしい。本書が歴史社会学の手法で成り立ちを解き明かしていく子ども観の「網の目」に、現代の私たちが―もしかしたら後者の人ほど―いかに強く絡めとられているかを体感できるだろう。

教育や福祉や司法といった領域を越えて、子どもをめぐる私たちの議論は二項対立的な思考に囚われてしまう。尊重か統制か、自由か指導か、保護・矯正か責任・処罰か。著者はここにある複数の子ども観の錯綜を、「子どものため」と「国家・社会のため」という子どもの処遇をめぐる2つの焦点を持つ楕円モデルのもとに整理する。子どもの教育・保護・支援に携わる実務者がこの社会学的分析に接すれば、日々の実践で自らの直面するジレンマが見事に言語化・客観化された読後感を得るはずだ。『はじめての子ども論』が真に届けられるべきは、きっとこれらの人である。

森 直人(筑波大学人文社会系/多様な教育機会を考える会事務局)

WEB用)はじめての子ども論_子ども観の歴史社会学

はじめての子ども論―子ども観の歴史社会学
元森絵里子(社会学部教授) 著
有斐閣 239頁/2,420円

白金通信2026春号(No.526)掲載