多様な人と価値観に触れた4年間。明学で培った「人と向き合う力」が、今の仕事の原点に
ソニーマーケティング株式会社のカスタマーサービス本部で働く渡邊昭仁さん。日々お客様に寄り添い、サポートの仕組みづくりに奔走している渡邊さんですが、その仕事の原点には明学時代の弓道部やゼミでの経験が生かされているといいます。学生時代の葛藤から得た学びや組織で働くことの意義、そして未来を担う明学生へのエールを語っていただきました。


渡邊 昭仁
ソニーマーケティング株式会社 カスタマーサービス本部
2008年 経済学部 経済学科卒
2008年、ソニーマーケティング株式会社に入社。国内配属となり、業務用商品の営業やマーケティングを経て現在はカスタマーサービス本部に所属。在学中は体育会弓道部に所属し、3年次には主将を務めた。
素直な想いでつかみ取った、心からやりたいと思える仕事
新卒でソニーマーケティング株式会社に入社し、まず業務用商品の営業とマーケティングの仕事に携わりました。その後、ウォークマン🄬やカメラ、テレビといった民生用商品に携わりたいという思いがあり、カメラ商品を担当する国内マーケティングへ異動。現在は、希望を出してカスタマーサービス本部で働いています。カスタマーサービスの仕事にひかれた理由は、お客様と最も長く関われる部署だからです。製品が誕生してから販売やサポートが終わるまで、寄り添い続けることができるのが魅力。主な業務は、購入前の買い物相談や、購入後の操作方法などを説明する使い方相談、修理といったお客様のお困りごとに対してのカスタマーサービスが円滑に回るための仕組みづくりです。入社してから今まで、自分自身の成長に合わせて心からやりたいと思える仕事に携われており、日々やりがいを感じています。


就職活動を始めた当初は、正直に言って「この仕事がしたい」という明確な目標があったわけではありませんでした。周りが活動し始めたので「自分もやらなきゃ」という焦りからスタートし、就活イベントに足を運びながら興味のある会社を探していく日々でした。その中でソニーに興味を持ったのは、幼い頃から家の中にソニーの製品があふれており、自分にとって身近なブランドだったからです。大学のOB名簿を調べたところ、身近な世代の先輩で入社されている方は多くありませんでしたが、後悔だけはしたくなかったので全力を尽くして面接に挑みました。無理に自分を飾るのではなく、素直な気持ちで想いを伝えることを意識していたら内定をいただくことができ、内定の連絡が来た瞬間は夢を見ているのではないかと思うくらいうれしかったです。
弓道に捧げた4年間で、人と向き合うことの大切さを学んだ
明学へは指定校推薦で進学しましたが、「行きたい」と思った一番の理由は弓道にありました。高校時代から弓道部に所属していたのですが、悔しい思いをしたこともあり大学でも続けたいと考えました。尊敬している高校の先輩が明学の弓道部に所属していたので、「この先輩がいるなら入りたい」と強く思ったのです。
大学時代は、まさに弓道一色の生活でした。1限が始まる前、早朝から道場へ向かって準備を行い練習に打ち込み、日曜日以外にオフはなく、勉強との両立はハードでした。3年次には主将を務めました。弓道部の目標は所属しているリーグの昇格。弓道は個人競技と思われるかもしれませんが、実はチームで戦うスポーツです。当時のチームは思うように勝てないこともあり、後輩や同期、さらには歴代のOB・OGの方々からも叱咤激励の言葉をいただくことが多々ありました。
目標達成のために徹底的に話し合い、部の方向性を決めました。決めたルールを破ってしまったメンバーに対して独断で厳しい決断を下したこともありました。今の自分から見れば、もっと柔軟なやり方があったのではないか、誰かに相談すべきだったのではないか、と反省する点もあります。最終的にリーグ昇格という目標は果たせませんでしたが、一人ひとりと向き合い、対話を重ね、相手を深く知ろうと努力したプロセスは、私にとってのかけがえのない財産となりました。
数学ゼミで培った「論理的思考」
数学を研究する村田玲音先生のゼミで学んだ内容は、社会人となった今でも大きな礎となっています。経済学部にはマクロ経済やミクロ経済、マーケティング理論などを扱うゼミが多いのですが、私は数学が好きだったため村田ゼミを選びました。学生時代は「ロジカルに考えること」に苦手意識を持っていましたが、ゼミでは数字の背後に隠された意味や、その数字が導き出されたプロセスを論理的に読み解いていくので良い訓練になりました。
会社組織の中で自分のやりたいことを実現させるためには、論理的な裏付けをもって周りの人に納得してもらうことが不可欠。ゼミでの学びを通じてロジカルシンキングの基礎を身につけることができ、今の自分を支えてくれていると実感しています。
また、ゼミの環境そのものも刺激的でした。多種多様な学生が集まっていて、「意見がバラバラで収拾がつかなくなるのでは?」と思えるほど良い意味で個性的でした。しかし、意外にもまとまりがあってそれが面白く、この環境で過ごしたことで自分の視野も大きく広がりました。


人とのつながりが、人生に大きな価値を生む
このように、明学時代の部活動やゼミでの経験を通して「人とのつながり」の大切さを学びました。その学びが仕事においても明確に生きたのが、国内マーケティング部門時代に担当した「CREATORS’ CAMP」の立ち上げです。
これは映像クリエイターを目指す方々が集まり、プロのレクチャーを受けながら自治体と連携してPR映像を制作するワークショップ型のプログラムです。クリエイター志望の方やさらに技術を磨きたいクリエイターの方々が集まって、わずか3日間で企画・撮影・編集・納品までをやり遂げます。
SNSや動画のナレッジサイトで情報を集め、独学で勉強すれば、一人でも動画制作はできてしまう時代です。しかし、個人の力だけでは限界があり、より大きな仕事をするには人とのつながりやチームの力が不可欠です。「CREATORS’ CAMP」を通して同じ志を持つ仲間やプロがつながり、互いに切磋琢磨しながら映像世界を広げていく――。その熱量を目の当たりにしたことは、貴重な経験となりました。
今の時代、組織に属さなくても生きていけるかもしれません。しかし、会社に属することの大きなメリットは、一人ではできない大きな仕事に挑めること、そして会社がそのチャレンジを支えてくれる点にあります。もし、「将来どんな仕事に就いたらいいんだろう」と悩んでいる明学生がいれば「この会社の仕事に少し興味がある」「なんだかワクワクするから一度話を聞いてみようかな」といった直感や少しの好奇心から一歩を踏み出してみるのもいいと思います。その行動が、自分らしいキャリアを切り拓くきっかけになるはずです。


仕事に生かされ続けている、“Do for Others”の精神
人と深く関わることは、決して楽しいことばかりではありません。人とのつながりや出会いから逃げようと思えばいくらでも逃げることができます。しかし私は、明学の4年間を通して常に人と向き合い、多様な考えに触れる道を選んできました。まさに、明学の教育目標の一つである「他者を理解する力を身につける」ことを自分なりに追求し続けてきたのです。社会人として働く今、その力は何物にも代えがたい財産となっています。組織ではさまざまなメンバーに対して深い理解がないと仕事が円滑に進みません。カスタマーサービスという仕事では、お客様が求めていることをくみ取りそれに応えていかなければなりません。「他者を理解する力」の重要性を日々実感しています。
AIが台頭し、多くの仕事が代替されるといわれる今の時代だからこそ、「人と人との対話やつながり」の本質的な価値は高まっていると感じます。AIでも疑似的な会話は可能ですが、相手の表情や声色を読み取り、その人がなぜそう考えるのか、根本で何を求めているのかという本質をくみ取れるのは、やはり人間だけではないでしょうか。
そうした意味で、大学は貴重な機会にあふれた場所です。私自身、学生時代は部活と単位を取ることに精一杯で、そこまで深く考えていたわけではありませんでした。しかし振り返ってみれば、サークル、部活、ゼミ、アルバイトなど、人と出会う機会は山ほどありました。ですから明学生の皆さんには、チャンスがあるならどんどん外の世界へ足を運んで視野を広げてほしいと思います。さまざまな人と触れ合う経験は、就職活動で「何を一生懸命取り組んできたか」を語る際の大切なエピソードになるだけでなく、社会人になってからの立ち振る舞いや、仕事への向き合い方にも大きく影響します。
明学は自由度が高く、学生一人ひとりが無限の可能性を秘めていると感じています。自分自身で限界や型を決めてしまわず、自由な発想でチャレンジすれば可能性は広がっていくはずです。


取材協力:ソニーストア 銀座