明治学院大学
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2026.06.25

研究と実社会をつなぐ。大学院で一生の「問い」が見つかった

学生
研究と実社会をつなぐ。大学院で一生の「問い」が見つかった
国際学研究科 国際学専攻 博士前期課程
2023年3月修了
徳冨 雅人

国際学への期待感と研究テーマとの出会いで大学院進学へ

私は現在、アウトドア用品ブランド企業での勤務を経て、さらなる研究活動のために北海道大学大学院博士後期課程に在籍し、研究と実践を繰り返しています。私の研究活動の原点は、明治学院大学にあります。高校時代、将来の目標が定まらない中で参加したオープンキャンパスで、教員と学生が互いに尊重し合い、純粋に学びを楽しむ温かな雰囲気に惹かれ、明治学院大学への入学を決めました。入学当初は「国際学」という学問領域のあまりの広大さに戸惑い、自分が何を得られるのか不安を抱いた時期もありました。しかし、1年次から触れたスローライフや平和学といった多様な概念についても、講義や課題、友人たちとの交流を通じて徐々にその奥深さや面白さを知ることができました。

大きな転機となったのは、野口久美子教授のゼミ、そして3年次のアメリカ西海岸での校外実習です。アリゾナ州、ネバダ州やカリフォルニア州の先住民を訪ね、彼らのお祭りや儀式、さらには自立のためのカジノ経営の現場を目の当たりにしたことで、私の知的好奇心は強く揺さぶられました。白人入植者によって隅に追いやられた歴史を持ちながらも、独自の文化を守り抜こうとする彼らの姿に、「国際学」のリアルな一端を見たのです。さらに4年次、教授に導かれ北海道の二風谷を訪れた際、日本にもアイヌ民族という先住民が存在し、アメリカと同様の課題が横たわっていることを知りました。一方、学部の卒業論文では、400人の在学生を対象に「国際学をどう理解しているか」というアンケート調査を行い、分析・考察の結果、「国際学とは、複雑な社会問題を単純化せず、漠然としたまま解釈する体力を養う学問である」という実感を得ることができました。そして、その国際学の領域で自分が具体的なトピックを研究したらどんなことができるのだろうという期待感が大学院進学への原動力になりました。



学際的な学習・研究環境が修士論文の執筆を後押ししてくれた

私が修士論文のテーマに選んだのは、「アイヌとセトラー・コロニアリズム-二風谷ダムをめぐる排除の論理-」でした。1997年に竣工した北海道の二風谷ダムへの関心がまずありきで、そこにセトラー・コロニアリズム(入植者植民地主義)という先住民をめぐる諸課題が存在する国々で使われてきた学問的理論がアイヌ民族の歴史にもあてはまるのではないかという先行研究を参考に、新しい視点から検証を行うという内容です。しかし、私が大学院国際学研究科国際学専攻に入学したのは2020年4月で、ちょうどコロナ禍と重なり、講義はすべてリモートで、仲間とも会えない、フィールドワークもできない状況下で、論文執筆にも行き詰ることになりました。そんな困難な状況を乗り越えられたのは、国際学専攻の学際的なカリキュラムや研究環境のおかげでした。指導教員である野口教授はもちろんのこと、専門分野や研究地域が異なる多様な先生方が、研究室の垣根を感じさせない気軽さで相談に乗ってくださいました。研究に行き詰まった際、多角的な視点から議論を交わせる環境があったからこそ、独りよがりではない、客観的視点からの研究をすることができたのだと思います。

また、あえて「立ち止まる」という選択をしたことも大きなプラスになりました。野口教授の「トンネルに入った時は無理に出ようとしなくていい、必ず出口は見つかるから」というアドバイスをきっかけに、1年間の休学期間を作りました。その間、研究に直接関係のない哲学、文学、社会学などの文献を読み耽ることで、思考の引き出しを増やすことができました。何気なく使っていた「民族」という言葉一つについても、その定義や歴史を徹底的に問い直す。そうした言葉選びへのこだわりや深い思索が大学院の学びだと実感できました。

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大学院で培った論理的思考と説明力が人の共感を得る武器になった

コロナ禍が落ち着いたタイミングで実施した3週間の北海道フィールドワークによって、研究のクオリティをより高めることができました。現地でお世話になったアイヌの女性から頂いた「偉くなって良いことを忘れる人がいる。偉くならずに良いことをできない人もいる。徳冨君、あなたは偉くなって良いことをしなさい」という言葉は、私の研究が社会の現場に対して果たすべき責任を自覚させてくれました。この経験が、就職先の選択にもつながりました。私が入社した企業は、環境保護や社会問題に対して明確な意思を持っています。大学院で先住民と国民国家をめぐる諸課題について深く考察してきた私にとって、就職先の企業がアイヌ民族の当事者団体のプロジェクトに対して助成を行っている事実は、研究と実社会をつなぐ大きな接点となりました。

入社当初の横浜の店舗から長野県白馬村の店舗に移り、北アルプスの自然の中でトレイルランニングを楽しみ、仕事と遊びの境界がないような豊かな生活を送る一方で、お客様との会話を通じて環境問題や先住民と国民国家をめぐる諸課題について発信し続けました。大学院で培った「説明力」や「論理的思考」は、ビジネスの現場においても、さまざまな社会問題について一般の方々に分かりやすく伝え、共感を得るための強力な武器となりました。大学院で鍛えられたアカデミックな視点は、言葉に重みと説得力を与えてくれます。研究活動を社会の現場と往復させることで、初めて学問は生きた力を持つのだと肌で感じました。所属企業からも私の専門性を尊重していただき、今後は札幌の店舗で勤務しながら、北海道大学大学院博士後期課程に進むという、企業と学問の場を横断する新たな挑戦が始まろうとしています。これは、明治学院大学大学院での学びと経験があったからこそ実現できた、私なりのキャリアの形です。



自分だけの「どうしても気になる」があるなら大学院の門を叩いてほしい

これから大学院進学を考えている皆さんに伝えたいのは、自分の内側にある「どうしても気になる」という切実な感覚を大切にしてほしいということです。就職活動を控えた周囲の目が気になることもあるでしょうし、大学院へ行くことが将来のキャリアにどう結びつくのか、不安を感じることもあるかもしれません。しかし、自分が本当に学びたい、深めたいと思う「問い」に向き合う時間は、その後の人生において何物にも代えがたい自信となります。私自身、大学時代の「ピア・サポート」という学生の大学生活をサポートする活動を通じて、成功の裏にある苦労を理解してくれる大人に出会えた経験が、大学院進学への不安を「自分が正しいと思う道を進めば、必ず見ていてくれる人がいる」という確信に変えてくれました。大学院での研究は、決して就職から逃げるためのモラトリアムではありません。むしろ、社会をより深く、より多角的に理解するための前向きな活動なのです。

明治学院大学大学院には、皆さんの知的な野心を温かく受け止めてくださる先生方が揃っています。もし進学を迷っているのであれば、焦る必要はありません。一度社会に出てから戻る道もあれば、私のように立ち止まって思索する時間を作ることも可能です。大切なのは「どうしても気になる」という自分の気持ちに耳を澄ませ、納得のいくまで悩み抜くことです。大学院で得られる高度な専門性と、物事を多角的に洞察する力は、将来どのような道に進んだとしても、自らを支える一生の財産になるはずです。博士後期課程に進む私は、今後さらなる研究活動を目指し、北海道大学での新しいプロジェクトや、海外大学との留学生交換なども視野に入れています。大学時代には経験できなかった留学や、国際的な研究ネットワークへの参加など、新たなステージでの挑戦に胸を躍らせています。その一方で、原点となった現地での経験を忘れずに、これからも当事者との関わりを大切にしていきたいです。皆さんも、自分だけの「問い」を深め、より広い世界へと羽ばたいてください。心から応援しています。

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