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学生

大学院進学の理由は人それぞれ、自分のやりたいことを最優先に!

心理学研究科 教育発達学専攻 修士課程 2024年3月修了
泉 未来

心理面で子どもをサポートできる教員を目指して大学院へ

小学校から高校までの学校生活でさまざまな悩みにぶつかった時、当時の先生方が親身になって声をかけてくださり、心理面でとても大きな支えになりました。その経験を通して自分も教員の道を目指したいと思うようになりました。さらに、高校時代にボランティアで障害児を対象とした余暇事業に参加し、自閉症の子どもと関わった際にその子がとても親しみをもって接してくれたことがきっかけで特別支援教育に興味を持ち、特別支援学校教諭一種免許が取得できる明治学院大学心理学部教育発達学科に進学しました。

心理学部教育発達学科は教育学、心理学、障害科学の3領域を学際的に学べること、障害児臨床実習などの実習科目も充実していることが大きな魅力ですが、学部での4年間の講義や実習を通して、特別支援教育には教員資格だけでなく心理や医療、福祉など他分野との連携が必要だということが分かってきました。そこで、学部を卒業してすぐに教員になるのではなく周辺領域を含めたより高度な知見やスキルを身につけたいと考え、大学院進学を決めました。特に大きな決め手になったのは、心理面で子どもたちをサポートするために役立つ「臨床発達心理士」の資格取得要件である指定科目が受講できることでした。

学外実習や論文執筆を通して特別支援教育の知見を広げられた

私が進学した心理学研究科教育発達学専攻は、この分野で著名な先生方が揃っていて、少人数制で直接指導を受けられることが大きな魅力です。学部時代と同様の障害児臨床実習も実施されていて、先生方からより細密な指導を受けることができます。

療育センターでの学外実習では障害児の受診面談に陪席させていただき、医療や福祉などの他分野との連携がいかに大切かを改めて実感することができました。学部生の時は学校や教員の視点で物事を考えがちで新しい考え方を受け入れにくく、凝り固まった考えになってしまうことが多かったのですが、大学院での実践的な学びを通して、柔軟で多角的な視点で物事を考えられるようになったと思っています。また、療育施設の方が学校を廻って実施する訪問支援に同行する機会があり、そこで社会福祉士の方が教員とは違う視点で子どもたちと関わる姿を目の当たりにして、心理面でのサポートの重要性に気づきました。

私はそれまで何気なく「普通」という言葉を使っていましたが、そもそも何を基準に「普通」と言っているのか考えたこともありませんでした。それが先生方の講義や学外実習の貴重な体験を通して、社会や自分が勝手に決めた基準で「普通」でなければならないと思い込んでいることに気づき、それからは「みんなと同じ方法で学ばなくてもいいんだ!」「この子に合った指導や声のかけ方は何だろう?」というように、子どもの視点に立った考え方ができるようになりました。

大学院生の重要なタスクのひとつは研究論文の執筆です。私は「多層指導モデル(MIM)における外的な要因からの指導効果の検討」という研究テーマで修士論文にチャレンジしました。MIM(=Multilayer Instruction Model:略称ミム)とは、私の指導教員である海津亜希子教授が開発された多層指導モデルで、通常の学級において異なる学力層の子どものニーズに対応し、包括的に指導・支援を提供していくものです。私も大学院での講義や実習、ボランティア活動を通して、通常の学級に在籍する子どもが学ぶ困難さやそれに対応する教員の難しさに気づき、少しでもそれを軽減できればという思いから通常の学級での教育・支援に焦点を当てた研究をしたいと考えたことがこの研究テーマを選んだ大きな理由です。

実習や毎週の課題発表など多忙な中でさまざまな文献を読み論文をまとめ上げていく作業はなかなか大変でしたが、その過程で、みんなと同じ方法で学べなくてもその子に合った指導方法があるということ、特別支援教育は特別な支援を必要とする子どもだけに必要なものではなく、どんな子どもにとっても効果的な指導であること、教員の見立てだけではなく科学的な根拠に基づいた指導を導入することで、学習の遅れやつまずきが生じる前にサポートできる可能性があることを学び取ることができました。

多角的な視点から物事を見る力が教員としての財産になる

大学院修了後は特別支援学校の教員として働く予定で、仕事をしながら臨床発達心理士資格取得の準備をするつもりです。臨床発達心理士の資格取得者になれば心理分野における最新の情報や知見に触れられるので職場での仕事にも必ず役立つと思っています。 特別支援学校教員としての目標は、子どものできないことばかりに目を向けるのではなく、その子の背景にある困難や課題をアセスメントによって把握・理解したり、自分が行った支援や手立ては本当にその子に適しているのかを常に振り返り、子ども一人ひとりに合った支援を実現していくことです。とにかく子どもたちには「学校は楽しい場所だから明日もまた来たい!」と思ってもらえるようにサポートしたいです。また、専門職の人たちと連携しながら、長期的な視点で支援を行っていきたいです。

教員志望者で大学院に進学する人は一種教員免許の上位資格である専修免許を取得することが目的の人が多いと思いますが、私は敢えて専修免許取得科目を選択しませんでした。単純に科目数が増えて日々の忙しさが増すということを先輩たちからアドバイスされていたこともありましたが、特別支援学校で資格を活かして心理面から子どもたちをサポートしたいという自分のやりたいことを最優先した結果なので後悔はありません。大学院に進学する理由は人それぞれ、目的は一つではないと思います。ただ、大学院は学部と違って少人数なので一人ひとりの責任が重くなります。論文作成の難易度も上がりますし、講義に臨む姿勢もより真剣さが求められます。学部生をリードする役割も担わなければなりません。それでも私が明治学院大学大学院の素晴らしい環境での学びと経験を通して、将来必ず必要になる多角的な視点で物事を見る力を養えたことは大きな財産になってくれるはずです。