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学生

大学院の2年間は自分の未来にとって時間のロスではなく大きなプラス

心理学研究科 心理学専攻 博士前期課程 (心理学コース)
2019年3月修了
須田 望

新しいことにチャレンジしたい思いから進路変更を決意

大学進学時には特に興味のある分野はなく、人の心に関わることを学ぶのも面白そうかなという軽い動機で明治学院大学心理学部心理学科に入学しました。そのため、学部での4年間は軟式テニス部の活動に打ち込む毎日で、勉強は二の次になっていました。そして、就職活動の時期になり、何をやるにせよ人の役に立つ仕事がしたいと思い、就職活動に取り組んだ結果、ある会社から内定をいただくことができましたが、何かやり残したような気持ちがあり、「本当にこれでいいのか?」と自分自身に問い直しました。学部生時代を振り返ると、軟式テニスは燃え尽きるまでやったという満足感がありました。今度は何か新しいことにチャレンジできないかと考えた時、自分は心理学部に在籍していたのに真面目に学んでこなかったことを後悔しました。明治学院大学の心理学部は日本でもトップレベルなのは知っていましたし、先生方の熱意も伝わっていました。心理学の専門的な知見を身につければ将来の選択肢も広がり、より多くの人の役に立てるのではないかという思いから、急遽、大学院進学を決意しました。突然の進路変更でしたが、心理学部は大学院に進む人が多かったことも後押しになったのかもしれません。

社会で役立つデータ分析手法とプログラミング技術を習得

大学院進学を決めたのはいいものの、学部時代の学びの蓄積がなかったので、最初はちゃんとやっていけるのかとても不安でした。それでも学部4年間で受けた講義の中で心理統計学が面白いと感じていて、それを指導教員の川端教授に告げると「春休み中にこれを読んでおきなさい」とその分野の専門書を渡され、必死に読み込みました。その過程で、これは本気で取り組まないと理解できないと焦る一方、論理的思考力を磨けるこの分野の面白さも少しずつですが感じることができました。

修士論文は「養育態度が共感性と向社会的行動に与える影響」というテーマで取り組みました。内容としては、親や保護者がどういう子育ての軸を持っていたかによって、子どもが人の気持ちを理解できる力や、他人のためになる行動をしようとするモチベーションがどのように形成されるのかを統計的に説明したものです。子どもに対して共感的な接し方で子育てをすれば、子どもが他者に共感的になったり、人のためになる行動をするようになることは予測できますが、どんな要素が加わればその傾向が促進されるのか、そのメカニズムははっきりと解明されているわけではないこと、一方、子どもに対して支配的な接し方で子育てしても同じ結果になる場合があることがデータ分析から分かりました。論文執筆の手法としては、とにかく先行研究に関する論文・文献を海外のものも含めて百何十本も読み込みました。その上で先行研究に不足している部分を抽出し、そこを補う形で統計モデルを創出し、精度を高めるように努めました。また、あくまで定量的調査によるアプローチとして統計学上の信頼性を担保するためにはデータ量が重要なので、テータ収集には時間と手間を惜しみませんでした。自分なりに先行研究から一歩踏み込んだ研究成果を出すことができたと自負しています。

大学院での学習・研究を通して、統計学のさまざまなデータ分析手法とともに、プログラミング技術を習得することができました。統計学のデータ分析にはプログラミングは不可欠で、深く考えずに必要に迫られて取り組んでいるうちにできるようになっていました。大学院修了後、マーケティングリサーチ会社に就職しましたが、統計学の知識とデータ分析の手法、プログラミング技術が身についていたことで、企業の大量データを扱う業務にも対応することができました。そして、昨年、キャリアアップのために転職して、現在では業界トップの会社でデータ分析だけでなく、データ基盤の構築・設計、データ分析のコンサルティングなど、より幅広い業務を手がけています。大学院で深く学んだことは私のすべての基盤となっていて、単に仕事に使えるだけでなく、データ分析分野に関しては人より1歩、2歩進んでいる感覚で、自分の武器にもなっています。

日本でもトップレベルの環境で学べる価値を実感

明治学院大学大学院心理学研究科は、日本でもトップレベルの学習・研究が行われていて、特に私が師事した川端教授は日本有数の研究者で、その方と時間を共有し、熱い指導をしていただけたことが私の財産であり、川端教授は私の未来に投資してくださったのだと感謝しています。心理学研究科心理学専攻には心理学分野の資格取得を目指す臨床心理学コースと私が在籍していた心理学コースがありますが、心理学コースはゼミ同士の横のつながりが強く、さまざまな分野の先生方と接することができ、横断的な知識を養うことができます。そのため、資格を取得しなくても就職先の選択肢は幅広くなっています。私自身、学部生の頃は気づきませんでしたが、心理学の基礎理論の価値は高く、特に心理統計学分野は明治学院大学大学院で真面目に学べば社会で活躍できるスキルを必ず手に入れられるはずです。大学院進学を考えていた時は「大学院での2年間は社会に出るために時間のロスにならないか?」という不安もありましたが、今から考えるとその時間は決してロスではなく、むしろ大きなプラスになりました。

今後はデータサイエンス人材として、プログラミング技術を活用してデータ分析にとどまらない作業効率化やツール開発などにもチャレンジしていくつもりです。また、大学院修了後から5年間、マーケティングリサーチ業界で仕事をしてきましたが、その過程で統計学やデータ分析に関する社会的なリテラシー格差を感じるケースもいろいろと経験しました。専門的に学んでいる人とそうでない人の知識の差が大きく、その格差が発生しない形でデータ分析業務をスムーズに遂行できる環境整備ができたらと思っています。そのために、将来的にニーズがあればリテラシー教育にも貢献したいと考えています。