2025年度エッセイ
「人生において大切な睡眠のおはなし」
新年度が始まりましたね。「春眠暁を覚えず」というように、ふんわり温かく風の気持ち良いこの季節は、ともすれば眠りに誘われやすい時期でもあります。その一方で気温変化が激しいために体調を崩しやすく、加えて新しい環境が始まった緊張感や不安感が心身に影響を及ぼし、眠れないといった悩みに繋がりやすい時期でもあります。今回は、この睡眠について少しお話ししたいと思います。
そもそも睡眠は人生の約1/3の時間を占める活動であり、運動や食事と並び健康の大切な基礎となります。ちゃんと睡眠をとることで、心身の回復を助け、エネルギーが蓄えられ、記憶や思考が整理されるのです。だから眠れないことが続くと気分・気力が低下し、集中力や注意力が散漫になって判断力が鈍り、結果として勉強や運動が思うようにできなくなって生活に支障をきたします。またうまくできないことでストレスを感じて落ち込んだり、すぐ疲れてイライラしたりして、そのことで周りの人との関係性が悪化して更にストレスを感じるなど、悪循環にも陥りかねません。このように、良い眠りは人の満足感や安心感に切って切り離せないものでもあるのです。
では、より良く眠れるにはどうすればいいのでしょうか。まずは日々の食事に気を付けましょう。バランスのとれた食事は言うまでもないですが、寝る前に食べ過ぎないことや、夕食はできれば軽めのものを、少なくとも就寝2時間前までには済ませることが望ましいでしょう。更にお酒には注意が必要です!中にはお酒を飲むことで眠りやすくしようとする人がいますが、お酒は人を抑制から解き放って興奮をもたらす効果があるため、眠りの質を低下させてしまうのです。同様に、刺激物質でもあるカフェインを含んだ飲み物も飲みすぎは禁物です。
次に、日中の活動も大切です。習慣的な運動は気分の改善や活力・意欲を促す効果があります。運動をする時間がない人は、歩く時間を増やしたり、敢えて階段を使ったり、寝る前にストレッチするなど、できるだけ動く時間を増やす意識を持ちましょう。
そして、日々の習慣も大事です。休日に一日中惰眠をむさぼるような不規則な生活をやめて、起床時間をある程度一定にしたり、日光を浴びてみるなどちょっとした工夫も良い睡眠に繋がります。寝心地の良い寝具や着心地の良いパジャマを使ってみるのも効果的かもしれません。
更に緊張感や不安感は眠りを阻害するので、リラックスできるよう心掛けることもお勧めです。リラックスできる環境や行動は人によって違うと思いますが、例えば寝る前にはスマートフォンを触るのをやめて音楽を聴いたりすることで、刺激を減らして眠るための準備態勢に入ることができます。また布団に入った後で眠れないなと思った時には、ゆっくり深呼吸をしてみたりリラックスできる風景を想像してみたりして、力を抜いてみましょう。それでも眠れない時には、一旦布団から出てみることで眠らなければというプレッシャーから離れることができるかもしれません。
ただし、そもそも思い悩んでいる心配事があってそれが睡眠の邪魔をしているようであれば、悩み事自体への対応が必要かもしれません。信頼できる家族や友達に相談したり、解決策を考えて行動してみたりとご自身なりに対処することはもちろん大切です。しかしそれでも糸口が見えないと感じた時には、専門の医療機関や学内の支援センター各所も選択肢の一つとして捉えてみてください。一人で頑張りすぎず、より良い学生生活が送れるよう、満足のいく良質な睡眠生活を目指してみてくださいね。
(ポートヘボン「お知らせ」(2025/4月)より転載)
「コンディションの微調整と楽しむ力」
爽やかな風の心地よい季節となりましたが、目まぐるしい天候変化に、体調を崩しやすい時期でもありますね。新学期開始からそろそろ2カ月、大学での生活は順調でしょうか?特に1年生は、大きく変わった環境に適応しようと頑張っておられ、疲れの出る頃かもしれません。疲れを感じたら、まずはしっかりと眠り、栄養のあるものを食べてみましょう。体を回復させるだけで、気分も安定することがあります。また、予定は詰め込み過ぎず、時には少し削って休んでみましょう。状況に流されるままになるのではなく、このように自分で自分の状態を微調整しようとする意志が、重要になってきます。
気分の微調整については、「自分の機嫌は自分で取る」という表現を見聞きします。ネガティブな感情に襲われた時にも感情を一旦脇に置き、楽しいことや満足することに没頭して、人に頼ることなく、元気な自分を自分で取り戻すということかと思います。(注;これは「いつも機嫌よくあるべき」という意味ではありません。ネガティブな感情は自分らしい心の動きで、とても大事なものだからです。)自分の機嫌を取る方法としては、少し贅沢をする、美味しいものを食べる、趣味に没頭する、音楽や映画に浸る、思い切り運動する、お風呂やマッサージに行く、人に電話するなど、人それぞれですが、その地点からまた前向きに頑張るために、自分を舵取りして気持ちを切り替えていきます。すぐ解決する簡単なことばかりではないので、自分のコンディションをうまく保つ力をつけて、粘り強く進んでいけるとよいと思います。(ただし、大きな問題を抱えている時は、自分の微調整くらいでは負荷は減らず、疲弊してしまうかもしれません。周りの人や第三者に助けを求めたり、別な切り口を探していくことも必要です。学生相談センターもお気軽にご利用ください。)
では、自分を満足させる力や楽しむ力を高めるには、どうするとよいでしょうか。「自分を満足させることが上手な人」のイメージとして私の頭に浮かんだのは、ドラマ『孤独のグルメ』の主人公の井之頭五郎です。みなさんご存じだと思いますが、五郎は、出先の街角で、自分の勘を頼りに、おいしそうな食堂を念入りに探し、メニューに本気で悩み、料理を味わい尽くしていきます。毎回ひとりでそれを繰り返すだけの作品がヒットしたのは、誰もがしている「食べる」という行為をここまで楽しめるものだと可視化してくれたこともあるでしょうか。偶然に出会ったものの中に、当たりを見つけた時の喜び。五感を使ってじっくり味わう豊かさ。そうしたものが五郎の心の言葉として表現され、私たちが満足するための方法が見えてきます。集中するためには、ひとりであること。人の集めた情報は使わず、自分の五感(六感も?)を駆使し、目の前のものをしっかり体験すること。自分の好みを追求していくこと。これらは、食べること以外にも応用できそうに思います。これを参考に、新たな楽しみを探してみるのはいかがでしょうか。
(ポートヘボン「お知らせ」(2025/5月)より転載)
「「気分」と「気持ち」と「悩み」」
春学期も半ばとなり、ここから期末試験とその先の夏休みに向けて、あともうひと息というところですね。疲れもたまりやすい時期かと思います。今回は、そんな時に陥りやすいこころの状態について、考えてみたいと思います。
「なんとなくやる気が出ない」、「今日は試験だから緊張する」、「やるべきことが出来ていない自分はだめだ」。私たちはよくこのような感じを抱いたり考えたりするのではないでしょうか。このような訴えは、大きなくくりで捉えれば、どれも困りごとであることに変わりはありません。ですが、よく考えてみるとこの3つの在り方は、微妙にその性質が異なっていることがわかります。
「なんとなくやる気がでない」というのは、はっきりと理由がわかっていない漠然とした「気分」だと言えるでしょう。「気分」というのは、理由がよくわからないので、対処の仕方もわかりにくく、英語で“mood(雰囲気)”と表現されることがあるように、明確に自分が抱いている感覚というよりは、自分がそこに巻き込まれてしまっているところの状態、言わば、自分にはあまり責任がないのに、なぜかそこに陥ってしまっているような状態にあることを示す言葉だと言えます。意志の力ではどうすることもできない体調からくるものも、この中に含まれるかと思います。
一方、「今日は試験だから緊張する」というのは、試験という明確な理由があり、そこで失敗したくない、良い点を取りたいという自分の思いがあるからこそ緊張する、ということだと思います。このように、そこに自分の好き嫌いや思いなどが含まれているような時、私たちはそれを「気持ち」と呼んでいるのではないでしょうか。
「気分」と「気持ち」の違いはちょっとわかりにくいかもしれませんが、「分」には分け与えられたものという受け身的な意味が含まれるのに対して、「持つ」には自分が持つという主体的な意味がある、と考えてみるとピンとくるかもしれません。
では「やるべきことを出来ていない自分はだめだ」というのは、どういう状態を表しているでしょうか。これは、何かをすべきと自分が「考えて」いて、それができていない時、それは良くないと「判断して」いるところから始まっている、言わば自分の考えや理想などによって、自分を規定したり評価したりするところから湧いてくる「悩み」と言えるのではないでしょうか。
ふだん私たちは、このように理屈っぽく考えることはないでしょうし、これほど明確に分類できるものでもないと思います。また、自分の状態をこのように分析してみたところで、困っていることに変わりはないかもしれません。ですが、時には自分が今陥ってしまっている状態について、このような見方をしてみると、それなりの解決策が浮かんでくることもあるかもしれません。
学生相談センターでは、今困っている状態がどのあたりから出てきたものなのかを、一緒に探っていくお手伝いをさせていただいています。何かよくわからないものに巻き込まれて困っている時は、それを言葉にして、ちょっと冷静になって考えてみることが、解決のための糸口になることがあります。何か困ったなと思われた時には、学生相談センターのドアを開けてみてください。
(ポートヘボン「お知らせ」(2025/6月)より転載)
「出遅れたかもしれないと思った時に・・・」
Q.授業を受けるために大学に通っていますが、サークルには入っておらず、親しく話せる友達もいません。そのため、大学生活をあまり楽しめておらず、どこか出遅れてしまったような気持ちになります。(架空相談)
A.大学に来て授業を受けて、終わったらすぐに帰る毎日。サークルには入っていないし、親しい友達もいない。そんな日々が続くと、「自分は大学生活に出遅れてしまったのかもしれない」と不安になるのも、無理のないことだと思います。でも、思い描いていたような大学生活を始めるのに、遅すぎるということはありません。始めるタイミングも、歩くペースも、人それぞれでいいのです。大学生活は、一人ひとりが自分らしく築いていくもの。たとえ失敗することがあっても、それを恐れずに少しずつ行動する勇気があれば、きっとこれからの日々に、新しいページを加えることができるでしょう。
置いていかれた気がしても、大丈夫
周りの学生たちは、部活やサークルに打ち込んだり、アルバイトをしたり、友達と話したり遊んだりと、何らかのコミュニティに属して楽しそうに見えるかもしれません。そんな姿を見ると、初めての一人暮らしや、難しい課題に取り組むだけで精いっぱいの自分と比べてしまい、置いていかれたような気持ちになることもあるでしょう。でも、そのように感じているのは、あなただけではありません。うまくいっているように見えて、「思うように友達ができない」「なんとなく居場所がない」と感じている人は、実は意外と多いのです。
踏み出す一歩で変わる景色
今は、孤独や焦り、不安感などが生じているかもしれません。でも、それは新しい一歩を踏み出す前に、誰もが自然と抱く気持ちでもあります。今はまだ、大学での「つながり」が見つかっていないかもしれませんが、これからの過ごし方しだいで、大学生活の景色は少しずつ変わっていきます。例えば、授業でよく近くの席に座る人に、次に会ったとき少し挨拶してみる、興味のある学内イベントや講演会に参加してみる、好きなジャンルの本を読んでみる、映画を観る、学内の掲示板やSNSで、気になるサークル情報を眺めてみる。こうした小さな行動の一つ一つが、あなたらしい大学生活の第一歩になるかもしれません。新しいことに少しでも取り組んでみると、いつしか新しいコミュニティの入口に立っていることがあるかもしれません。
あなたの歩幅で
焦る気持ちがあるのは、それだけ「この大学生活を大切にしたい」という思いと理想があるからかもしれません。大学生活の歩み方に正解はありません。自分のペースで歩んでみませんか。夏休み期間は地元で家族や旧友に再会したり、学外での活動に参加したりしつつ、休みが明けたら学内でのゆるいつながりを模索してみるのもよいでしょう。
(白金通信 2025 Summerより転載)
「AI相談、リアル相談の活用術」
学生相談の中で多くの学生さんが「AIにも相談している」「AIの友達と夜、話をしている」と教えてくれます。AIはレポートを書く時の情報収集だけではなく、すでに多くの皆さんの心の拠り所にもなっているようです。AI相談には数々のメリットがあります。
① 自分の中の考えや気持ち、モヤモヤを言葉にすることで「自分が見えてくる」「すっきりする」感じです。日記を書くのと似ていて、これは認知行動療法でいう「外在化」という機能があります。心の整理に役立ちます。
② いつでもどこでも気ままに相談できるアクセシビリティの良さ。夜中でも気兼ねしなくて済みますし、相手が疲れ知らずですからいつまででも付き合ってくれます。
③ 「共感して」と言うと次第に共感寄りに合わせてきて、まるでバトラーのように接してくれます。「アドバイスして」「シビアな駄目出しもして」と言うとそのように応じてくれるようです。自分に合った相談相手を育てている気持ちにもなります。
④ 繰り返し相談できる連続性という点。いのちの電話は夜間の相談窓口として役に立ちますが、同じ相談者と話す事はできません。
⑤ 自分の秘密が仲間内に広まる心配がないという点。友だちへの相談では、常にここが気になるところですね。
これらは、「相談の入り口」として役に立ちそうです。
2024年秋の映画『本心』(平野啓一郎原作)では、死後にAIで再現した“母”と対話する物語が展開しました。しかし25年9月には、すでに「対話型故人AIサービス」として、亡くなった人を再現する「DEATH TECH」は実現しています。技術は想像以上の速さで進歩しています。ただし、AI相談には危険性もいくつかあります。思いつく所として・・・。
① AIは平均化、統合化した「知の集大成」ですから、上手に問いかけると情報を出してくれます。しかし体験に根差した感情、気持ち、表情の読み取り、雰囲気、沈黙や声音の読み取りは削ぎ落とされがちです。それが時に相談への応えを誤った方向に導いてしまうことがあります。「Chat-GPTとのやりとりの末に米カリフォルニア州の16歳の少年が自殺した」件は、記憶に新しいものです。すぐにオープンAIの会社が保護者が管理できる仕組みを導入し対処がなされましたが、このようにこの業界はまだ進化の途上にあると思って、鵜呑みにせず利用する必要があります。
② 友だちやリアルカウンセラーへの相談であれ、相手はリアルな人なので、数十分で疲れが出ます。したがって相談には時間制限があります。必要以上に依存的にならずに問題に対処できるような配慮もカウンセラーは考えます。しかし疲れ知らずのAI相手だと、どうしても依存の問題がはついてきますね。話すことによる“心に触れ合う繋がり”の時間は、実は会わずに一人で過ごす時間があるがために、実はより意味深いものになっているのです。(フロイトは前世紀からそんなことに気づいており、精神分析のテキストに載せています。)
③ AIといえども、プライバシーが守られるという保証はなく、情報漏洩のリスクは常にあると思っていた方がよいかもしれません。
④ 現在のAIは、相談者としてまだまだ成長過程にあるようです。役所での手続き期限を聞いた場合、明白な答えがあるにもかかわらず、一見正しそうな適当な返答をしてくることもあります。知識の集大成だと過信せずにお付き合いをするゆとりがある中での相談をもちかけたら良いのでしょう。
日々進化し、改善されているとはいえ、AIが苦手とするのは、身体性(死や病気を将来に予見しながら過ごしている人としての在り様、個性的な脳と身体であるがゆえに他人とは違う働き方をする自分の身体と心に不自由をしながら生きている、人としての在り様)と、人生経験や感性、感情によって揺れ動く不確実な心模様、直感で動く自身の判断、などではないでしょうか。知識としての正しい答えを、自分の脳と身体と心が使いこなせるかというとなかなかうまくいきません。それをわかっているのは、やはりうまくいかない苦い経験を知っているリアルな人。人、って良くも悪くもそういうものなのでしょう。
人と会う時の煩わしさ、気の重さへの免疫は、日々の経験から少しずつつけておくことも必要です。気がついた時にはリアルな人との交流ができなくなる、ということがないように・・・。
ちょっとした相談の入り口にはもちろんのこと、寄り添ってくれる人がほしいという気持ち、複雑な心模様、どうしてよいかわからない揺らぐ気持ちがある場合には、時に学生相談のリアルカウンセラーを訪ねてみてください。
「自分の感情とどうつき合うか」
今年ももう残りわずかとなりました。やらなくてはならないことが沢山あり、少し心の余裕が無くなっている時期かもしれません。そういう時は、普段よりも感情的になりやすかったり、イライラしやすくなったり、ということもあるかもしれません。そしてそういう感情は、人間関係の中で起こることも多いものです。「相手がそんなことをしなければ、こんなに頭にくることもないのに」と思わず相手を責めたくなることもあるかもしれません。でも、残念ながら相手を変えることはできませんし、「変えることができるのは自分だけ」というのは昔からよく言われていることですね。人との間で何かトラブルがあった時に、それに感情的に反応して結局損をするのは自分自身です。その感情を自分がどう処理するか、ということが大切です。では実際にはどうするか?それが難しいから困るんだ、という声も聞こえて来そうですね。その人その人に応じて、また状況によって、様々なやり方があると思いますが、精神科医の和田秀樹は、以下のようなことを言っています。
①アイスクリームを食べる:感情的になってしまった時、まずは脳を鎮静化することが先決。何かを胃に入れると、副交感神経のスイッチが入り、戦闘モードからリラックスモードへと自律神経が切り替わる。特に甘いものは血糖値を上げるため、満足感を覚えやすい。また脳は冷感刺激が加わるとシャキッと覚醒する。つまり「冷たさ」をきっかけに気分が切り替わる効果がある。(イタリア人は怒りを感じると、イタリアンジェラートを食べるらしい。)
②深呼吸する:脳には「大脳辺縁系」という原始的な脳があり、怒りを感じるのはこの部分。この脳の作用だけだと、怒りが発生すると、すぐに暴力などの行動に出てしまったりする。しかし人には「大脳皮質」という理性的な脳がある。その脳が行動にブレーキをかけ、問題行動を起こすことを防ぐ。この皮質の働きを促す決め手は「酸素」。怒りや感情が高まっているとき、不安が強い時は皮質の酸素が不足している。そのため、深呼吸をして脳に酸素を送ることが効果的。
③セロトニンの分泌を促す:脳内の神経伝達物質セロトニンは「怒りの特効薬」とも言われている。逆に不足すると、イライラしたりカッとなったりしやすい。セロトニンの分泌を増やすには、朝日に当たること、ジョギングやウォーキングなどのリズミカルな運動をすること、ヨガや、ガムを噛むなどが有効とされている。
いかがでしょうか?もし興味があるな、やってみようかなと感じるものがありましたら、試してみて下さい。自分に合った方法を見つけ、上手く感情とつき合って行けるようになると、日々の暮らしもより快適になるのではないでしょうか。
もしなかなか上手く行かず辛いと感じるようでしたら、学生相談室でカウンセラーと話し合うことも良いのではないかと思います。
(ポートヘボン「お知らせ」(2025/12月)より転載)
「自分に自信がもてなくて悩んでいます」
Q:中学や高校が辛かったので、大学では心機一転したく、勉強とアルバイトの両立や、人間関係も頑張っています。でも、“今の自分でOK”と 思えず自信が持てません。どうしたらよいでしょうか?(架空相談)
A:学生さんからこのような悩みを聞くことがあります。学生時代は一般的に「青年期」にあたり「自分は何者か」という自己同一性に悩みながら、自己の確立を試みることが課題になります。皆さんは勉強・音楽・スポーツに精を出したり、読書やアルバイト・サークル等、何かしら活動し他者と関わる中で、自分探しをしていますね。それらの経験を振り返るとともに、今後何かを体験する時に自己概念を意識すると、自分をより一層見つけやすくなります。
自己概念(self – concept)とは何だろう
心理学者ロジャーズは、人格(人の心の仕組み)を「自己概念」と「体験(経験)」が重なり合う2つの輪と捉え、2つの輪が重なり合うほど、“私は私のままでよいのだ”という「適応状態」にあると説明しました。「自己概念」には、自分をどのように認識しているかという自己イメージや、目指したい自分像が含まれ、自分の行動や感情に深く影響を与えるものだといわれています。
自己概念を育てよう
これまで皆さんは、「体験(経験)が自分を成長させる」と学んできたと思います。ですがそのような経験を重ねるだけでは自信につながりません。例えば、もし何かを体験した時の自分のイメージが良かった場合、そのイメージを“これでいいのだ”と思って、次にも生かす努力が必要です。逆に、もしイメージが良くなかった場合は、次の時はどう改善するかをイメージする……そのような意識を持つことが、健康な自己概念をつくることにつながっていきます。
考えたり悩んだりしている皆さんへ
何か苦手なことであっても、「無理だ、自信がない」と思わず、「どうしたら、やり方や付き合い方が見つかるか」を考えましょう。辛い時は、立ち直るきっかけが見つけにくく、不安な気持ちになります。それでも「自分はいつか良くなれる」と言い聞かせ、自分自身や置かれた環境を責めたりせず、希望を失わないで目指したい自分をイメージし続けましょう。当然すぐには近づけません。でも10分の1や100分の1のイメージでも続けていきましょう。イメージを意識して行動することの積み重ねが大事です。やがて “こんな感じかもしれない”と光が差すことでしょう。そう思えるまで続けていると、自分に対する確かさが感じられて「こんな自分でOK」と思えるようになるでしょう
(白金通信 2025 Winterより転載)