2026年度科研費実績
注目の研究テーマ
デジタル社会のルールを考える
研究課題「デジタル経済圏における制度設計:デジタルアカウントと情報の扱い方」
私たちが日常的に利用しているインターネット上のサービスでは、売買、評価、投票、情報発信など、多くの活動がアカウントを通じて行われています。しかし、アカウントは必ずしも一人の個人と一対一に対応しているわけではなく、一人が複数のアカウントを使ったり、一つのアカウントを複数人で共有したりすることがあります。
従来の経済学では、参加者を個人として捉え、その行動や情報を前提に制度を分析することが多く、アカウントを単位とする経済活動の広がりは十分に扱われてきませんでした。私の研究では、個人とアカウントが一致しないことで生じる評価操作や資源配分のゆがみに注目し、情報の扱い方も含めて、参加者にとって分かりやすく、安心して利用できる制度やルールのあり方を考えています。デジタル社会にふさわしい、公平で信頼できる仕組みを経済学の視点から明らかにすることを目指しています。


経済学部准教授
岡本 実哲 (Noriaki Okamoto)
自営的に働く人びとのリアルを読み解く
研究課題「自営業・フリーランスの働き方とライフコースに関する社会学的研究」
私の研究は、自営業やフリーランスといった「雇われない働き方」を選ぶ人びとの仕事や生活の実態を、社会調査データに基づいて明らかにするものです。会社に勤める働き方が社会の標準とされてきた日本において、こうした働き方はしばしば「自由」や「自己実現」と結びつけて語られます。しかし実際には、収入の不安定さや社会保障の弱さ、家族との関係のあり方など、多くの課題も抱えています。
こうした問題意識の背景には、日本社会の制度や働き方が長らく「雇われる働き方(雇用)」を前提に設計されてきたことがあります。自営業やフリーランスとして働く人びとの経験を丁寧に捉えることで、これまで当たり前とされてきた働き方や制度のあり方を問い直すことができると考えています。
現在は、働き方の多様化が進む中で、こうした人びとのキャリアが長い人生の中でどのように形成され、どのようなリスクや可能性を持つのかを分析しています。今後は、日本にとどまらず、東アジアなど他の国々との比較を通じて、より広い視点から働き方と社会の関係を探究していきます。
学生の皆さんには、「働くこと」を一つの型にはめて考えるのではなく、さまざまな選択肢があることを知ってほしいと思います。同時に、それぞれの働き方には利点と課題の両面があることを、データに基づいて複眼的に考える楽しさを伝えていきたいと考えています。


社会学部准教授
仲 修平 (Shuhei Naka)
幼児教育・保育の社会的責任はどのように議論されているか
研究課題「幼児教育の公共性に関する理論的・実証的研究 ―『無償化』をめぐる政治過程の分析から」
2019年10月から「幼児教育・保育の無償化」がスタートし、幼稚園、保育所、認定こども園などを利用する3歳〜5歳児クラスの子どもたちの利用料が原則無料になりました。「保育料が無償」と聞くと、子育てしやすい社会が実現されたようにも思えますが、なぜ無償化政策は実施されるに至ったのでしょうか。また、その対象範囲はどのように決定されたのでしょうか。無償化を実施するか否か、さらに無償化の対象になるか否かは大きな違いを生む重要な論点であるため、その必要性や必然性については議論が交わされることになります。興味深いことに、これらを説明するロジックは、ある時には少子化対策として、またある時には人的資本論の観点から正当化されるなど、当時の社会的文脈を反映したものとなっています。
私が現在取り組んでいる研究では、上記に挙げた境界設定の問題に加え、歴史や国際比較の視座から、幼児教育・保育の社会的責任や役割がどのように議論されているのかを考察しています。国会議事録や審議会等の資料を収集、精読する作業は地味なものですが、政策議論の場で幼児教育がどのように理解され、どのような幼児教育を形づくろうとしているのか、ひいては子どもという存在がどのように捉えられ、どのような社会が構想されていくのかを探る一助となることを目指しています。


心理学部助教
清水 美紀 (Miki Shimizu)
2026年度採択一覧(継続課題含む)
文学部
| 氏名 | 職 | 配分総額(直接経費) | 研究種目 | 研究課題名 |
|---|---|---|---|---|
| 高木 麻紀子 | 准教授 | 2,600,000 | 基盤研究(C) | 15世紀フランス・ヴァロワ王家のタピスリーに関する総合的研究 |
| 中西 公子 | 教授 | 3,400,000 | 基盤研究(C) | 同等比較・類似構文が示唆する形容詞・動詞・名詞の語彙的意味とその普遍性 |
| 星野 真澄 | 准教授 | 3,500,000 | 基盤研究(C) | 初等中等教育の教育環境整備の制度的・財政的研究:日米比較を中心に |
| 溝尻 真也 | 准教授 | 1,300,000 | 基盤研究(C) | 住空間の維持・改造・補修とその担い手の変遷-DIYの歴史と現状をめぐる実証研究 |
| 貞廣 真紀 | 教授 | 2,300,000 | 基盤研究(C) | アメリカ古典文学史の形成(1900-1950)における翻訳的想像力 |
| 古村 敏明 | 教授 | 2,800,000 | 基盤研究(C) | アメリカ詩と Covid-19 パンデミック:追悼、倫理、インターセクショナリティ |
| 平岩 健 | 教授 | 3,600,000 | 基盤研究(C) | 北琉球沖縄語と日本語の不定語の統語・意味・音韻メカニズムの実証的・理論的研究 |
| 杉田 由仁 | 教授 | 1,700,000 | 基盤研究(C) | 英語教師に必要な専門能力に対する自信に関する調査研究 |
| 本多 まりえ | 准教授 | 3,200,000 | 基盤研究(C) | 初期近代英国演劇における動物・怪物表象とジェンダー・人種に関する研究 |
| 宮本 裕子 | 准教授 | 3,500,000 | 若手研究 | アニメーション産業確立期の「ニューヨーク派」スタイルとその成立過程に関する研究 |
| 日下 虎太朗 | 准教授 | 3,500,000 | 若手研究 | 「不登校傾向のある高校生のための『キャリアカウンセリング』ガイドブック」の開発 |
経済学部
| 氏名 | 職 | 配分総額(直接経費) | 研究種目 | 研究課題名 |
|---|---|---|---|---|
| 岡崎 哲二 | 教授 | 14,100,000 | 基盤研究(B) | イノベーションの生成と波及のメカニズム:長期マイクロデータに基づく実証研究 |
| 田中 鉄二 | 准教授 | 18,800,000 | 基盤研究(B) | 早期生産予測情報の食料市場への影響、情報価値、農家の情報利用の分析 |
| 室 和伸 | 教授 | 3,700,000 | 基盤研究(C) | 信用市場の不完全性と少子高齢化のマクロ経済分析 |
| 三富 悠紀 | 准教授 | 1,200,000 | 基盤研究(C) | 時間の表現が消費者の行動に与える影響についての検討 |
| 大村 真樹子 | 教授 | 3,600,000 | 基盤研究(C) | 子どもの健康格差及び社会経済格差の連鎖改善に対する乳幼児保育制度の効果の検証 |
| 大石 尊之 | 教授 | 3,500,000 | 基盤研究(C) | ブロックチェーンの法と経済学:スマートコントラクトの財産権分析 |
| 北浦 貴士 | 教授 | 2,400,000 | 基盤研究(C) | 1930年代日本の社債発行市場改革が減価償却会計に与えた影響 |
| 田原 慎介 | 准教授 | 3,500,000 | 基盤研究(C) | 介護組織のルーティン再構築を通じた組織開発に関する研究 |
| 土屋 拓也 | 准教授 | 3,100,000 | 基盤研究(C) | 曲がった時空中における偏微分方程式の爆発解に関する研究 |
| 中野 聡子 | 教授 | 3,400,000 | 基盤研究(C) | エッジワースの競争概念の再検討:競争市場のヴィジョンの再構築に向けて |
| 齋藤 隆志 | 教授 | 3,400,000 | 基盤研究(C) | 労働組合の影響力が企業の生産性に与える効果に関する実証研究 |
| 大野 弘明 | 教授 | 3,600,000 | 基盤研究(C) | セルフコントロールと資産価格:双曲割引モデルによるパズル・アノマリーの解明 |
| 佐々木 百合 | 教授 | 3,000,000 | 基盤研究(C) | 外国為替相場のインフレ率への影響 |
| 齊藤 嘉一 | 教授 | 3,200,000 | 基盤研究(C) | 消費財のカスタマージャーニーに関する実証研究 |
| 高松 慶裕 | 教授 | 2,900,000 | 基盤研究(C) | 就業選択モデルに基づく最適所得税と誘因両立的な所得再分配政策 |
| 岡本 実哲 | 准教授 | 3,300,000 | 若手研究 | デジタル経済圏における制度設計:デジタルアカウントと情報の扱い方 |
| 林 麗桂 | 専任講師 | 3,200,000 | 若手研究 | 中堅社員の職務的支援行動を通じた感情知能の発達メカニズム |
社会学部
法学部
| 氏名 | 職 | 配分総額(直接経費) | 研究種目 | 研究課題名 |
|---|---|---|---|---|
| 溝渕 正季 | 准教授 | 10,200,000 | 基盤研究(B) | 現代外交における軍事力の効用:通時的・共時的アプローチによる中範囲理論の構築 |
| 野呂 充 | 教授 | 13,100,000 | 基盤研究(B) | 流域治水における多様な主体・計画間の協働・調整システムの行政法学的・工学的研究 |
| 久保 浩樹 | 准教授 | 3,300,000 | 基盤研究(C) | イデオロギー的分極化は一次元か?分極化と争点の多次元性をめぐる多国間比較研究 |
| 池本 大輔 | 教授 | 3,500,000 | 基盤研究(C) | 英ブレア政権と経済通貨同盟:ユーロ不参加の原因とその影響 |
| 上代 庸平 | 教授 | 3,300,000 | 基盤研究(C) | 財政の重要影響事態に対する財政憲法的統制―日独EUの国際比較研究 |
| 植田 達 | 准教授 | 3,500,000 | 基盤研究(C) | 労働契約等の役務提供契約から発生する付随義務に関する総合的研究 |
| 小野木 尚 | 准教授 | 1,900,000 | 若手研究 | 擬似外国会社規制の理論的研究と立法論の展開 |
| 大谷 彬矩 | 助教 | 3,100,000 | 若手研究 | 未決拘禁の執行に関する日独比較法研究 |
| 三浦 基生 | 専任講師 | 2,400,000 | 若手研究 | 法の脱強制化と法の支配 |
| 能勢 弘章 | 准教授 | 2,900,000 | 若手研究 | 行政規制の観点からの消費者法個別法の検証と「消費者法」のあり方の再構築 |
国際学部
| 氏名 | 職 | 配分総額(直接経費) | 研究種目 | 研究課題名 |
|---|---|---|---|---|
| 杉之原 真子 | 教授 | 2,700,000 | 基盤研究(C) | 先進諸国の経済政策に中国脅威論が及ぼす影響:米国議会の分析を中心に |
| 新多 了 | 教授 | 3,500,000 | 基盤研究(C) | ライティング発達がスピーキング力に与える影響:複雑系理論に基づくアプローチ |
| 久保田 浩 | 教授 | 3,400,000 | 基盤研究(C) | 近代ドイツの宗教的ユートピア/ディストピアに見る宗教的記憶と自他表象 |
| 大川 玲子 | 教授 | 3,300,000 | 基盤研究(C) | 現代アメリカとオーストラリアのイスラーム思想:クルアーン理解の比較を通して |
| 坂本 隆幸 | 教授 | 4,700,000 | 基盤研究(C) | 先進国の非正規労働者、母子家庭、働く貧困ー規定要因と問題緩和策の政治経済学的分析 |
| 森 あおい | 教授 | 3,400,000 | 基盤研究(C) | トニ・モリスンの編集者・作家経歴から考える分断の時代の文化研究 |
| 野口 久美子 | 教授 | 2,900,000 | 基盤研究(C) | 先住民運動の環太平洋連携-20世紀における日米アクティビストによる協働の諸相 |
| 中田 瑞穂 | 教授 | 1,200,000 | 基盤研究(C) | 「ヴェイレンス・ポピュリズム」と政党政治―東中欧における政党事例の分析とその応用 |
| MIDFORD Paul | 教授 | 3,000,000 | 基盤研究(C) | Territorialization of Maritime Space |
| 紺屋 あかり | 准教授 | 3,400,000 | 基盤研究(C) | パラオ石貨の来歴をめぐる人類学研究 |
| 1,200,000 | 学術図書 | パラオの石貨――贈与交換が生成する換喩的つらなり | ||
| BAE JUNSUB | 専任講師 | 3,400,000 | 若手研究 | 後発福祉国家韓国の大規模な経済危機への政策対応の特徴 |
| 井手上 和代 | 専任講師 | 3,600,000 | 若手研究 | アフリカ経済における企業家の機能と役割 |
| 重松 尚 | 研究員 | 3,600,000 | 特別研究員奨励費 | リトアニア「人民民主主義」における非共産主義者に関する研究 |
心理学部
情報数理学部
| 氏名 | 職 | 配分総額(直接経費) | 研究種目 | 研究課題名 |
|---|---|---|---|---|
| 亀田 達也 | 教授 | 28,000,000 | 基盤研究(A) | 集合的意思決定のメカニズム:計算モデルによる集合知発生条件の解明 |
| 佐々木 博昭 | 教授 | 14,400,000 | 基盤研究(B) | 幾何学的データ解析手法の開発と位相的データ解析への展開 |
| 加堂 大輔 | 准教授 | 14,000,000 | 基盤研究(B) | テンソルネットワーク法による量子時空の探究 |
| 太田 和俊 | 教授 | 3,000,000 | 基盤研究(C) | グラフのゼータ関数を用いたゲージ理論の研究 |
| 穴田 啓晃 | 教授 | 3,500,000 | 基盤研究(C) | 匿名性と追跡可能性を両立する暗号技術の開発 |
| 酒井 一博 | 教授 | 2,500,000 | 基盤研究(C) | 不変式論に基づく場の理論の系統的解析 |
| 宮寺 隆之 | 教授 | 3,400,000 | 基盤研究(C) | 量子論における両立不可能性の研究:非可換性・順序・凸性の3つの手法を用いて |
| 和田 康孝 | 教授 | 3,500,000 | 基盤研究(C) | Approximate Computing を用いたノイズあり量子回路シミュレーションの高速化 |
| 川島 誠 | 准教授 | 2,800,000 | 若手研究 | G関数のHermite-Pade近似を用いた周期予想へのアプローチ |
教養教育センター
| 氏名 | 職 | 配分総額(直接経費) | 研究種目 | 研究課題名 |
|---|---|---|---|---|
| 西 香織 | 教授 | 3,200,000 | 基盤研究(C) | 多文化共生社会NIPPONを目指した「やさしい中国語」構築の試み |
| 猪瀬 浩平 | 教授 | 3,300,000 | 基盤研究(C) | 雁皮/雁皮紙の人類学:人間と自然、市場、国家の多面的関係の探究 |
| 長谷部 美佳 | 准教授 | 1,800,000 | 基盤研究(C) | 多文化共生と女性運動との関連についての研究‐インドシナ難民支援を手掛かりに |
| 土屋 陽祐 | 専任講師 | 3,400,000 | 基盤研究(C) | 実行機能と神経筋機能との関連および効果的なレジスタンストレーニングの開発 |
| 藤原 佐和子 | 准教授 | 1,700,000 | 基盤研究(C) | キリスト教における性とジェンダーに基づく暴力への抵抗に関するエキュメニカル研究 |
| 田中 祐介 | 准教授 | 3,400,000 | 基盤研究(C) | 日記資料群の複眼的分析に基づく敗戦後の自己語りとメディア変容に関する研究 |
| 日高 知恵実 | 助教 | 3,600,000 | 若手研究 | 中国本土以外の中華圏における中国語方言を主とした言語景観の比較研究 |
研究所
国際平和研究所
| 氏名 | 職 | 配分総額(直接経費) | 研究種目 | 研究課題名 |
|---|---|---|---|---|
| 村知 稔三 | 研究員 | 3,500,000 | 基盤研究(C) | 「強弱」権威主義国の子どもの権利と子ども政策の比較:<アゼル>と<カザフ>の事例 |
| 土井 智義 | 助手 | 3,500,000 | 基盤研究(C) | 米国の「植民地」における〈人と領域の区分〉を介した統治政策:沖縄現代史から |
| 仁藤 夢乃 | 研究員 | 3,500,000 | 基盤研究(C) | 日本への導入を目指した脱性売買支援の国際比較―北欧モデルに焦点を当てて |
| Welch Shannon | 研究員 | 2,600,000 | 若手研究 | Diasporic Dilemmas: Reading Indigeneity in Okinawan Diasporic Literature of the Americas |
※延長、再延長課題は採択一覧に含みません。
※配分総額(直接経費)は本学(着任後)に配分される直接経費の総額となります。