スマートフォン版を表示
その他

書評【 地域で守る産後メンタルヘルスケア「支える・つなぐ」ための考え方と実践】

産後の家族支援に道筋を示す一冊

総合病院で心理師として働いていると、産後の母親やその家族と面談をする機会が多い。目の前にいる相手にどんな支援を提供するのが適切なのか、考えながら思う。結局のところどの家庭も、産後の生活を送っていく上で重要なのは住んでいる地域なのだ、と。

そのため、話には真摯に耳を傾けつつ、必要があれば役所の担当者と情報共有をしたり、病院と地域の支援者らが集まって開かれる会議に参加したりしながら情報収集をし、産後の母親とその家族がより良い支援を受けられるよう日々考え続けている。

この本の中で著者は、産後の家族を地域で、そして複数の職種で支えていくことの重要性を伝えている。産後に見られるさまざまなメンタルヘルス上の問題から支援者側の関わり方まで、とても具体的に触れられており、初学者に限らず熟達者にとっても啓発となる内容ではないかと思う。

心理師になって3年目の私にとっても、改めて対応の道筋を示してくれる一冊となった。この本を参考にしながら、著者の言う“切れ目ない支援”を提供できる心理師になっていきたいと私は考える。

神谷ひかり(2020年心理学科卒、済生会横浜市東部病院 心理室)

地域で守る産後メンタルヘルスケア「支える・つなぐ」ための考え方と実践

西園マーハ文(心理学部教授) 著
岩崎学術出版社 226頁/3,080円

白金通信2024秋号(No.520)掲載

おすすめ