情報数理学部教授
穴田 啓晃 (Hiroaki Anada)
インターネット上で安全とされる暗号化通信に対して盗聴の脅威があると警鐘を鳴らした「スノーデン事件」(2013年)を機に、「裏口鍵」の存在が脅威となっています。例としてSNS等では、ニックネームの使用に対し運営側が実名を追跡する権限の行使が秘密裏であり、メッセージの匿名性がどの程度の範囲まで保証されているのかが不透明であるという現状があります。この問題に対し、私は匿名性と追跡可能性をいかに公平にするかという課題が重要と考え、計算機科学の手法で追究しています。
デジタル署名方式は、登録された印鑑の機能をインターネット上などで電子的に実現する暗号アルゴリズムです。グループ署名方式はデジタル署名方式の一種で、署名者がグループの中の誰なのかを特定できない匿名機能を要件としたものです。一方、トラブル発生時に匿名状態を開封できる追跡機能も、グループ署名方式の要件とされています。本研究では、追跡者を署名者が自身の意思で選べるという意味での公平性を実現するグループ署名方式を設計しています。設計の過程では、数学の論理の記述やコンピュータプログラムの作り込みをするとともに技術標準化動向を学び、また社会的な意味・意義を検討します。しかし何といっても計算機科学の手法の巧妙さ(スリリングさ)が面白く、学生の方々にもぜひ味わっていただきたいと思っています。
授業で研究内容を説明している風景
社会学部准教授
平澤 恵美 (Emi Hirasawa)
厚生労働省「患者調査」によると、精神疾患を有する方の総数は2023年時点で603万人を超えました。この数は 過去最高となっており、2013年からの10年の間で約1.5 倍になっています。心の病は私たちの生活により身近なものとなり、誰もが罹患する病として認識されつつあります。
一方で、日本の精神保健医療福祉は、長年にわたり入院中心の体制が続き、地域ケアがうたわれるようになった現在でも、精神科病院内における医療体制だけでなく、人権に関する課題が指摘されています。日本の精神科病 院の病床数は先進国の中で最も多く、入院期間も突出しています。また、精神疾患に対する差別や偏見も根強く、本人や家族が孤立しやすい状況にあります。近年では福祉サービスによる地域資源や支援体制が整備されつつありますが、精神科医療と福祉サービスの連携は不十分で切れ目のない支援が実現されていません。
本研究では、これまで社会の中で抑圧され続けてきた精神障害のある人たちが、その人らしく生活したい場所で生活し続けることができるような精神保健医療福祉体制を日本でつくっていくために、何が求められているのかを調査し、それを実現させるために必要なことを考えて世界各国の色々な場所を視察し、学びを深めています。
2025年4月に研究で訪問したベルギーの精神科病院
経済学部准教授
田中 鉄二 (Tetsuji Tanaka)
本研究は、人工衛星によるリモートセンシング技術を用いた農産物の早期生産予測情報が、国際市場や国内市場、そして農家の行動に与える影響を経済モデルによって明らかにすることを目的としています。近年、この技術の進歩により、収穫の2~3カ月前から収量の予測が可能になってきました。例えば、北半球で小麦の不作が早期に予測されれば、季節が異なる南半球の農家は小麦の作付面積を増やすことで収入を増やすとともに、世界市場への供給を安定させ、価格高騰の抑制に貢献できます。本研究では、こうした予測情報の活用が農産物市場の価格変動をどの程度抑制し、農家の収益や作付け行動にどのような影響を及ぼすかを、時系列モデル、応用一般均衡モデル、離散選択モデルを用いて定量的に分析します。これにより、気候変動や投機的取引などで不安定化する世界の食料市場に対し、新たな安定化の仕組みを提案し、 持続可能な社会の構築に資する重要な知見を提供します。
The European Association of Agricultural Economists (EAAE)での様子
氏名 | 職 | 配分総額(直接経費) | 研究種目 | 研究課題名 |
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古村 敏明 | 教授 | 2,800,000 | 基盤研究(C) | アメリカ詩と Covid-19 パンデミック:追悼、倫理、インターセクショナリティ |
貞廣 真紀 | 教授 | 2,300,000 | 基盤研究(C) | アメリカ古典文学史の形成(1900-1950)における翻訳的想像力 |
杉田 由仁 | 教授 | 1,700,000 | 基盤研究(C) | 英語教師に必要な専門能力に対する自信に関する調査研究 |
中西 公子 | 教授 | 3,400,000 | 基盤研究(C) | 同等比較・類似構文が示唆する形容詞・動詞・名詞の語彙的意味とその普遍性 |
平岩 健 | 教授 | 3,600,000 | 基盤研究(C) | 北琉球沖縄語と日本語の不定語の統語・意味・音韻メカニズムの実証的・理論的研究 |
1,300,000 | 特別研究員奨励費 | Buli語の動詞と名詞の統語構造と言語理論 | ||
髙木 麻紀子 | 准教授 | 2,600,000 | 基盤研究(C) | 15世紀フランス・ヴァロワ王家のタピスリーに関する総合的研究 |
星野 真澄 | 准教授 | 3,500,000 | 基盤研究(C) | 初等中等教育の教育環境整備の制度的・財政的研究:日米比較を中心に |
溝尻 真也 | 准教授 | 800,000 | 基盤研究(C) | 住空間の維持・改造・補修とその担い手の変遷-DIYの歴史と現状をめぐる実証研究 |
平澤 剛 | 研究員 | 3,600,000 | 基盤研究(C) | 日本におけるエクスパンデッド・シネマ、インターメディアを対象とした領域横断的研究 |
劉 娟 | 研究員 | 2,100,000 | 若手研究 | 中国における子どもの絵本読書の形成過程に関する研究--SNSという場に注目して |
氏名 | 職 | 配分総額(直接経費) | 研究種目 | 研究課題名 |
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大石 尊之 | 教授 | 3,500,000 | 基盤研究(C) | ブロックチェーンの法と経済学:スマートコントラクトの財産権分析 |
大野 弘明 | 教授 | 3,600,000 | 基盤研究(C) | セルフコントロールと資産価格:双曲割引モデルによるパズル・アノマリーの解明 |
大村 真樹子 | 教授 | 3,600,000 | 基盤研究(C) | 子どもの健康格差及び社会経済格差の連鎖改善に対する乳幼児保育制度の効果の検証 |
岡崎 哲二 | 教授 | 14,100,000 | 基盤研究(B) | イノベーションの生成と波及のメカニズム:長期マイクロデータに基づく実証研究 |
北浦 貴士 | 教授 | 2,400,000 | 基盤研究(C) | 1930年代日本の社債発行市場改革が減価償却会計に与えた影響 |
齊藤 嘉一 | 教授 | 3,200,000 | 基盤研究(C) | 消費財のカスタマージャーニーに関する実証研究 |
齋藤 隆志 | 教授 | 3,400,000 | 基盤研究(C) | 労働組合の影響力が企業の生産性に与える効果に関する実証研究 |
佐々木 百合 | 教授 | 3,000,000 | 基盤研究(C) | 外国為替相場のインフレ率への影響 |
中野 聡子 | 教授 | 3,400,000 | 基盤研究(C) | エッジワースの競争概念の再検討:競争市場のヴィジョンの再構築に向けて |
室 和伸 | 教授 | 3,700,000 | 基盤研究(C) | 信用市場の不完全性と少子高齢化のマクロ経済分析 |
赤松 直樹 | 准教授 | 3,600,000 | 若手研究 | 消費者逐次選択の長期的な影響に関する研究 |
岡本 実哲 | 准教授 | 3,300,000 | 若手研究 | デジタル経済圏における制度設計:デジタルアカウントと情報の扱い方 |
木川 大輔 | 准教授 | 4,900,000 | 基盤研究(C) | 既存プラットフォーム企業が存在する製品・サービス市場への参入戦略に関する研究 |
田中 鉄二 | 准教授 | 7,900,000 | 基盤研究(B) | 農作物の早期生産予測情報に基づく市場・農業生産へのマクロ・ミクロ的影響 |
田原 慎介 | 准教授 | 2,200,000 | 基盤研究(C) | 介護組織のルーティン再構築を通じた組織開発に関する研究 |
土屋 拓也 | 准教授 | 3,100,000 | 基盤研究(C) | 曲がった時空中における偏微分方程式の爆発解に関する研究 |
五十嵐 千尋 | 助教 | 1,300,000 | 学術図書 | 戦間期日本における「新しい」産業の創造 ―西洋菓子の定着過程― |
氏名 | 職 | 配分総額(直接経費) | 研究種目 | 研究課題名 |
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池本 大輔 | 教授 | 3,500,000 | 基盤研究(C) | 英ブレア政権と経済通貨同盟:ユーロ不参加の原因とその影響 |
久保 浩樹 | 准教授 | 3,300,000 | 基盤研究(C) | イデオロギー的分極化は一次元か?分極化と争点の多次元性をめぐる多国間比較研究 |
溝渕 正季 | 准教授 | 10,200,000 | 基盤研究(B) | 現代外交における軍事力の効用:通時的・共時的アプローチによる中範囲理論の構築 |
大谷 彬矩 | 助教 | 500,000 | 若手研究 | 未決拘禁の執行に関する日独比較法研究 |
三浦 基生 | 講師 | 2,400,000 | 若手研究 | 法の脱強制化と法の支配 |
吉田 豊 | 講師 | 1,900,000 | 基盤研究(C) | 超対称局所化に基づくゲージ理論の幾何学的性質及び可積分構造の研究 |
氏名 | 職 | 配分総額(直接経費) | 研究種目 | 研究課題名 |
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大川 玲子 | 教授 | 3,300,000 | 基盤研究(C) | 現代アメリカとオーストラリアのイスラーム思想:クルアーン理解の比較を通して |
久保田 浩 | 教授 | 3,400,000 | 基盤研究(C) | 近代ドイツの宗教的ユートピア/ディストピアに見る宗教的記憶と自他表象 |
坂本 隆幸 | 教授 | 4,700,000 | 基盤研究(C) | 先進国の非正規労働者、母子家庭、働く貧困ー規定要因と問題緩和策の政治経済学的分析 |
新多 了 | 教授 | 3,500,000 | 基盤研究(C) | ライティング発達がスピーキング力に与える影響:複雑系理論に基づくアプローチ |
森本 泉 | 教授 | 1,300,000 | 学術図書 | ネパールの人々の移動の諸相―グローバルに展開する暮らしとコミュニティ― |
井手上 和代 | 講師 | 3,600,000 | 若手研究 | アフリカ経済における企業家の機能と役割 |
BAE JUNSUB | 講師 | 3,400,000 | 若手研究 | 後発福祉国家韓国の大規模な経済危機への政策対応の特徴 |
重松 尚 | 研究員 | 15,000,000 | 特別研究員奨励費 | リトアニア「人民民主主義」における非共産主義者に関する研究 |
氏名 | 職 | 配分総額(直接経費) | 研究種目 | 研究課題名 |
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海津 亜希子 | 教授 | 3,600,000 | 基盤研究(C) | 効果的実践および継続可能性を高める多層指導モデルMIM実装の地域特性による類型化 |
川端 一光 | 教授 | 2,100,000 | 基盤研究(C) | 項目反応理論で推定されたテストスコアの標準誤差と実用性の評価 |
金城 光 | 教授 | 3,600,000 | 基盤研究(C) | 主観的加齢の解明とその測定法の開発:加齢変化に対する心理的適応過程からの接近 |
辻 宏子 | 教授 | 2,600,000 | 基盤研究(C) | 動的幾何環境での平面図形の認識に対する記述枠組みの開発:視線計測を取り入れて |
野村 信威 | 教授 | 3,300,000 | 基盤研究(C) | 認知症とともに生きる人への診断後支援プログラムの開発およびその適用範囲の検討 |
水戸 博道 | 教授 | 2,400,000 | 基盤研究(C) | 校内合唱コンクールの生徒のウェルビーイングに与える効果について |
宮本 聡介 | 教授 | 3,200,000 | 基盤研究(C) | 潜在意識は社会性を理解できるか -閾下ストーリー刺激を用いた検証- |
森本 浩志 | 教授 | 3,600,000 | 基盤研究(C) | 認知症の人の家族のPre-death griefの回復要因の解明 |
足立 匡基 | 准教授 | 6,100,000 | 基盤研究(B) | 大規模前向きコホートデータを活用した科学的根拠に基づく子どもの自殺予防体制の構築 |
小保方 晶子 | 准教授 | 2,600,000 | 基盤研究(C) | 中学校移行期における自己制御の発達に関する縦断研究:余暇活動に焦点を当てて |
鞍馬 裕美 | 准教授 | 3,500,000 | 基盤研究(C) | アメリカにおける教員確保戦略に関する総合的研究 |
佐藤 公 | 准教授 | 2,600,000 | 基盤研究(C) | 対外認識と自国認識の一体的な育成をはかる歴史教育実践の日独比較研究 |
根本 淳子 | 准教授 | 3,200,000 | 基盤研究(C) | 学習設計のスキルを深めるための「学びほぐし」を取り入れた活動の提案 |
岡田 悠佑 | 助教 | 1,000,000 | 基盤研究(C) | レガシーとしてのオリンピック・パラリンピック教育の可能性 |
清水 美紀 | 助教 | 2,400,000 | 若手研究 | 幼児教育の公共性に関する理論的・実証的研究―「無償化」をめぐる政治過程の分析から |
氏名 | 職 | 配分総額(直接経費) | 研究種目 | 研究課題名 |
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穴田 啓晃 | 教授 | 3,500,000 | 基盤研究(C) | 匿名性と追跡可能性を両立する暗号技術の開発 |
太田 和俊 | 教授 | 3,000,000 | 基盤研究(C) | グラフのゼータ関数を用いたゲージ理論の研究 |
亀田 達也 | 教授 | 28,000,000 | 基盤研究(A) | 集合的意思決定のメカニズム:計算モデルによる集合知発生条件の解明 |
酒井 一博 | 教授 | 2,500,000 | 基盤研究(C) | 不変式論に基づく場の理論の系統的解析 |
佐々木 博昭 | 教授 | 10,100,000 | 基盤研究(B) | 幾何学的データ解析手法の開発と位相的データ解析への展開 |
和田 康孝 | 教授 | 1,100,000 | 基盤研究(C) | 多要素協調型Approximate Computing実現に向けたHPCアプリケーション解析手法 |
加堂 大輔 | 准教授 | 3,600,000 | 基盤研究(B) | テンソルネットワーク法が解き明かす場と時空のダイナミクス |
川島 誠 | 准教授 | 2,800,000 | 若手研究 | G関数のHermite-Pade近似を用いた周期予想へのアプローチ |
氏名 | 職 | 配分総額(直接経費) | 研究種目 | 研究課題名 |
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猪瀬 浩平 | 教授 | 3,300,000 | 基盤研究(C) | 雁皮/雁皮紙の人類学:人間と自然、市場、国家の多面的関係の探究 |
西 香織 | 教授 | 3,200,000 | 基盤研究(C) | 多文化共生社会NIPPONを目指した「やさしい中国語」構築の試み |
長谷部 美佳 | 准教授 | 1,800,000 | 基盤研究(C) | 多文化共生と女性運動との関連についての研究‐インドシナ難民支援を手掛かりに |
日高 知恵実 | 助教 | 3,600,000 | 若手研究 | 中国本土以外の中華圏における中国語方言を主とした言語景観の比較研究 |
土屋 陽祐 | 講師 | 3,400,000 | 基盤研究(C) | 実行機能と神経筋機能との関連および効果的なレジスタンストレーニングの開発 |
氏名 | 職 | 配分総額(直接経費) | 研究種目 | 研究課題名 |
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土井 智義 | 助手 | 3,500,000 | 基盤研究(C) | 米国の「植民地」における〈人と領域の区分〉を介した統治政策:沖縄現代史から |
村知 稔三 | 研究員 | 3,500,000 | 基盤研究(C) | 「強弱」権威主義国の子どもの権利と子ども政策の比較:<アゼル>と<カザフ>の事例 |